アトピー性皮膚炎の治療薬
アトピー性皮膚炎を一言で表すと、「皮膚がかゆくなる病気」と表現することができる。この時のかゆみは湿疹を伴い、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す。
多くのアトピー性皮膚炎患者は皮膚が乾燥しやすく、元々アレルギーを起こしやすい体質となっている。
このように、アトピー性皮膚炎は「アトピーを起こしやすい素因や敏感肌などの遺伝的体質」が元となっている。これに、「ダニやホコリ、花粉などのアレルギーに関わる要因」や「発汗やストレス、ひっかくなどアレルギーと関係ない要因」が加わることによってアトピー性皮膚炎を発症する。
アトピー性皮膚炎治療の原則
① 薬による治療
アトピー性皮膚炎では皮膚に炎症やかゆみが起こっている。そこで、これらの症状を抑えるために薬が使用される。
この時に使用される薬としては塗り薬(外用薬)と飲み薬(内服薬)がある。その人のアトピー性皮膚炎の重症度によって使い分けられるが、かなりの重症になれば内服薬を服用することになる。
ただし、ほとんどの場合は塗り薬としての外用薬である。アトピー性皮膚炎の治療薬としてステロイドが多用されるが、外用薬として使用する場合であれば飲み薬ほどの副作用はない。
ステロイドによる副作用が問題となるのは多くの場合、内服薬として口からの服用や注射薬によるケースである。この時であれば、ステロイドは血液を介して全身を巡ることになる。
それに対し、塗り薬であれば薬を塗った部分のみに作用させることができる。これによって、ステロイドの強力な作用を持ったまま副作用を抑えることができる。
② スキンケア:保湿剤
アトピー性皮膚炎患者では皮膚のバリア機能が弱く、乾燥している。そのために、アレルギーを引き起こす抗原(アレルゲン)が侵入しやすくなっている。さらに、皮膚から水分が逃げやすくなっている。
そこで、保湿剤によって角質層へ水分を補い、皮膚から水分が逃げていく過程を抑える必要がある。
アトピー性皮膚炎の治療を行う上で炎症を抑える薬を塗るだけでは十分でなく、このような保湿剤によるスキンケアを続けることが重要となる。
③ 症状の悪化要因を除去
薬による治療とスキンケアを行った場合、ほとんどのアトピー性皮膚炎の症状を抑えることができる。しかし、中にはこれらの治療を行ったとしても症状改善の見られないケースがある。
この場合、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させている要因を探し出して除去することも重要となる。これらの因子としては、食物や汗、ダニ、ホコリ、細菌、ストレスなどがある。
そのため、生活環境を改善したり皮膚を清潔に保ったりすることによって、症状が改善することもある。
塗り薬(外用薬)による治療
・ステロイド外用薬
アトピー性皮膚炎の標準的な治療としてステロイド外用薬がある。ただし、この時のステロイド外用薬にはそれぞれ強さがある。
薬が違えば、当然ながらその効果の強さも異なってくる。そのため、症状や部位、年齢、季節などに応じてステロイド外用薬を細かく使い分ける必要がある。
ステロイド外用薬はその強さによって以下の5つに分類される。
これらステロイド外用薬を使用する時にはいくつか注意点がある。その中の一つとして、「顔にはなるべく使用しない」という事がある。顔面は薬の吸収率が高いため、薬を用いるとしても比較的作用の弱いステロイド外用薬を短期間使用する。
・免疫抑制剤(外用薬)
例えば臓器移植を行ったとき、移植した臓器は他人のものである事には変わりはない。そのため、自身の免疫機構が移植した臓器を攻撃するようになる。これが拒絶反応である。せっかく臓器移植を行ったとしても、他人の臓器であるために受け入れることができないのである。
この問題を解決するために開発された薬が免疫抑制剤である。免疫抑制剤はその名の通り、体の免疫機能を抑制する作用がある。
私たちの免疫は自分自身と異物とを見分けることができる。例えば、細菌が侵入してきた時はこの細菌を異物と認識して攻撃する。
同じように他人の臓器が移植されると、免疫はこの臓器を異物と認識して攻撃を始める。これによって拒絶反応が起こってしまうが、免疫抑制剤はこの免疫機能を抑制する。このような作用によって、移植後の拒絶反応を回避することができる。
アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患の一つであるが、これらアレルギー疾患は免疫系の異常が大きく関わっている。免疫抑制剤は拒絶反応を抑えるくらい強力な作用があるため、同じように免疫系が関わっているアトピー性皮膚炎に対しても使用できないかと考えた。
そこで、ステロイド外用薬で効果が不十分な場合や、顔面などステロイド外用薬では副作用が出やすい部位に免疫抑制剤の外用薬が使用される。
このように、免疫抑制剤を外用薬にすることによってアトピー性皮膚炎の治療薬とした薬にタクロリムス(商品名:プロトピック)がある。
飲み薬(内服薬)による治療
・かゆみを抑える:抗ヒスタミン薬など
アトピー性皮膚炎で問題となる症状として「かゆみ」がある。皮膚にかゆみが出ることによって、その部位を爪などによって引っ掻くようになる。すると、皮膚のバリア機能が低下して皮疹が悪化してしまう。そこに、さらにかゆみが増すという悪循環に陥る。
そこで、アトピー性皮膚炎によるかゆみを抑える薬が使用される事もある。このようなかゆみを抑える薬として抗ヒスタミン薬がある。
保湿剤(スキンケア)
アトピー性皮膚炎では皮膚バリア機能の低下が問題となっている。このような症状によって皮膚の水分保持能力が低下したり、かゆみを感じたりするようになる。
そこで、これらの症状を和らげるために保湿剤を活用する必要がある。皮膚を清潔に保ち、皮膚の保湿や保護を行うことによって、アトピー性皮膚炎の症状を抑える。
このように、皮膚の保湿を行うことによってアトピー性皮膚炎の症状を和らげる薬として保湿材がある。
鎮咳薬 |
商品名 |
薬理作用 |
プレドニゾロン | プレドニン |
ステロイド (weak) |
クロベタゾン | キンダベート |
ステロイド (mild) |
ヒドロコルチゾン | ロコイド | |
デキサメタゾン | メサデルム |
ステロイド (strong) |
ベタメタゾン | リンデロンV | |
ベクロメタゾン | プロパデルム | |
デキサメタゾン | ボアラ | |
ベタメタゾン | アンテベート |
ステロイド (very strong) |
ジフルコルトロン | ネリゾナ | |
ジフルプレドナート | マイザー | |
ジフロラゾン | ダイアコート |
ステロイド (strongest) |
ベタメタゾン | リンデロンVG | |
タクロリムス | プロトピック | 免疫抑制剤 |
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