競合阻害・非競合阻害
薬物同士の阻害
薬物を単独で投与する場合、その薬物の投与量によって血中濃度や効果はある程度予想することができる。しかし二つの薬を併用したとき、必ずしも予想通りの効果を発揮するとは限らない。
これは、薬物同士がお互いに作用し合うからである。
競合阻害
競合阻害は「異なる作用を持つ二つの薬物が同じ受容体で、可逆的に受容体を競う合う」ことによって起こる。このとき、薬物濃度に比例して阻害が起こる。
例えば、平滑筋を収縮させる物質にアセチルコリン(ACh)がある。また、平滑筋の収縮を抑制する物質にアトロピン(Atr)がある。
この二つの物質は同じ受容体に結合する。つまり、お互いに結合する受容体を競い合うのである。下に「アセチルコリン単独で投与したときの反応量」と「アセチルコリンとアトロピンを併用して投与したときの反応量」を示す。
アトロピンを投与することで、反応-用量曲線は右にずれる。これは、アトロピンとアセチルコリンが競合的に阻害しているために起こる。
アセチルコリンの量を多くすると、最終的に反応量は100%となる。これは、アトロピン量と比べてアセチルコリン量の方がかなり多い状況であれば、アセチルコリンが受容体に結合する確率の方がかなり高くなるからである。
・アトロピン
アトロピンはムスカリン受容体(M受容体)を遮断し、消化管の痙攣性収縮を抑制する。副作用として散瞳や眼圧上昇がある。
非競合阻害
非競合阻害は「相反する作用を持つ二つの薬物がそれぞれ異なる受容体で結合する」ことによって起こる。このとき、結合する受容体が違うので、薬物量を増やしても単独投与の時と同じ作用を表すことはない。
平滑筋の収縮を抑制する物質にパパベリン(Pap)がある。このパパベリンはアセチルコリンとは異なる受容体に結合する。
下に「アセチルコリン単独で投与したときの反応量」と「アセチルコリンとパパベリンを併用して投与したときの反応量」を示す。
このようにパパベリンを投与することで、反応-用量曲線は下にずれる。このとき、アセチルコリン量を増やしても反応量は100%にならない。
アセチルコリンとパパベリンは異なる受容体に作用しているので、たとえアセチルコリン量が増えたとしても、パパベリンが受容体と結合する確率は変わらないのである。
・パパベリン
パパベリンはホスホジエステラーゼを阻害してcAMPの濃度を増やすことにより、平滑筋の収縮を抑制する。
・その他の非競合阻害
非競合阻害とは競合阻害以外の阻害機構であり、非競合阻害の機構はここで述べた例以外にも存在する。例えば、薬物が受容体に結合することによってタンパク質の構造が変化する。
タンパク質の構造が変化するということは、受容体の形が変化するということである。受容体の形が変化すれば、当然ながらメッセンジャーは受容体に結合しにくくなる。これによって、薬物の働きが阻害される。
このように、非競合阻害にはさまざまなものがある。
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