ジェネリック医薬品の問題点
ジェネリック医薬品という言葉を聞いたことがあると思います。ジェネリック医薬品とは特許の切れた医薬品のことであり、安く買うことができます。
でも、よく考えてみてください。マスコミはジェネリック医薬品の利点ばかりを宣伝しますが、ジェネリック医薬品に問題点はないのでしょうか。
ジェネリック医薬品の利点は他サイトにいくらでも書かれているので、ここでは割愛させていただきます。その代わり、あまり一般的に知られていない欠点について触れていきたいと思います。
なぜジェネリック医薬品が浸透しにくいのか
日本は欧米と比べてジェネリック医薬品があまり浸透していないといわれていますが、日本と欧米では医療事情が全く違います。例えば、アメリカでは医療保険が極端に限られているため、莫大な医療費が請求されます。そのため、少しでも安いジェネリック医薬品に変えようとするのです。
それに対し、日本では医療保険制度が欧米に比べてとても充実しています。少なくとも薬を受け取るだけで何万円も請求されることはないのではないでしょうか。
そもそも、ジェネリック医薬品が「安い」「同じ効果」と利点ばかりであれば、医師もすぐにジェネリック医薬品に変えているはずです。しかし、実際はそうではありません。
なぜなら、ジェネリック医薬品にはそれなりの欠点が存在するからです。本当ならこの部分もマスコミは宣伝すべきなのに……。
「ジェネリック医薬品は特許が切れた薬」
「同じ効果を得ることができる」
これらは一部真実であり、一部ウソです。なぜなら、ジェネリック医薬品は完全に特許が切れたわけではないからです。
特許が切れたのは物質特許であり、薬の本体です。つまり、有効成分そのものです。実は、薬の特許には物質特許以外にも、例えば「製剤特許」が存在します。
もし、製剤特許が切れていなければ、同じような添加物を加えることができません。添加物が変われば薬がどのように溶けていくか、どれくらいの速度で吸収されていくかが変わってしまいます。
同様に、製剤特許が切れていなければ、同じ剤形を用いることができません。薬には錠剤、カプセル、粉状などさまざまな形があります。たとえ同じ錠剤だとしても、コーティングの仕方や内部構造などでそれぞれ異なってしまいます。
薬の添加物や剤形が変わるとどうなるか
薬の添加物や剤形が変わると、例えば薬の溶け出す速度が変化したり、有効成分が分解されやすくなったりします。
それでは、もし薬の溶け出す速度が遅かったり速かったりすればどうなるでしょうか。それは、「薬の効きすぎ」や「効果が出にくい」という結果になります。
薬の効きすぎと言うことは、その分だけ副作用も出やすいということです。薬の効果が出にくいということは、薬を服用してもほとんど意味がないということです。
※ジェネリック医薬品が薬の承認を得るためには、事前に「安定性や崩壊速度などが先発医薬品と比べて同等だ」というデータの提出は義務付けられています。
その他の問題点
そもそも、ジェネリック医薬品の試験に「有効性の試験」は存在しても「安全性の試験」はありません。そのため、安全性のデータが存在しません。ジェネリック医薬品は先発品と比べ、その製品に対する情報量が極端に少ないのです。
しかも、有効性の試験といっても「完全に有効性が同じである」とは言い切れません。これは「統計学的に先発品と差がない」というだけです。
統計学的には±20%の範囲(正確にはバラつきを含めて80~125%の範囲)であれば差がないと判断されます。つまり、先発品と比べて多少なりとも効果が強かったり、その逆に効果が弱かったりしても「有効性は同じである」と判断されるのです。
これもまた、薬の効きすぎや薬の効果が出にくいという結果となってしまいます。
胃薬や解熱薬などの薬であるなら、ある程度許容することができます。しかし、不整脈の薬や抗がん剤など命に直接関わる薬であれば大きな問題となります。
※当然、ジェネリック医薬品でもオリジナルな医薬品と変わらないくらいすばらしいものはあります。しかし、ジェネリック医薬品にはこのようなリスクがあることを忘れないでください。
全ての特許が切れても、適切な薬の効果が得られるとは限らない
それでは、「物質特許」「製法特許」「製造特許」全ての特許が切れている場合はどうでしょうか。実は、この場合でも適切な薬の効果が得られるとは限らないのです。
全ての特許が切れ、全く同じ成分、同じ添加物、同じ剤形を用いたジェネリック医薬品があるとします。一般の方ならこの医薬品が先発品と同じように適切な効果を表してくれると期待するでしょう。
しかし、必ずしもそうではないという事を私たちは理解しなければなりません。たとえ全く同じ方法で薬を作ったとしても、「薬の溶け方が先発品と違う」「薬の効果の出方が違う」などの問題が起こることがあります。
それでは、なぜこのような問題が起こるのでしょうか。
一概には言えませんが、一つは技術力の差だと思われます。そもそも、先発品メーカーは数百億もの金をかけて薬を開発するので、製造方法の細部まで公表するわけありません。
医師への情報提供
医薬品を開発したとしても、その医薬品が現場で使われなければ意味がありません。そのため、製薬会社は自社の医薬品を売り込む努力をする必要があるのです。
製薬企業は医師に自社の医薬品をアピールします。つまり、医薬品の情報を積極的に提供するのです。しかし、もし提供すべき医薬品情報が少なければどうでしょうか。
ジェネリック医薬品はその医薬品に対する情報が先発品と比べ、極端に少ないです。先発品メーカーが他社に医薬品情報を簡単に公開するわけないので、当たり前といえば当たり前です。
先発品メーカーの医薬品を使用していた場合、たとえ問題が起こったとしても膨大な情報から答えを導き出すことができます。しかし、ジェネリック医薬品では少ない情報から答えを出さなければなりません。
このようにジェネリック医薬品は先発品と比べ、いくらかの不利な点があるのです。
※当然、ジェネリック医薬品でもオリジナルな医薬品と変わらないくらいすばらしいものはあります。しかし、ジェネリック医薬品にはこのようなリスクがあることを忘れないでください。
ジェネリック医薬品推進の弊害
さて、ここまで読んだ方は、『ジェネリック医薬品は効果が同じで、値段が安い』という決まり文句に疑問をもった人も多いのではないでしょうか。
ジェネリック医薬品は単価が安いため、医療費削減を目的として政府もその使用を推進しています。新薬開発に力を入れていたとしても、ジェネリックに手を出している製薬企業はたくさんあります。企業同士で共同研究している関係上、ジェネリック医薬品を批判しにくいのです。
このようなことから、ジェネリック医薬品の問題点を挙げる人は少なく、世間一般的にはジェネリック医薬品の情報が正確に伝わっていないのだと思います。
これらの背景を踏まえたうえで、ある医師の方から興味深いメールを頂いたので、紹介します。医師の方のメールと、私の意見を述べた返答を載せたいと思います。
………………………………………………………………………………………
○医師の方
最近薬局に処方箋を出すと、「先ずジェネリックにしますか?」の問い掛けが有ります。
効き目は一緒で値段が安いの一点張りで、細かな違いの説明は全く有りません。ざっぱに言えばその通りかもしれませんが、医師に言わせると違います。
昨日この件で薬剤師に色々問い掛けすると、ジェネリックの方が点数が良く……、言い換えれば薬局への還元率が良いとの事でした。
医療費削減の呼びかけの裏で、この様なトリックがある事に怒りすら感じました。公正な立場で意見を下さい。
…………………
○私の返答
はじめまして。
医師の方からの貴重なご意見を聞かせていただきありがとうございました。
ジェネリックに対する私の意見ですが、「アスピリンのようにかなり昔から使用されて、ある程度安全性が分かっている医薬品」であれば、 ジェネリックでも良いと考えています。
それに対し、抗不整脈薬や抗てんかん薬、抗うつ薬など、服用に関してより注意を払わなければいけない医薬品、また副作用が出やすい医薬品などであれば、ジェネリックでは少し危険な気もします。
知り合いにジェネリックメーカーの研究職がいますが、やはり先発品と同じような溶出率、吸収率を出すのは難しいらしいです。
特許が切れたといっても、同じ添加剤や特許が切れていない特殊な剤形は使用できないため、ジェネリックメーカーも苦労しているようです。
また同じと言っても、「統計学的に同じ」ということであり、±20%以内の差であれば同じと判断されてしまいます。
そのため、「効き目が同じ」という言い文句は疑問であり、命に関わるような疾患で処方される薬であれば、ジェネリック医薬品はかなり慎重に服用する必要があると私は思います。
今は世間的にジェネリックの良い面だけが強調されているように感じます。
そうではなく、患者さんがジェネリックの良い面のみならず悪い面まで知り、「それでもジェネリックに変えてほしい」と要求するのが理想だと思います。
最終的な決定権は患者さんにありますし、値段が安いというのはやはり魅力的ですから。
このような意見でよろしいでしょうか。
…………………
○医師の方
連絡有難う御座います。
ジェネリック対する考え方等、全く同感ですし、自分の考えが間違っていないと、確信が持てました。
今回私が感じたことは……、薬と患者の接点の薬剤師が利害関係でジェネリックを勧める形と成る事が問題であると捉え、これを解消する為の仕組み作りができない物かと考えています。
以上宜しくお願い申し上げます。
…………………
ほとんどの薬局はこのような経営ではなく、本当に患者さんのことを考えて調剤していると私は信じています。その一方、政府がジェネリック医薬品を推進する裏でこのような問題が隠れている事も事実です。
薬局も当然ながら利益を上げなければいけません。しかしながら、患者さんの利益ではなく、自分たちの利益を最優先することはかなり問題です。
理想はジェネリック医薬品の問題点も踏まえて調剤し、患者さんに説明することですが、現実にそれができるかと言えば、やはりそれも難しいです。
世間一般的にジェネリックの問題点が知らされていない現在、ジェネリックに切り替える際に「実はジェネリックにも問題がありまして……」と薬剤師が説明すると、患者さんは混乱してしまいます。
薬局はパニックの渦に飲み込まれ、病院にクレームの電話が鳴り響き、そこには路頭に迷う人びとが……、という状況にはならないかもしれませんが、似たようなことが起こるでしょう。
要は、「私たちが正しい情報を仕入れ、それを自分で適切に判断する」ことが重要であるという事です。物事に良い面だけということはほとんどありません。良い面と悪い点があって然るべきです。
スポンサードリンク
カテゴリー
スポンサードリンク