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役に立つ薬の情報~専門薬学

ジェネリック医薬品推進の弊害

 

ジェネリック医薬品の問題点 」「ジェネリック医薬品による効果と質」を読んだ方は、『ジェネリック医薬品は効果が同じで、値段が安い』という決まり文句に疑問をもった人も多いのではないでしょうか。

 

ジェネリック医薬品は単価が安いため、医療費削減を目的として政府もその使用を推進しています。新薬開発に力を入れていたとしても、ジェネリックに手を出している製薬企業はたくさんあります。企業同士で共同研究している関係上、ジェネリック医薬品を批判しにくいのです。

 

このようなことから、ジェネリック医薬品の問題点を挙げる人は少なく、世間一般的にはジェネリック医薬品の情報が正確に伝わっていないのだと思います。

 

これらの背景を踏まえたうえで、ある医師の方から興味深いメールを頂いたので、紹介します。医師の方のメールと、私の意見を述べた返答を載せたいと思います。

 

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○医師の方

 

最近薬局に処方箋を出すと、「先ずジェネリックにしますか?」の問い掛けが有ります。

 

効き目は一緒で値段が安いの一点張りで、細かな違いの説明は全く有りません。ざっぱに言えばその通りかもしれませんが、医師に言わせると違います。

 

昨日この件で薬剤師に色々問い掛けすると、ジェネリックの方が点数が良く……、言い換えれば薬局への還元率が良いとの事でした。

 

医療費削減の呼びかけの裏で、この様なトリックがある事に怒りすら感じました。公正な立場で意見を下さい。

 

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○私の返答

 

はじめまして。

 

医師の方からの貴重なご意見を聞かせていただきありがとうございました。

 

ジェネリックに対する私の意見ですが、「アスピリンのようにかなり昔から使用されて、ある程度安全性が分かっている医薬品」であれば、 ジェネリックでも良いと考えています。

 

それに対し、抗不整脈薬や抗てんかん薬、抗うつ薬など、服用に関してより注意を払わなければいけない医薬品、また副作用が出やすい医薬品などであれば、ジェネリックでは少し危険な気もします。

 

知り合いにジェネリックメーカーの研究職がいますが、やはり先発品と同じような溶出率、吸収率を出すのは難しいらしいです。

 

特許が切れたといっても、同じ添加剤や特許が切れていない特殊な剤形は使用できないため、ジェネリックメーカーも苦労しているようです。

 

また同じと言っても、「統計学的に同じ」ということであり、±20%以内の差であれば同じと判断されてしまいます。

 

そのため、「効き目が同じ」という言い文句は疑問であり、命に関わるような疾患で処方される薬であれば、ジェネリック医薬品はかなり慎重に服用する必要があると私は思います。

 

今は世間的にジェネリックの良い面だけが強調されているように感じます。

 

そうではなく、患者さんがジェネリックの良い面のみならず悪い面まで知り、「それでもジェネリックに変えてほしい」と要求するのが理想だと思います。

 

最終的な決定権は患者さんにありますし、値段が安いというのはやはり魅力的ですから。

 

このような意見でよろしいでしょうか。

 

…………………

 

○医師の方

 

連絡有難う御座います。

 

ジェネリック対する考え方等、全く同感ですし、自分の考えが間違っていないと、確信が持てました。

 

今回私が感じたことは……、薬と患者の接点の薬剤師が利害関係でジェネリックを勧める形と成る事が問題であると捉え、これを解消する為の仕組み作りができない物かと考えています。

 

以上宜しくお願い申し上げます。

 

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ほとんどの薬局はこのような経営ではなく、本当に患者さんのことを考えて調剤していると私は信じています。その一方、政府がジェネリック医薬品を推進する裏でこのような問題が隠れている事も事実です。

 

薬局も当然ながら利益を上げなければいけません。しかしながら、患者さんの利益ではなく、自分たちの利益を最優先することはかなり問題です。

 

理想はジェネリック医薬品の問題点も踏まえて調剤し、患者さんに説明することですが、現実にそれができるかと言えば、やはりそれも難しいです。

 

世間一般的にジェネリックの問題点が知らされていない現在、ジェネリックに切り替える際に「実はジェネリックにも問題がありまして……」と薬剤師が説明すると、患者さんは混乱してしまいます。

 

薬局はパニックの渦に飲み込まれ、病院にクレームの電話が鳴り響き、そこには路頭に迷う人びとが……、という状況にはならないかもしれませんが、似たようなことが起こるでしょう。

 

要は、「私たちが正しい情報を仕入れ、それを自分で適切に判断する」ことが重要であるという事です。物事に良い面だけということはほとんどありません。良い面と悪い点があって然るべきです。

 

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