統合失調症治療薬
統合失調症の病態
統合失調症は青年期に好発する疾患であり、幻覚や妄想などの症状が表れる。統合失調症の原因としては、「脳内のドパミン量が増加しているため」と言われている。
そのため、統合失調症の患者には脳内のドパミン量を減らすように作用する薬を使用する。具体的にはD2遮断薬を用いることにより、統合失調症を改善させる。
なお、統合失調症には陽性症状と陰性症状がある。陽性症状は「幻聴と妄想」であり、「普通の人では聞こえない声が聞こえる(幻覚)」や「支離滅裂な会話」などがある。それに対し陰性症状は「意志・欲望の障害」であり、「自分の感情に無関心」や「生活意欲の減退」などの症状が表れる。
統合失調症治療薬
・D2受容体遮断薬
前述の通り、統合失調症の治療にはD2受容体遮断薬が用いられる。このようなD2受容体遮断薬としてクロルプロマジン、ハロペリドール、スルピリドなどがある。
・クロルプロマジン (フェノチアジン系、商品名:コントミン、ウインタミン)
・ハロペリドール (ブチロフェノン系、商品名:セレネース)
・スルピリド (ベンズアミド系、商品名:ドグマチール)
なお、スルピリドは投与量によって適応が以下のように変わってくる。
・消化性潰瘍 (150mg/日)
・うつ病 (300mg/日)
・統合失調症 (600mg/日)
スルピリドはD2受容体遮断薬であるが、末梢においてD2受容体が遮断されるとアセチルコリンの遊離が促進される。つまり、消化管におけるアセチルコリン量が増えるのである。
アセチルコリン量が増えるので副交感神経が優位になり、消化管運動が活発になる。このような消化管の血流改善・消化管運動亢進作用によって消化性潰瘍を改善させるのである。
・D2受容体・5-HT2受容体遮断薬 (SDA)
統合失調症治療薬にはD2受容体遮断作用が関係しているが、実はD2受容体のみを遮断するクロルプロマジンやハロペリドールなどの薬は陽性症状しか効果を表わさず、陰性症状までは改善しない。
それに対しリスペリドン、ペロスピロンは陽性症状だけでなく、陰性症状まで改善する。これらの薬はD2受容体遮断作用に加え、5-HT2受容体遮断作用を併せもつ。
・多元受容体標的化抗精神薬 (MARTA)
D2受容体と5-HT2受容体を遮断することで陽性・陰性症状の両方を改善することを述べた。次に示す薬はD2受容体・5-HT2受容体に加え、他の多くの脳内受容体を遮断する作用をもつ。このような作用をする薬にオランザピン・クエチアピンがある。
これらの薬は陽性症状・陰性症状を改善するだけでなく、「錐体外路障害を起こしにくい」という特徴をもつ。ただし、副作用とし血糖上昇があるため、糖尿病患者には禁忌である。
薬物名 |
商品名 |
作用機序 |
注意点 |
クロルプロマジン |
コントミン |
D2受容体受容体遮断 | 副作用 : 悪性症候群 |
ハロペリドール | セレネース | ||
スルピリド | ドグマチール | D2受容体受容体遮断 |
投与量による適応変化 |
リスペリドン | リスパダール | D2受容体・5-HT2受容体遮断 | |
ペロスピロン | ルーラン | ||
オランザピン | ジプレキサ |
D2受容体・5-HT2受容体遮断と |
副作用 : 血糖上昇 |
クエチアピン | セロクエル |
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