タクロリムス物語:臓器移植を可能にした免疫抑制薬
免疫系は私たちの体になくてはならない機能です。これにより、感染症を防いでくれたり、治してくれたりしているのです。
しかし、臓器移植の時は話が違います。このとき、免疫系が逆に障害となるのです。これが拒絶反応です。
タクロリムスは免疫を抑制する薬であり、この薬により臓器移植が可能となっているのです。なお、タクロリムスは日本で開発された薬です。
キーワード:キラーT細胞、IL-2(インターロイキン-2)
拒絶反応
白血病のとき骨髄を移植してもらいますが、骨髄(白血球)の型が合わないといけないという話を聞いたことがあると思います。
そして、型が合う確率はとても低いということも知っていると思います。同じように臓器にも型があり、この型が合わないと必ず拒絶反応が起こります。
拒絶反応が起こる場合、まずIL-2という物質が放出されます。このIL-2により、キラーT細胞が活性化します。そして、このキラーT細胞が移植臓器を破壊しようとするのです。
それではIL-2の産生を阻害してやればどうなるでしょうか。
IL-2がないとキラーT細胞は活性化しません。キラーT細胞が働かなくなるので移植臓器が破壊されることはなくなります。これによって、免疫系を抑制するのです。
タクロリムスの発見
当時の藤沢薬品は1983年、臓器移植後の拒絶反応をなくす薬の探索を始めました。カビ約8000種、放線菌約12000種を調べ、1984年筑波山の土壌にタクロリムスを生成する菌を発見しました。
タクロリムスと同じように「IL-2産生を抑制することで作用する薬」にシクロスポリンという物質がありました。しかし、タクロリムスはこのシクロスポリンよりもよく効く薬でした。
そして、1989年Starzl教授(Pittsburgh大学)による肝移植患者での治験が開始されました。それからというもの、タクロリムスは臓器移植に欠かせない日本発の「世界に代表する医薬品」となったのです。
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