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標準予防策の実施と感染症

 

 標準予防策の実施
感染症の三大要因には「病原体、感染経路、感受性宿主」があり、それぞれの対策の仕方があります。そして、これら全てに共通する対策として、標準予防策があります。

 

 標準予防策

 

感染症予防の基本は標準予防策であり、患者全員に対して標準予防策を実施する必要があります。

 

具体的には、 「患者さんと接するときにはマスクをする」 また「使用済み針はキャップをする」などを行い、患者さんと医療従事者双方における感染の危険を減少させます。

 

 問題となる病原菌
それぞれの感染経路で問題となる病原菌を紹介します。

 

飛沫感染ではインフルエンザウイルス、風しんウイルス、マイコプラズマなどがあります。空気感染では結核菌、麻しんウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなどが問題となります。接触感染ではノロウイルス、腸管出血性大腸菌、MRSA
などが感染を起こします。

 

 問題となる病原菌

 

これら感染症の中で「飛沫感染を起こすインフルエンザ」、「空気感染を起こす結核菌」、「接触感染を起こすノロウイルス」が頻繁に問題となります。

 

 インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスの特徴ですが、潜伏期間が1~3日で38~40℃の熱を出します。感染様式は飛沫感染です。

 

主な症状としては悪寒、発熱、筋肉痛、関節痛などがあります。

 

 インフルエンザウイルス

 

予防用法はうがい・手洗い、マスクとなります。飛沫は比較的粒子が大きいため、マスクによってシャットアウトすることができ、とても有効です。 また、インフルエンザワクチンによる予防も効果的です。

 

 インフルエンザによる入院者数
下図にインフルエンザによる一年間の入院者数を示してあります。

 

 インフルエンザによる入院者数

 

ご覧の通り、小児でインフルエンザによる入院が多いことが分かります。これは、インフルエンザに対する免疫力が弱いため、小児の入院者数が多くなることが推測されます。

 

 インフルエンザによる死亡者数
次にインフルエンザによる一年間の死亡者数についてです。

 

 インフルエンザによる死亡者数

 

先ほど小児で入院患者が多いことを示しましたが、インフルエンザによる死亡者で考えると、生まれて年を追うごとに死亡者が少なくなり、20~29歳を境として死亡者の増加が確認できます。

 

特に、死亡者は高齢者に多いことが分かります。高齢者になるほど糖尿病、心臓病などの基礎疾患を患っている可能性が高くなり、高齢という要因も重なって死亡者が多くなってしまうことが考えられます。

 

 結核菌
結核菌の特徴ですが、潜伏期間が数ヶ月から年単位であり、空気感染によって感染症を起こします。

 

主な症状としては咳、痰、発熱であり、 3~4 種類の薬を6~9 ヶ月、毎日内服することによって治療します。

 

 結核菌

 

予防方法としてはBCG ワクチン、そして栄養状態、睡眠、ストレスなどのコントロールによる免疫力の維持があります。

 

 結核の発病予防
結核菌の感染力は非常に強いです。結核菌の感染者が咳などで菌を排出してしまった場合、同じ部屋にいるほとんどの人は結核に感染してしまいます。

 

そのため、普段の生活上で感染者との接触における予防は極めて難しいことが考えられます。

 

さらに、結核は数ヶ月から年単位の潜伏期間を経て発症することがあります。そのため、結核菌に感染してもすぐに分からない場合が多いです。

 

ただし、結核菌に感染しても、必ずしも発症するとは限りません。生涯のうち、結核菌に感染して実際に結核を発症するのは10人に1~2人程度と言われています。

 

結核には「結核菌に初めて感染し、すぐに菌が増殖して発病する場合」と「体内で何十年を過ごす冬眠状態を経て発病する場合」があります。

 

 結核の発症様式

 

どちらの場合でも、重要なのは免疫力となります。高齢や糖尿病などの基礎疾患、栄養状態が悪いなどで免疫力が低下してしまうと、結核菌の増殖を抑えられない場合があります。

 

 ノロウイルス
ノロウイルスの特徴ですが、潜伏期間が24~48時間で、主に11~3月の冬季に発生します。

 

感染様式は接触感染であり、悪心・嘔吐、下痢、腹痛などを主な症状とします。

 

 ノロウイルス

 

ノロウイルスの予防方法は次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が基本であり、有効な薬・ワクチンはありません。そのため、ノロウイルスの感染症に罹った場合、輸液などの対症療法を行うしかありません。

 

 ノロウイルス感染の概要
下図にはノロウイルスが感染を起こす様式について載せてあります。

 

 ノロウイルス感染の概要

 

ノロウイルスはカキなどの二枚貝に蓄積されます。ノロウイルスを含むカキを十分に加熱せずに食べた場合、ウイルスが口の中に入って感染を起こします。

 

ノロウイルスは100個以下の少ない量でも感染が成立する、非常に感染力の強いウイルスです。感染すると腸管で増殖し、悪心・嘔吐、下痢、腹痛などの症状を起こします。

 

感染者の嘔吐物や糞便などにノロウイルスが含まれるため、これらが環境中へ排泄され、嘔吐物の飛散、また消毒が不十分であった場合、ウイルスが他の人の口の中に入って感染を引き起こします。

 

このサイクルが繰り返されることで、ノロウイルスによる集団感染が発生します。

 

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