一標本t検定
2群の差
2群間に差があるかどうかを調べるのに「関連2群」と「独立2群」がある。関連2群は同じ個体(同じ人、同じ動物)で2条件を比較するもので、独立2群は異なる個体で2条件を比較するものである。
例えば、同じ人で薬を飲む前と後で最高血圧を測定したとする。このときの血圧の差は同じ個体で測定したものである。つまり、関連2群となる。
|
血圧(前) |
血圧(後) |
A |
120 |
110 |
B |
135 |
113 |
C |
116 |
118 |
↑関連2群
今度は、健常人群と肥満者群で血中の中性脂肪値を測定したとする。このときの比較は独立2群となる。健常人と患者では全く異なる人であり、両者を関連させて検定するわけにはいかない。
|
健常人 |
患者 |
A |
74 |
154 |
B |
95 |
190 |
C |
86 |
167 |
↑独立2群
一標本t検定(パラメトリック法)
一標本t検定は関連2群の差の検定であり、ペアしている2群間に差があるかどうかを検定する方法である。
・仮説の設定
帰無仮説(H0):「2群間に差がない」と仮定する。
対立仮説(H1):「2群間に差がある」と仮定する。
・確率を求める
各ペアの差dを求め、この平均値を統計量とする。その後、下の式でt値を出す。
Sdは差dの標準偏差で、nはデータ数である。
このとき、tαは自由度df = n-1のt分布に従い、t分布表からtαの値を探す。
・判定
|t|≦tαのとき、P≧αとなり帰無仮説を棄却できない。
|t|>tαのとき、P<αとなり帰無仮説を棄却する。有意差あり。
………………………………………………………………………………………………………………
例題
血圧降下薬Xの効果を調べるため、健康な男子に薬物Xを投与して投与前と投与後の最高血圧の値を比較した。薬物Xは血圧降下の作用があるかどうかを検定しなさい。
|
血圧(前) |
血圧(後) |
d(=差) |
A |
120 |
106 |
14 |
B |
135 |
113 |
22 |
C |
116 |
98 |
18 |
D |
132 |
114 |
18 |
E |
124 |
107 |
17 |
F |
130 |
120 |
10 |
(注:このデータは便宜的に作ったもので、実際のデータではない)
検定のときは、最初に帰無仮説と対立仮説を立てるのが原則である。
帰無仮説:薬物X投与前と後では、最高血圧値は変わらない。
対立仮説:薬物X投与前と後では、最高血圧値が変化する。
・計算
一標本t検定では、まずと標準偏差Sdの値を求めなければならない。
= (14+22+18+18+17+10)/6 = 16.5
また、標準偏差Sdを計算すると3.73となる。データ数nは6なので、この三つの値からt値を計算する。
(=dの平均) |
Sd(=dの標準偏差) |
16.5 |
3.73 |
自由度dfはn-1 = 6-1 = 5 のt分布に従うので、t分布表よりt0.05=2.571と分かる。
|
P=0.05 |
df=1 |
12.706 |
2 |
4.303 |
3 |
3.182 |
4 |
2.776 |
5 |
2.571 |
t値 = 10.8>2.571 = tαより、t>t0.05となる。つまり、P<0.05となるので帰無仮説を棄却し、対立仮説を採用する。つまり、「薬物X投与前と後では、最高血圧値が変化する」ということができる。
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