薬剤学の基礎
ADME
薬物を投与したとき、その薬物の薬効Eは「E=A,C,S」で表わされる。Aは薬物そのものがもつ薬理活性であり、Cは作用部位における薬物濃度である。Sは生体側の感受性である。
薬剤学はCの薬物濃度をどのようにコントロールするかを調べる学問である。
薬物の体内動態であるが、体内動態とは「薬物が体の中でどのような動きをするか」のことである。これには「吸収、分布、代謝、排泄」が重要になってくる。
吸収 absorption:薬物投与から体循環への移動
分布 distribution:血中から作用部位への移動
代謝 metabolism:薬物の代謝過程、主に肝臓で行われる
排泄 excretion:薬物を体外へ排出する過程、主に腎臓で行われる
この四つの過程のそれぞれ頭文字を取って「ADME(アドメ)」という言葉がよく使われる。
薬物の通過
薬物が吸収されるときや各組織に分布するとき、「細胞中を通り抜ける経路(経細胞路:Transcellular route)」または「細胞の間を抜ける経路(細胞間隙短経路:Paracellular route)」のどちらかを通らないといけない。
経細胞路では脂質二重膜を通り抜けることとなる。そのため、薬物の親水性が高ければ脂質二重膜を通りにくくなり、疎水性であればあるほど通りやすくなる。これがリポイドセオリー (lipoid theory) である。
pHによっては薬物分子の形が変わることがある。つまり、pH変化に伴って疎水性が変化することがある。これによって、吸収率が変わる。これがpH-分配仮説である。
また、細胞間隙短経路では細胞間隙の密度(タイトジャンクション:tight junction)が重要となる。密に細胞が詰まっているなら、薬物は細胞間隙をなかなか通り抜けることが出来ない。
薬物の輸送
・特殊輸送系
薬物が吸収されるとき、「輸送担体を介する吸収」と「輸送担体を介さない吸収」がある。前者には能動輸送と促進拡散がある。
能動輸送ではエネルギーが必要で、濃度勾配に逆らって輸送される。それに対し、促進拡散はエネルギーが必要なく、濃度勾配に従って輸送している。
両方とも輸送担体を介しているので、吸収には飽和現象が見られる。また、構造類似化合物の共存で吸収が阻害される。
なお、能動輸送では輸送にエネルギーを必要とするのでエネルギー阻害によって、輸送が阻害される。しかし、促進拡散はエネルギーを必要としてないので、エネルギー阻害によって輸送が阻害されない。
・受動拡散
「輸送担体を介さない吸収」は受動拡散であり、飽和状態がなくエネルギーも必要としない。
受動拡散では薬物濃度が高くなると、それに比例して吸収速度も速くなる。
受動拡散 |
担体輸送 |
||
促進拡散 |
能動輸送 |
||
担体 |
なし |
あり |
あり |
エネルギーの必要性 |
なし |
なし |
あり |
濃度勾配に 逆らう輸送 |
不可 |
不可 |
可能 |
膜透過の飽和 |
なし |
なし |
あり |
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