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役に立つ薬の情報~専門薬学

薬物の体内動態:分布容積・バイオアベイラビリティ

 

 記号の認識

 

Cp:血漿中の薬物濃度
Cp0:投与直後の血漿中の薬物濃度
D,X0:投与量
Xel:消失量
X:体内薬物量
Vd:分布容積
kel:薬物消失速度定数
ke:薬物排泄速度定数
km:薬物代謝速度定数

 

 体内動態の理解
医薬品の体内動態を知るには次の四つを理解していないといけない。

 

・分布容積(Vd)
・バイオアベイラビリティ(F)
・全身クリアランス(CLtot)
・半減期(t1/2

 

一見難しそうに見えるが、これらはとても簡単である。説明するときに数式も混ぜるが、きちんと理解すれば全く難しくない。

 

 分布容積(Vd)
薬物を注射したとき、薬物は血液・体液などあらゆる組織に分布する。このとき薬物が血液・体液などに対して、どれだけの体積に分散したかを表す見かけの容積が分布容積(Vd)である。

 

薬物によっては血中だけに留まるもの、細胞外液まで移行するもの、全身を循環するものなどさまざまである。そして、これらの分布容積は血中のタンパク結合率によって異なってくる。タンパク結合率が高いほど分布容積は低くなる傾向がある。

 

 分布容積

 

Xdの薬物量を注射したとき、薬物は体内に移行する。その後、薬物は代謝または排泄を受ける。このとき、体内薬物量(X)と代謝量(Xm)と排泄量(Xe)は次のようになる。

 

 Xd = X + Xm + Xe

 

 薬物の投与量と消費量の関係

 

薬物は勝手に消えたりはしないため、体内に残っている薬物(X)と代謝・排泄された薬物(XmとXe)を足すと、投与量と等しくなるというのは当たり前である。(注射・点滴の場合)

 

ここで、体内にどれだけの薬物が未変化体として残っているかを知りたいとする。まさか生体をすり潰して調べるわけにはいかない。そのため、ここで分布容積が必要になるのである。

 

また、知らなければならないもう一つのパラメータとして血中濃度(Cp)がある。これは血液を採取して調べればよい。つまり、「血中濃度」と「分布容積」が分かれば、「体内に残っている薬物量(X)」を知ることができるのである。

 

体内薬物量の単位は「mg」である。そして、血中濃度の単位は濃度なので「mg/L」である。これらの単位から、血中濃度(mg/L)と分布容積(L)の積が体内薬物量(mg)となることがわかる。

 

 X(mg) = Vd(L) × Cp(mg/L)

 

 分布容積の意味

 

つまり、分布容積(Vd)は体内薬物量(X)と血中濃度(Cp)を関係づけるパラメータであり、単なる比例定数というだけである。

 

「分布容積(Vd ) = 体内薬物量(X)/血中濃度(Cp)」であるため、体内薬物量(X)を初期投与量(Xd)と考えると、血中濃度(Cp)は投与直後の血漿中の薬物濃度(Cp(0))と考えることができる。

 

 分布容積(Vd ) = X/Cp = Xd/Cp(0)

 

何が言いたいかというと、縦軸にCp、横軸に時間をとって片対数グラフにプロットすると直線のグラフを得ることができ、このグラフからCp(0)を推定することが可能なのである。

 

 Cp(0)の推定

 

 バイオアベイラビリティ(F)
薬物を注射等によって投与した場合、全ての薬物が体を巡ることになる。しかし、経口摂取した場合は全ての薬物が体内に移行するとは限らない。胃酸によって分解されるかもしれないし、腸からの吸収が悪いかもしれない。

 

このとき、薬物投与量の中でどれだけの量が未変化体として体内を巡るかが重要となってくる。これを表すのがバイオアベイラビリティ(F)であり、「投与量のうち、どれだけ未変化体として体内に入ったか」を表す。

 

もし「F = 0.7 = 70%」であるなら、100mgのうち70mgしか体内に入らないことになる。バイオアベイラビリティの多くは次の三つの要素によって決定する。

 

・Fa:消化管吸収率
・Fq:小腸での初回通過効果
・Eh:肝臓での初回通過効果 (肝抽出率)

 

 バイオアベイラビリティ

 

このように「消化管からどれくらい吸収されるか」「小腸でどれくらい代謝されるか」「肝臓でどれくらい代謝されるか」によってバイオアベイラビリティが決まる。

 

そして、バイオアベイラビリティ(絶対利用率)は次の式で表わされる。

 

 F = Fa × (1 - Fq) × (1 - Eh)

 

もし、消化管において90%吸収され、小腸において20%、肝臓において50%代謝されるなら、そのバイオアベイラビリティは「F = 0.9 × 0.8 × 0.5 = 0.36」となる。

 

また、次の式でもバイオアベイラビリティ(絶対利用率)を求めることができる。

 

 

 

AUCとは「利用された総薬物量」のことであり、Dは薬物投与量である。「p.o.」は経口投与、「i.v.」は静注のことである。

 

静注の場合、当然であるが投与した薬物は全て血液中を巡る。しかし、経口投与の場合は消化管吸収や初回通過効果をやり過ごしたものだけが血液中を巡る。

 

そのため、経口投与でのAUC(AUC p.o.)を静注でのAUC(AUC i.v.)で割れば、バイオアベイラビリティを導き出すことができる。

 

「D i.v../D p.o.」の積をとるのは、ただ単に「経口と静注で投与量が違う場合は、薬物投与量値を補正しないといけない」というだけである。例えば、「静脈注射100mg」と「経口投与200mg」を比べるのでは、純粋にAUCのみを比べているとは言えないのである。

 

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