トレリーフ物語:数少ない日本生まれの抗パーキンソン病薬
パーキンソン病では、筋肉が固まっていたり、手足にふるえが起こっていたりする運動障害が表れています。
これを治療するために薬が使用され、治療の主軸となっています。
数少ない日本生まれの抗パーキンソン病薬
日本生まれのパーキンソン病治療薬は少ないですが、日本で開発されたパーキンソン病治療薬の一つとしてゾニサミド(商品名:トレリーフ)があります。
ゾニサミドは元々てんかんの治療薬として開発された薬であり、エクセグランという商品名で販売されています。エクセグランは当時の大日本製薬が開発した薬です。
そのような中、日本のある病院で前傾姿勢や無動などの症状を有するパーキンソン病患者がてんかん発作を起こしました。そこで、てんかんをコントロールするために治療薬としてゾニサミドが使用されました。
すると、ゾニサミドの投与によってパーキンソン病による筋肉の緊張や姿勢が改善されました。
さらに投与量を増やすと入浴やトイレを自立して行えるようになり、ここからさらに投与量を増やすことによって日常生活に支障が出なくなるレベルにまで改善したのです。
ゾニサミドがドパミン量を増やす作用が報告されていたことから、ゾニサミドはてんかんだけでなくパーキンソン病の治療効果があるのではないかと考えられました。
ここからさらに小規模の臨床試験を行うことで、ゾニサミドのパーキンソン病を治療する効果が明らかになったのです。
これらの結果を元に製薬企業との臨床試験が始まり、ゾニサミドはパーキンソン病治療薬トレリーフとして新たに発売されました。ただし、トレリーフの開発に関しては残念な事も存在しました。
元の医薬品より何十倍も高い!!
この残念な事とは薬価(薬につけられた値段)に関することです。
ゾニサミドがパーキンソン病治療薬トレリーフとして発売された当初、抗てんかん薬としてのゾニサミド(商品名:エクセグラン)の薬価は一錠40円(100mg)で販売されていました。
しかし、パーキンソン病治療薬としてのゾニサミド(商品名:トレリーフ)が発売された時につけられた薬価は一錠1085円(25mg)でした。
抗てんかん薬であれば一錠100mgで40円にも関わらず、パーキンソン病治療薬では4分の1の一錠25mgの用量で1085円になります。全く同じ成分ですが、治療する病気によって値段が大きく異なってしまいます。
なお、新薬を創出する場合であれば莫大な費用と時間がかかります。その成功率も低く、ほとんどの製薬企業の研究者は新薬開発を行うことなくその研究生活を終えます。
しかし、既に開発されている薬を「他の病気の治療薬」として再開発する場合であれば、成功率が高くなります。既に副作用情報などを含めた安全性が確認されており、薬物動態に関しても検討済みとなっています。
そのため、既にある薬を再開発することによっても新薬開発を行うことができます。全くゼロの状態から新薬開発を行うだけが医薬品研究ではありません。
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