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役に立つ薬の情報~専門薬学

抗凝固薬の作用機序と心房細動:血栓の予防

 

動脈硬化など、主に血流の早い動脈で生成する血栓が血小板血栓である。これを予防するために、抗血小板薬が使用される。

 

脂質異常症患者では動脈硬化が起こりやすくなっているが、これらの患者が抗血小板薬を服用するにはこのような理由がある。

 

ただし、血液が固まる反応としては2段階存在する。1つは「血小板が固まる過程」となる。つまり、血小板血栓の生成である。そしてもう1つが「フィブリンによって、より強固な血栓を作る過程」になる。フィブリン血栓の生成である。

 

 血小板血栓とフィブリン血栓

 

血小板が血液を固めるが、さらにここにフィブリンが血小板に作用して糊のような働きを行い、血栓をより強固にしていく。このフィブリンが関与するまでの過程を血液凝固反応と呼び、これら血液凝固を阻害することによっても血液が固まる過程を抑制することができる。

 

 血液凝固反応
血液凝固の最終段階としてフィブリンが関与するが、このフィブリンが生成するまでには多くの物質が関与している。

 

この時、血液凝固に関わる物質を凝固因子と呼ぶ。この凝固因子には、ローマ数字の番号がつけられている。

 

血液凝固反応では、これら多くの凝固因子が絡み合っているのでどうしても複雑になってしまいうが、血液凝固を理解する上では「第Ⅹ因子」が関わる部分から先を理解するだけで問題ない。

 

なお、血液凝固反応の流れとしては以下のようになる。

 

 血液凝固系

 

血管に傷がついて外に漏れ出した時、凝固反応によって出血を止めようとする。この時、出来るだけ素早く血液を凝固させることで出血による被害を最小限に食い止めようとする。この時の反応が外因系である。

 

ただし、血管の外だけでなく、血管内でも血液凝固が起こる。このように、血管内で発生する血液凝固を内因系と呼ぶ。

 

外因系の血液凝固は10~13秒と比較的早く、内因系では15~20分と凝固反応が遅く進行していく。その中でも、「外因系と内因系の両方の反応とも第Ⅹ因子に行き着く」という事を認識できれば良い。

 

この反応では、第Ⅹ因子が活性化されて第Ⅹa因子へと変換されていることが分かる。第Ⅹa因子のaは「action」という意味であり、活性化された第Ⅹ因子となる。

 

この第Ⅹa因子は次の反応を進めて行くために、プロトロンビンに作用する。このプロトロンビンはトロンビンへと変換され、このトロンビンがフィブリンを生成する。つまり、血液凝固反応を抑制するためには、フィブリンの生成を抑えてしまえば良いことが分かる。

 

 

 ワルファリンの作用機序
現在では抗凝固薬にも様々な種類が存在する。しかし、2011年にダビガトン(商品名:プラザキサ)が承認されるまで、唯一の抗凝固薬としてワルファリン(商品名:ワーファリン)が長い間活躍していた。

 

血液凝固反応では多くの因子が関与するが、その中でも反応の最後の方に存在する第Ⅹa因子やトロンビンが重要になる。ただし、ワルファリンではそれよりも前の因子に作用する。

 

これら血液凝固に関わる因子のうち、肝臓で作られる時にビタミンKを必要とする凝固因子が存在する。この因子としては、凝固因子の中でもプロトロンビン(第Ⅱ因子)、第Ⅶ因子、第Ⅸ因子、第Ⅹ因子の4つがある。

 

これらの4つの凝固因子を阻害することによっても、結果としてフィブリンの生成を抑えることで血液凝固を抑制することができる。そして、ワルファリンはビタミンKの作用を抑える働きがある。

 

 ワルファリンの作用機序

 

前述の通り、4つの凝固因子の生成にはビタミンKが必要不可欠である。そのため、ビタミンKの作用を抑えることができれば、これら凝固因子の働きをなくすことができる。その結果、血液凝固を阻害するのである。

 

ワルファリンの抗凝固作用は強力であり、それぞれの患者に応じて投与量の調節が可能である。長年使われ続けられたため、使用経験も豊富だ。

 

しかし、有効域と毒性域の範囲が狭いために「定期的な血液検査」や「細かい用量調節」が必要であった。

 

また、ビタミンKの阻害が作用機序であるため、ビタミンKを多く含む食品と一緒にワルファリンを服用すると抗凝固薬としての作用が落ちてしまう。そのため、これらビタミンKを多く含む食品の摂取を制限しなければいけないという問題点もあった。

 

※ワルファリンはビタミンKを多く含む納豆や青汁などの食品と一緒に服用すると、薬の効果が落ちてしまう。

 

ワルファリンは抗凝固薬として長い間使われていたが、このように多くの問題点も有する薬であった。

 

 直接抗トロンビン薬
フィブリン血栓が作られる時、トロンビンが作用することでフィブリノーゲンからフィブリンへと変換する過程がなければいけない。つまり、このトロンビンの作用を抑えることができれば、血液凝固を抑制することができる。

 

このように、トロンビンを直接阻害することによって抗凝固作用を示す薬としてダビガトラン(商品名:プラザキサ)がある。

 

ダビガトランが発売される以前では、ワルファリンが唯一の抗凝固薬であった。しかし、前述の通りワルファリンには定期的な血液検査やビタミンKを多く含む食品(納豆や青汁など)を制限する必要がある。

 

そこで、ダビガトランはワルファリンで必要だった血液検査が不要であり、食事制限も必要ない薬として登場した。

 

 第Ⅹa因子阻害薬
トロンビンの作用によってフィブリノーゲンからフィブリンが生成される。ただし、この一つ前の段階として第Ⅹa因子がプロトロンビンをトロンビンへと変換する過程が存在する。

 

つまり、この第Ⅹa因子を阻害することによっても血液が固まる過程を抑制できる事が分かる。以下に高トロンビン薬の作用機序を併せて、第Ⅹa因子阻害薬の作用機序を記す。

 

 抗トロンビン薬と第Ⅹa因子阻害薬の作用機序

 

第Ⅹa因子が1つ存在すると、1000個ものトロンビンが作られるとされている。そのため、第Ⅹa因子を阻害すると効率よくトロンビンの生成を阻害し、より強力に抗凝固作用を抑えることができる。

 

このように、第Ⅹa因子を阻害することによって血液凝固を抑制する薬としてリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、アピキサバン(商品名:エリキュース)、エドキサバン(商品名:リクシアナ)などがある。

 

一般名

商品名

作用機序

ワルファリン

ワーファリン

ビタミンKの阻害

ダビガトラン

プラザキサ

直接抗トロンビン薬

リバーロサキバン

イグザレルト

第Ⅹa因子阻害薬

アピキサバン

エリキュース

エドキサバン

リクシアナ

 

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