消化性潰瘍と治療薬
消化性潰瘍の概要
潰瘍では皮膚・粘膜において深い傷ができている。胃・十二指腸のおける潰瘍が一般的であり、これらの臓器は胃酸にさらされているため治りにくい。潰瘍になった場合、昔は手術で治していた。しかし、現在では薬が進歩しているため潰瘍ということで手術をするということはほぼない。
潰瘍を治療する場合、「攻めか守りか」に分けられる。つまり、「胃酸をなんとかして抑えてやろう」という攻めと、「粘膜を保護してやろう」という守りに分かれるのである。潰瘍に対する薬はこの二つのうちどれかに該当する。
潰瘍にはある合言葉がある。それは「No acid , No ulear.」である。つまり、「酸がなければ、潰瘍はない」ということである。
攻撃因子抑制
・胃酸分泌の作用
胃酸分泌の機構は下の図によって一つにまとめられる。
それぞれの機構を薬と共に説明していきたいと思う。
・M3受容体遮断薬(抗コリン薬)
抗コリン薬はM3受容体を遮断することによって作用する。これらの薬にはスコポラミン(商品名:ブスコパン)やプロパンテリン(商品名:プロ・バンサイン)がある。これは、M(ムスカリン)受容体においてACh(アセチルコリン)と受容体を競い合うことによってAChの作用を遮断することによって起こる。
スコポラミンは副交感神経節遮断作用がある。プロパンテリンには副交感神経のM受容体遮断と、自律神経節のNn受容体遮断作用をもつ。
また、抗コリン薬には胃腸・気管支などの運動を抑制する作用をもつ。そのため、内臓平滑筋の痙攣を抑える鎮痙薬としても使用される。
・M1受容体遮断薬
M1受容体遮断薬にはピレンゼピン(商品名:ガストロゼピン)がある。この薬は胃酸分泌を強力に抑制する。ただし、抗コリン薬のような消化管運動抑制作用はほとんどない。なお、瞳孔散大や口渇などの副作用は比較的弱い。
・H2受容体遮断薬
この薬はH2受容体を遮断することで胃酸分泌を強力に抑制する。この薬にはシメチジン(商品名:タガメット)、ラニチジン(商品名:ザンタック)、ファモチジン(商品名:ガスター)がある。なお、胃の壁細胞にはH2受容体が存在し、この受容体にヒスタミンが作用することで胃酸分泌が亢進する。
・プロトンポンプ阻害薬(PPI)
胃酸が分泌されるには最終的にプロトンポンプが働かないといけない。最終段階でプロトンポンプが働かなければ、いくらH2受容体やM受容体に刺激を起こしたとしても意味がない。
プロトンポンプ阻害薬はプロトンポンプを作動するのに必要な酵素であるH ,K -ATPaseを阻害する。これによって、持続的で強力な胃酸分泌抑制作用を得ることができるのである。
プロトンポンプ阻害薬にはオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾン)、ランソプラゾール(商品名:タケプロン)、ラベプラゾール(商品名:パリエット)、エソメプラゾール(商品名:ネキシウム)がある。
防御因子増強薬
・粘膜保護薬
粘膜保護薬にはスクラルファート(商品名:アルサルミン)があり、この薬は潰瘍を起こしている部分のタンパクと強力に結合する性質をもつ。これによって保護層を形成する。
また、ペプシンと結合して不活性化する作用もある。食事の一時間前に服用しなければならない。
・プロスタグランジン製剤(PG製剤)
PGE1・PGE2には胃酸分泌抑制作用や粘膜保護作用がある。これらPGE1・PGE2の誘導体が薬として使用される。なお、プロスタグランジン製剤は妊婦に対して禁忌である。
このような薬としてはミソプロストール(商品名:サイトテック)がある。
・粘膜分泌促進薬
胃粘膜の粘液成分の産生・分泌を促進することで胃細胞を保護する。この薬にはレバミピド(商品名:ムコスタ)、テプレノン(商品名:セルベックス)などがある。
一般名 |
商品名 |
薬理作用 |
スコポラミン | ブスコパン | M3受容体遮断薬(抗コリン薬) |
プロパンテリン | プロ・バンサイン | |
ピレンゼピン | ガストロゼピン | M1受容体遮断薬 |
シメチジン | タガメット | H2受容体遮断薬 |
ラニチジン | ザンタック | |
ファモチジン | ガスター | |
オメプラゾール | オメプラール | プロトンポンプ阻害薬(PPI) |
オメプラゾン | ||
ランソプラゾール | タケプロン | |
ラベプラゾール | パリエット | |
エソメプラゾール | ネキシウム | |
スクラルファート | アルサルミン | 粘膜保護薬 |
ミソプロストール | サイトテック | プロスタグランジン製剤(PG製剤) |
レバミピド | ムコスタ | 粘膜分泌促進薬 |
テプレノン | セルベックス |
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