心筋梗塞と血栓溶解薬・抗血液凝固薬
心筋梗塞
心筋梗塞は冠動脈の閉塞によって起こる。これにより心筋細胞が壊死する。胸痛は通常30分以上持続する。ニトログリセリン舌下錠(硝酸薬)は無効である。
心筋梗塞へは下の図のように進行する。
病気の異常を知る指標として心電図がある。心電図は心臓の活動を電気的に表すものであり、心疾患などに陥ると心電図に異常が見られる。
それぞれP波、Q波、R波、S波、T波で表わされる。P波は心房収縮の始まりを表し、QRS波は心室収縮を表す。T波は心臓弛緩を表している。
心筋梗塞発生後では心電図に変化が見られ、発生後の経過した時間によって下のように変化する。
血栓溶解薬と抗血液凝固薬
血液の凝固や溶解に関わる系として、血液凝固に関わる「凝固系」と血栓溶解に関わる「線溶系」がある。凝固系と線溶系を合わせると、全体として下の図のようになる。
凝固系ではビタミンKやCa2+によってプロトロンビン、トロンビンへと活性化され、トロンビンがフィブリノーゲンをフィブリンに変える。フィブリンが血液凝固を引き起こすため、これによって血液が固まる。
線溶系ではプラスミノーゲンがプラスミンに変換され、血液凝固を起こすフィブリンを分解することで溶血作用を示す。
抗血液凝固薬(凝固系に対する薬)
・血液凝固阻害薬と血小板凝固阻害薬
血液凝固を阻害する薬としては、「血液凝固阻害薬」と「血小板凝固阻害薬」の二種類がある。これは、静脈血栓と動脈血栓とでそれぞれ血栓の成り立ちが違うために使い分けられる。
静脈内で出血が起きた場合、凝固系が亢進して血液が固まる。このとき静脈血栓(赤色血栓)が形成される。そのため、静脈血栓の予防には血液凝固阻害薬が有効である。
動脈内で出血が起きた場合、血流が速いので静脈のようにゆっくり血液が固まるのを待っていては遅い。そのため、動脈では血小板機能の亢進が起きるのである。これによって、動脈血栓(白色血栓)が形成される。そのため、動脈血栓の予防には血小板凝固阻害薬の方が有効である。
・血液凝固阻害薬
血液凝固阻害薬としてはへパリンやワルファリンがある。
血栓形成に関わるプロトロンビンはビタミンKによって活性化される。ワルファリンはビタミンKと拮抗するため、これによってプロトロンビン産生を抑え、血液凝固阻害薬を示す。
また、トロンビンを抑制するものにアンチトロビンⅢがあるが、へパリンはアンチトロビンⅢを活性化する。これによって、間接的に血液凝固阻害薬を示す。※ヘパリンは試験管内でも抗血液凝固作用を示す。
なお、硫酸プロタミンはへパリンと拮抗してその作用を弱める。硫酸プロタミンはへパリン過剰投与による出血傾向を抑えるために使用される。
EDTAはキレート剤であり、Ca2+とキレートを形成することで抗血液凝固作用を示す。
・ワルファリン
経口投与可能
in vitro 有効
in vivo 無効
遅行性(12~36時間有する)
持続性(2~5日有効)
・ヘパリン
注射でしか効果なし
in vitro 有効
in vivo 有効
ヘパリナーゼ(肝臓)で分解
・ワルファリンの作用機構
ワルファリンはビタミンKと拮抗するが、具体的にどのような作用で拮抗するかを見てみたいと思う。
ビタミンKには酸化型と還元型があり、還元型ビタミンKが活性型である。酸化型ビタミンKにビタミンKエポキシド還元酵素が作用することで還元型ビタミンKとなり、作用を示すのである。
ワルファリンはビタミンKエポキシド還元酵素を阻害する。これによって、ビタミンKは酸化型から還元型に変化することができなくなる。これによって、血液凝固阻害薬を示すのである。
・血小板凝固阻害薬
血小板凝固阻害薬の代表的なものにアスピリンがある。
アスピリンは低用量(20~100mg/日)で使用することにより、血小板凝固阻害を示す。これは血小板のシクロオキシゲナーゼ1(COX1)を抑制することで効果を発揮する。シクロオキシゲナーゼ1が阻害されるので、結果としてトロンボキサンA2(TXA2)を阻害するのである。なお、トロンボキサンA2は血小板凝集促進作用を示す。
なお、アスピリンはシクロオキシゲナーゼをアセチル化することで不可逆的に阻害する。つまり、一度アスピリンが作用した血小板は使い物にならなくなるのである。血小板の寿命は一週間程度であるため、それまで血小板凝固作用が持続する。
アスピリンを高用量で用いると鎮痛作用を得ることができるが、血小板凝集阻害という観点で言えば逆効果となる。高用量では「血小板凝集抑制作用を示すプロスタグランジンI2(PGI2)」まで阻害するようになってしまうからである。これを「アスピリンジレンマ」という。
血小板凝集抑制作用を示すプロスタグランジン類にはPGI2とPGE1が存在する。
血栓溶解薬(線溶系に作用する薬)
ウロキナーゼなどの血栓溶解薬はプラスミノーゲンをプラスミンに変換する。このプラスミンがフィブリンを分解する。つまり、一度固まった血液(血栓)を溶解させるのである。なお、ウロキナーゼは全身のフィブリンに作用する。
※トラネキサム酸は線溶系の機能亢進による出血傾向に対して使用する。
血栓溶解薬には次のようなものがある。
薬物名 |
注意点 |
|
UK | ウロキナーゼ | |
t-PA | アルテプラーゼ |
発症後 |
チソキナーゼ | ||
Mutant-tPA | モンテプラーゼ |
発症後 |
パミテプラーゼ |
アルテプラーゼは遺伝子組換え型のt-PAである。フィブリン上でプラスミンを生成するため、プラスミノーゲンインヒブターの影響を受けない。
血栓溶解薬の副作用として出血がある。これは、内出血による出血を止めてある血栓まで溶かしてしまうためである。
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