不整脈の発症と治療薬
不整脈の分類
不整脈にはさまざまな種類がある。心臓の興奮は普通、洞結節から始まる。しかし、洞結節以外から興奮が始まるもの(異所性)があり、これが不整脈となる。
また、興奮が洞結節から始まっているが、興奮頻度が異常であるものも不整脈である。
・現象的分類
不整脈を現象で分類すると、次のようになる。
頻脈性:心拍数が増加している状態 → 洞頻脈、心房細動・粗動、上室性頻脈、心室頻脈
徐脈性:心拍数が減少している状態 → 洞徐脈、洞停止、洞房ブロック、房室ブロック
不整拍:不規則な心拍 → 期外収縮、心房細動、副収縮
細動:心房または心室が高頻度、不規則に興奮する状態。心臓はほとんど機能していない。
粗動:心房または心室が規則性をもって興奮し、ポンプ機能をある程度有する。心臓はある程度機能している。
心臓の活動電位
心筋細胞の活動電位に関わるイオンは時間が経つにつれ、使用されるイオンが異なってくる。下の図のように「Na+→Ca2+、K+」と使われるイオンが変化する。
0相:Naチャネル開口により、Na+が細胞内に流入する。これにより、脱分極が起こる。
1相:-40mVを超えるとNaチャネルの不活性が起こり、Na+の流入停止が起こる。
2相:Caチャネル、Kチャネルの開口により、Ca2+が細胞内に流入し、K+が細胞外へ流出する。
Ca2+の流入とK+の流出により、プラトー(一時的な停滞状態)となる。
後にCaチャネルが閉じ、Ca2+の流入は止まる。
3相:Kチャネルは開口し続けているため、K+が細胞外へ流出することで再分極が起こる。
4相:Kチャネルが閉じ、静止膜電位に再分極する。
「Na+とCa2+の流出」、「K+の流入」により、イオンを最初の状態へ戻す。
次に洞結節、房室結節における心筋細胞での活動電位を示す。洞結節、房室結節はリズムを作る筋であり、これらの心筋細胞では膜電位が低くNaチャネルが機能していない。
洞結節、房室結節での心筋細胞はCa2+、K+の二つのイオンのみで活動電位を担っている。
不整脈の発生
活動電位には不応期があり、「どのような刺激に対しても反応しない絶対不応期」と「強い刺激に対して反応してしまう相対不応期」がある。
一サイクルの活動電位が終わる前に、強い刺激が相対不応期の時に来たなら、そこで活動電位が起こる可能性がある。これが不整脈となる。
抗不整脈薬
不整脈に対する薬にはさまざまな種類があり、症状によって使い分けないといけない。下に抗不整脈薬の分類、作用機序、薬物、臨床応用を示す。
分類 |
作用機序 |
薬物 |
臨床応用 |
|
Ⅰ群 |
Ⅰa |
Naチャネル抑制 Kチャネル抑制 |
キニジン、プロカインアミド、 |
上室性不整脈 |
Ⅰb |
Naチャネル抑制 Kチャネル開放促進 |
リドカイン、メキシレチン、 |
心室性不整脈 | |
Ⅰc |
Naチャネル抑制 |
フレカイニド、ピレジカイニド | 上室性不整脈 | |
Ⅱ群 |
β1受容体遮断 (Kチャネル開放促進) |
プロプラノロール、アテノロール | 上室性不整脈 | |
Ⅲ群 |
Kチャネル抑制 |
アミオダロン、ソタロール | 上室性不整脈 | |
Ⅳ群 |
Caチャネル抑制 |
ベラパミル | 上室性不整脈 |
・Ⅰa群
Ⅰa群はNaチャネル抑制、Kチャネル抑制をする。このとき、活性化状態のNaチャネルを抑制する。これによって活動電位持続時間が延長され、リエントリーなどを抑える。
・Ⅰb群
Ⅰb群はNaチャネル抑制、Kチャネル開口促進をする。Naチャネルを抑制するとき、不活性状態のNaチャネルに結合して抑制する。これらの作用によって活動電位の持続時間が短縮される。
・Ⅰc群
Ⅰc群は活性化状態のNaチャネルを抑制する。これによって活動電位の立ち上がり速度を遅くするが、活動電位の持続時間に変化はない。
・Ⅱ群
Ⅱ群はβ1受容体遮断によってKチャネルを開口促進する。これによって前電位の過分極が起こり、活動電位の一サイクルが遅くなる。
・Ⅲ群
Ⅲ群はKチャネルを抑制する。これによって持続時間を伸ばし、不応期を延長する。
・Ⅳ群
Ⅳ群はCaチャネルを抑制する。これによって活動電位を抑制する。
・その他の抗不整脈薬
抗不整脈薬は他にも存在し、ジギタリス薬やβ1受容体刺激薬、アトロピンなどがある。ジギタリスの副作用として不整脈があるが、決して不整脈に使用しないというわけではない。
薬物 |
作用 |
適応 |
ジギタリス薬 |
房室伝導の抑制 |
心房細動 |
β1受容体刺激薬 (イソプロテレノール) |
β1受容体刺激 |
徐脈 |
アトロピン |
抗コリン作用 |
徐脈 |
β1は心臓に存在しており、これを刺激することで心拍数が上昇する。
なお、アトロピンはムスカリン受容体を遮断し、迷走神経(副交感神経)を抑制する。これにより洞結節・房室伝動速度を上げる。
アセチルコリンの働きが亢進することによって心拍数が減少するのであり、それと反対の作用をするのが抗コリン薬である。こう考えれば、「除脈に対して心拍数を上昇させるために抗コリン薬(アトロピン)
を使う」ということが容易に想像することができる。
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