ホルモンと情報伝達
ホルモンとは
ホルモンは特定の器官や組織によって作られ、血流によって遠くの組織・器官に作用する。これによって特定の組織に特定の反応を起こさせる。
ホルモンの特徴
・特定の器官で作られる
・血液によって運ばれる
・微量である
・特定の器官に作用する
・化学物質である
同じ「ホルモン」でも焼肉のホルモンとは全く別のものである。焼肉のホルモンは関西弁で「放おるもん(不要な部分)」という意味である。ここでのホルモンは内分泌のことを指す。
恒常性の維持(ホメオスタシス)
外界は常に変化している(温度、湿度など)。
私たちはこの変化に対応していかなければならない。このような変化に対応するためには次の三つが必要不可欠である。
・免疫系
・神経系
・内分泌(ホルモン)
ただし、それ以前の恒常状態では対応できない状況に陥った場合、新たな恒常性を作り出す。例えば、人類が突然飢餓状態に陥ればそれに対応する恒常性を作り出す。体内の水分、血糖値、酸素・二酸化炭素量・血圧などを維持するのに特に自律神経とホルモンが重要である。
免疫系は細菌やウイルスなどの外敵から身を守る役割をする。それでは神経系とホルモンは何が違うのであろうか。
例えるとするなら神経系は電話に、ホルモンは手紙に例えられる。電話は瞬時に相手に繋がる。神経は電気信号によって興奮を瞬時に伝えることができる。
それに対し、手紙は書くのに時間がかかるし、相手に届くのにも時間がかかる。これと同じことがホルモンにも当てはまる。ホルモンは内分泌腺で合成されるのに時間がかかり、分泌されて血流に乗り標的組織にたどり着くまで時間がかかる。
つまり、ホルモンは時間がかかるため反応が遅い。そのため神経系のような即効性ではなく、持続的な効果を発揮する。
ホルモンは微量(10-15~10-9mol/L)しか存在せず、ギリシャ語で「促進」という意味をもつ。現在では抑制性のホルモンも知られている。また、ホルモンは特定の器官に作用するといったが成長ホルモンはほとんどの組織に作用する。
フィードバック機構
ホルモンにとってフィードバックはとても重要な意味を持つ。フィードバックには二種類あり、それぞれ「正のフィードバック」「負のフィードバック」がある。
・正のフィードバック
ある変化が起こったとき、その作用をさらに強めるように働くことを正のフィードバックという。例えば、出産時に働くオキシトシンがある。
オキシトシンが分泌されると、子宮筋が収縮する。これが刺激となり、さらにオキシトシンが分泌される。つまり、「オキシトシン分泌 → 子宮筋の収縮 → さらなるオキシトシン分泌 → ……」という流れになる。このように、オキシトシン分泌がきっかけとなり、さらなる分泌が促されるのである。
・負のフィードバック
また、ホルモンの量が多くなるとホルモン生産を抑制しないといけない。このとき、生産されたホルモンが生産される前のホルモン(または自分自身)に働いて不活性化させる。これが負のフィードバックである。
ホルモンが自分自身に負のフィードバックをするときが超短経路フィードバック、一つ上位のホルモンに作用するときは短経路フィードバック、二つ以上の上位に作用する場合は長経路フィードバックである。
ホルモンの分類
ホルモンにはさまざまな分類分けがあるが、その分類分けの一つに「ホルモンが疎水性であるか親水性であるか」がある。疎水性のホルモンをグループⅠ、親水性のホルモンをグループⅡという。
ホルモンは血液を介して運ばれる。親水性ホルモンなら問題ないが、血液は水分を多く含むので疎水性ホルモンはそのままの状態では都合が悪い。そのため、疎水性ホルモンはホルモンを運ぶための輸送タンパク質に結合して運ばれる。
また疎水性ホルモンの受容体は細胞内にあり、親水性ホルモンの受容体は細胞膜に存在する。これは細胞膜が脂質で構成されているためである。脂質は疎水性なので疎水性ホルモンは膜を介して細胞内に入ることができるが、親水性ホルモンは脂質の膜に阻まれて細胞内に入ることができないのである。
親水性ホルモンは細胞膜の受容体と結合すると、シグナル(セカンドメッセンジャー)を発信して内部に情報を伝える。そのため親水性ホルモンは情報伝達速度が速い。しかし、疎水性ホルモンが作用するには細胞内まで入らないといけないので情報伝達速度は遅い。
|
グループⅠ |
グループⅡ |
---|---|---|
溶解性 |
疎水性 |
親水性 |
輸送タンパク質 |
有 |
無 |
受容体 |
細胞内 |
細胞膜 |
半減期 |
長い |
短い |
情報伝達速度 |
遅い |
速い |
疎水性ホルモンは輸送タンパク質とくっついているので半減期が長い。それに対し親水性ホルモンは半減期が短く、腎臓で速やかに処理される。
グループⅠ(疎水性ホルモン)の作用機構
①まず、疎水性ホルモンは細胞膜を通過して細胞内に入っていく。
②細胞内に入ったホルモンは受容体と結合する。ただし、受容体は細胞質にある場合と核の中にある場合がある。
受容体が細胞質にあるなら、細胞質で「ホルモン-受容体」の複合体を形成して核の中に入る。受容体が核内にあるなら、ホルモンが核の中に入ってから複合体が形成される。
③複合体はホモまたはヘテロの二量体を形成する。 ←(ホルモン-受容体)×2
ホモとは「同じ性質のもの」、ヘテロとは「違う性質のもの」という意味である。
④二量体は遺伝子のホルモン応答エレメント(HRE)という部分に結合する。これによって、遺伝子の発現の制御を行う。(遺伝子の活性化or抑制化)
HREは転写開始の頻度を調節しており、エンハンサーみたいに存在する位置や方向に関係なく作用する。
ホルモン受容体
ホルモンは受容体と複合体を形成する。そして、ホルモン-受容体複合体はホモまたはヘテロの二量対を形成してDNAに結合する。
ホモ二量体型を形成する受容体は細胞質または核内に存在している。ホルモンが不在のときはホルモンの代わりに抑制性タンパク質(Hsp90を含む)と複合体を形成している。この状態では細胞質に存在する。
ホルモンが存在する状態では受容体から抑制性タンパク質が解離し、ホルモンと結合した後核内へ移動してHREに結合する。それに対し、ヘテロ二量体型を形成する受容体は核内のみに存在する。
また、核内受容体は下のような領域をもつ。
ホルモンはホルモン結合領域に結合する。すると受容体の形が変わり、DNA結合領域が活性化してDNAに結合できるようになる。これによって、DNAの転写が活性化する。
DNA結合領域にはZinc Finger(ジンク・フィンガー)領域が存在している。このZincフィンガーモチーフを介してホルモン応答配列(HRE)に結合する。
可変領域では常に+に結合する。つまり、ホルモンが受容体に結合しなくても普段は低レベルに発現している。
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