体液移動と浮腫
スターリングの仮説による体液の移動
体の中にある体液は血液から各組織に分布している。血管と細胞の間には浸透圧があり、この浸透圧によって物質が移動しやすくなっている。血液中にはタンパク質があるため浸透圧がある。
毛細血管におけるスターリングの仮説による水分移動は、水分が「動脈→細胞→静脈側へと流れる」という仮説である。
当然であるが、静脈側より動脈側の方がより強い圧力がかかっている。また、細胞からの浸透圧によって血管へも水分が流れる。これらを全体として捉えると、水分が「動脈→細胞→静脈側」と流れているように見える。
このように、「細胞から血管への圧力」と「血管から細胞への圧力」によって適切な水分移動が起こっている。
もし、病気などによってこの水分移動に異常が起こると浮腫となる。
例えば、心不全の場合は心臓のポンプ機能が弱っており、心臓側になかなか水分が戻ってこない。そのため、静脈側の圧力が高まってしまう。その結果、静脈側への水分移動が減少して細胞内に水がたまるようになる。
また、栄養失調の場合でも浮腫が起こる。栄養失調の状態では血液内のたんぱく質が少なくなっている。そのため浸透圧が減少し、体液の水分移動に異常が起こって浮腫となる。
水分平衡
一日の水分摂取量と水分排出量は基本的に同じ量となる。水分摂取には飲水や食事からの水分の他に代謝水がある。代謝水とは体内での物質代謝によって生じる水のことである。例えば、グルコースをエネルギー源として使用した場合、代謝副産物として水を生成する。
水分排出には尿や糞便の他に不感蒸泄がある。不感蒸泄とは発汗や肺からの呼気によって失われる水分のことである。
例えば、以下のような状態の患者に0.9%生理食塩水を点滴するとき、代謝水と不感蒸泄を考えて与える水分量を計算しなければならない。
水分摂取 |
水分排出 |
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計 1600mL | 計 2000mL |
一日の水バランスを考えるなら、点滴すべき0.9%生理食塩水量は400mLとなる。
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