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役に立つ薬の情報~専門薬学

投与設計(単回投与、代謝・排泄機能低下患者)

 

 投与設計について
投与設計とは、薬物や患者情報から「どのような投与間隔で投与するか」「どの薬物量で投与するか」などを設計するものである。

 

この投与設計には特別なソフトは何もいらず、エクセル(Excel)と知識さえあれば誰でもできる。それでは、実際に投与設計を行っていきたいと思う。

 

・必要な知識
血中濃度Cは初期濃度C0と消失速度kel、時間tを使って次のように表わされる。

 

 C = C0・e-kel・t

 

主にこの式を使って、薬物がどのように推移していくかを計算する。

 

 例題
・例題1(単回投与)
薬物Aを40(mg/kg)で静脈内に投与したいと思う。薬物Aの分布容積Vは(2.0L/kg)であり、半減期は90(min)である。なお、静脈内投与なのでバイオアベイラビリティF=1である。

 

これらの値から計算すると、初期濃度C0=20(mg/L)、消失速度定数k=0.0077(/min)となる。

 

初期濃度C0と消失速度定数k、時間を使ってグラフを描くと下のようになる。

 

 単回薬物投与

 

もし、薬物Aを80(mg/kg)で静脈内投与するならば、下のグラフのようになる。

 

 単回薬物投与

 

このようにして、薬物量を変化させた時どのように血中濃度が変化するかを予測することができる。

 

・例題2(代謝・排泄機能低下患者)
腎臓や肝臓の機能が低下している場合、薬物の排泄が遅れるため半減期が長くなる。そのため、このような患者では正常な患者と同じように薬を投与してはいけない。

 

薬物Aが主に腎臓で排泄される場合、腎機能低下患者では薬物Aがどのような血中濃度推移をするかをシュミレーションしてみたいと思う。なお、薬物Aは正常患者で「半減期Th=1.5(hr)」、腎臓がまったく機能していない患者で「半減期Th=10(hr)」とする。

 

 代謝・排泄機能低下患者

 

見ての通り、腎機能が低下するに従って血中濃度が下がりにくくなるのは明らかである。

 

それでは、これらの薬物を6時間おきに連続投与していったらどうなるだろうか。下に、「半減期Th=1.5(hr)」「半減期Th=10(hr)」のときの血中濃度推移を示す。

 

 代謝・排泄機能低下患者

 

Th=1.0とTh=9.6の患者を比べてみると定常状態に達したときの血中濃度が約3倍も違っていることがわかる。そのため、同じように投与していたのではまずい。具体的には、「投与間隔を空ける」「投与量を減らす」などの工夫をする必要がある。

 

「どのような投与設計をするのが正しいか」には答えがない。そのため、このような腎機能低下患者に対して、あなたが満足するような投与設計をすれば良い。

 

※計算式
投与量 Dose
= 初期濃度 C0 ×分布容積 V / バイオアベイラビリティ F
= 維持投与量 DM×(全身クリアランス CLtot×体重)×投与間隔 τ/バイオアベイラビリティ F

初期濃度 C0 = 投与量 Dose × バイオアベイラビリティ F / 分布容積 V

 

半減期 Th = ln2 / 消失速度定数 k

 

消失速度定数 k = ln2 / 半減期 Th

 

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