物理化学でのエネルギー
エネルギーの概念
皆さんが高校生の頃、エネルギーの分野を勉強していてJ(ジュール)という単位を習ったはずである。みんなはこの単位を聞いてピンとくるだうか。
例えば「重さが10kgである」とか「20mの長さ」とか言われれば、多くの人はすぐに理解してくれるはずである。しかし、「10Jの熱量」と言われても多くの人は「その量は大きい値なのか小さい値なのか分からない」という人がほとんどであると思う。
それならば、こう考えてはどうであろうか。
今、机の上に1kgの重りがある。地球の重力は9.8m/s2であるが、面倒なので「9.8m/s2≒10m/s2」とする。力の単位であるN(ニュートン)は F=ma で「重さ×加速度」でだせるので、この重りは10Nの力で机を押していることになる。
この重りを1m上げるとする。このとき使ったエネルギーは、U=mgh なので 10N×1kg = 10J となる。つまり、「10Jの熱量」とは「1kgの重りを1m上げるのに必要なエネルギー」と考えることができる。
莫大なエネルギー
ここで水素が燃焼したときのエネルギーを考えてほしい。水素が燃焼したときは次のような発熱をする。
つまり、水素が1mol燃焼すると286kJのエネルギーが出るのである。この286kJという数値と「1kgの重りを1m上げるときのエネルギー」の例を見比べて何か思わないだろうか。
「1kgの重りを1m上げるときのエネルギー」は10Jである。それに対し、286kJとは言い換えれば286×103Jである。10Jと286×103Jを比べると、その差は28600倍である。
私が何を言いたいかというと、「水素が1mol燃えると28.6tの物体を1m持ち上げれるだけのエネルギーが発生する」ということが言いたかったのである。
もっと身近なものに置き換えてみよう。都市ガスとして使用されるメタンは1mol燃焼したときに891kJのエネルギーを出す。つまり、89.1tの重りを1m持ち上げれるだけのエネルギーが発生するのである。
こう考えると、物を燃やすとかなりのエネルギーが発生すると理解できるのではないだろうか。
滝の上と下では水温が違う
ナイアガラの滝を近くで見ると多くの人はすごいと感嘆すると思う。しかし、上下の高さは約50mしかないのである。ただ、横幅が長いので壮大な光景に映るのである。
その滝であるが、実は「滝から落ちる前の上の水と流れ落ちた下の水の水温は微妙に違う」ということが考えられる。理論的には滝から落ちた後の水のほうが、水温が少しだけ上昇しているはずである。
1gの水が50m上から落ちるとする。このときのエネルギーは次のように計算できる。
1×10-3(kg)×9.8(m/s2)×50(m)=0.49(J)
ここで、ジュール(J)をカロリー(cal)に直そうと思う。1cal = 4.184J なので、0.49(J)を4.184で割ると0.117(cal)になる。「1calとは1gの水を1℃上昇させるのに必要な熱量」である。つまり、滝の下の方が0.117℃上昇しているのである。
仕事率
時間ごとにどれくらいの仕事をしているかを示すのが仕事率である。仕事率はワット(W)で表し、「1秒にどれくらいのエネルギー分の仕事をしたか(J/s)」を意味する。
ところで、一日の成人男性が必要なカロリー量は約2500calと言われています。2500calをジュール(J)に直すと 1.046×107(J)である。これを、仕事率に直すと次のように計算できる。
1.046×107(J)÷(24×60×60)=1.21×102(W)≒120(W)
蛍光灯の仕事率が40Wだとすると、ヒトの体はだいたい蛍光灯3本分くらいの仕事率であるといえる。
気体分子の速度
計算によって気体分子の速度を導く。
いま、体積Vの容器に質量mの気体分子をN個入れたとする。ただし、気体は分子間相互作用のない理想気体であると考える。
壁に生じる圧力は、気体分子が1秒間に壁に衝突する回数と衝突によって与えられる力(力積)に比例する。気体の分子密度はN/Vであり、気体分子の速度をvとすると「気体分子が1秒間に壁に衝突する回数」は次の式のようになる。
(N/V)×v
また、力積はmvで表される。このとき、壁の垂直成分にはx軸、y軸、z軸の3成分があるので圧力は全体の1/3となる。つまり、圧力は次式によって表される。
P =
ここで、気体分子が1molあるとするとNはアボガドロ数となる。つまり、mN=M となる。(Mは分子量)
PV = -①
①式を変形すると速度の二乗の平方根の式を得ることができる。
また、運動エネルギーの関係も①式を変形することで出すことができる。
-②
②式を見れば分子のエネルギーは温度だけによるものであり、分子の種類は関係ないことが理解できる。
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