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肝炎ウイルス(A型・B型・D型・E型)

 

肝炎を引き起こす肝炎ウイルスには「A型,B型,C型,D型,E型」の5種類が知られている。そのうち日本で多いのはA型肝炎ウイルス(HAV),B型肝炎ウイルス(HBV),C型肝炎ウイルス(HCV)である。

 

・HAV(A型肝炎ウイルス)
○ピコナウイルス科ヘパトウイルス属
○一本鎖RNAを持つ
○感染経路…主に経口感染(汚染した食物や飲み水)→流行あり
○症状…急性肝炎のみ
○ワクチン有り

 

2ヶ月以内に治癒し、これらの感染は一過性である。また、一度感染すると、終生免疫を獲得できる。

 

小児では不顕性感染が多く、発症しても軽症で済むが、高齢者では重症化率が高くなる。

 

A型肝炎の予防には環境衛生の整備を行い、HAVに暴露する機会を減らすことが考えられる。HAV不活化ワクチンの接種も考えられる。

 

・HBV(B型肝炎ウイルス)
○ピコナウイルス科オルソヘパドナウイルス属
○二本鎖DNAを持つ
○感染経路…非経口感染(血液、母子感染)
○症状…急性肝炎+慢性肝炎→肝硬変、肝癌へ進行
○ワクチン有り

 

HBVの場合は成人で感染しても慢性肝炎に移行することはなく、急性肝炎で終わる。1~6ヵ月潜伏した後で急性肝炎が発症し、2~4か月で治癒する。これらの感染は一過性である。

 

なお、成人で感染しても劇症肝炎によって死亡することもある。急性肝炎から劇症肝炎になる確率はA型肝炎よりも高く、約1%のヒトが急性B型肝炎から劇症肝炎に移行してしまう。

 

B型肝炎の予防にはワクチンの接種が考えられ、HIG(抗HBヒト免疫グロブリン)やHBワクチンなどがある。例えば、HBワクチン(感染防御抗体)はHBs抗体によってB型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に侵入するのを防ぐ

 

・HCV(C型肝炎ウイルス)
○フラビウイルス科ヘパシウイルス属
○一本鎖RNAを持つ
○感染経路…非経口感染(血液)
○症状…急性肝炎+慢性肝炎→肝硬変、肝癌へ進行
○ワクチン無し

 

詳しくは「C型肝炎ウイルス

 

・HDV(D型肝炎ウイルス)
○デルタウイルス属
○一本鎖RNAを持つ
○感染経路…非経口感染(血液)
○症状…急性肝炎+慢性肝炎
○ワクチン無し

 

HDVは欠損ウイルスであり、単独で増殖することができない。増殖にはHBVが存在する必要がある。そのため、HBVと共に感染した場合はB型肝炎の後にD型肝炎が起こる。同時感染では急性肝炎が劇症化しやすいので注意を要する。B型肝炎が治癒すれば、D型肝炎も同じように治癒する。

 

HDVの感染は南ヨーロッパを中心に欧米諸国で多く見られる。HDV感染の予防にはHBワクチンの接種が行われる(HDVの増殖にはHBVが不可欠なため)。

 

・HEV(E型肝炎ウイルス)
○ヘペウイルス属
○一本鎖RNAを持つ
○感染経路…経口感染(汚染した食物や飲み水)→流行あり
○症状…急性肝炎
○ワクチン無し

 

約1~2ヵ月の潜伏期間を経て、急性肝炎を発症する。1ヵ月程度で治癒し、慢性化はしない。HAVと比べると劇症肝炎となる確率が高く、特に妊婦に感染した場合の死亡率が10~20%に達する。

 

HEVは発展途上国において広く分布しているが、国際交流が盛んになる中で輸入感染症として日本に持ち込まれる可能性も存在する。予防としては、流行地域での生の食物や生水の接種を避けることが必要である。なお、HEVは人畜共通感染症としても重要である。

 

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