米国の薬局事情:保険調剤と薬の受け渡し
<ライター:徳永類子(薬剤師)>
日本の薬局は変化しなければいけません。例えば超高齢化社会を迎えるにあたり、膨大にふくらんでいる医療費を抑えるため、国が薬剤費の削減を目指しているのは周知の事実です。
他にもクリニックの門前でただ店舗をかまえ、ある程度決まった内容の処方せんに従って薬を渡すだけではないかなどの、薬局バッシングも年々強くなってきています。
「かかりつけ薬局の機能の強化」と謳われて年数が経ちますが、実際のところ現場で仕事に従事している薬剤師の業務は変わってきているでしょうか。
厚生労働省はさらなる薬局の機能を重要視しています。それに伴い、薬剤師会の各支部では、節薬バッグ運動による残薬整理などを行い、実際に薬剤費削減の効果をデータとして実証しているところもあります。今後も薬剤師のあり方が問われていくでしょう。
アメリカの薬局事情
さて、海外の薬局事情はどうでしょうか。今回、米国・カリフォルニア州の薬局を私が視察しましたので紹介します。まず大きく違うところは、電子メールによって患者さんが登録した薬局に、医療機関から処方せんが直接送られてくることです。
日本では、A病院の門前のa薬局、Bクリニックの門前のb薬局、というように門前の薬局に行くことが多いです。「かかりつけ薬局を持ちましょう」と啓発されてはいますが、患者さんの立場ですと、門前でなければ薬の在庫がないことも多く、不便だということもあるでしょう。
一方でアメリカではA病院、Bクリニック、Cクリニック、どこに行っても、登録しているX薬局に行きます。そのためX薬局では体質、重複投与、体調変化などの管理がしやすくなっています。これは、疑義照会についても同様です。
まさしく薬剤師本来の仕事を遂行している印象を受けます。
【写真1】
【写真2】
他にも薬剤師の職能としてもう一つ、日本では考えられないようなことがあります。米国では調剤を薬剤師ではなくテクニシャンが行うことはよく知られていますが、薬を渡すのも薬剤師でなくても良いのです。
薬剤師の職務は、処方監査、調剤監査であり、そこに責任を持つこととされています。新患の場合や、処方変更、追加などがある場合は必ず対面で服薬指導を行いますが、処方変更がなければ非薬剤師でも薬を渡すことができます。
【写真2】の奥にある「PICK UP」のところが非薬剤師でも薬を渡せる場所です。薬剤師の説明が必要な場合は手前の「PATIENT CONSULTATION」の窓口で行います。
また、下の写真は薬局内に貼られている掲示物です。薬局に関するカリフォルニアの州法が記されています。
【写真3】
上部に「新しい処方のときは、薬剤師が直接お話しさせて頂きます」と大きな文字で書かれています。その下は日本と同じく、用法・用量や飲み合わせ、起こりうる副作用などについて話しますという説明です。
下部は「下記の場合以外は、薬を提供します」とあります。つまり下記に当てはまるときはお薬を渡しません。
・あなたの保険でカバーできない場合
・自己負担金を支払えない場合
・薬が違法となるか、健康を害する可能性があると薬剤師が判断する場合
日本は国民皆保険なので、保険適用の処方箋が一般的です。一方、米国では保険はおおむね自己選択です。標準的な治療や処方せんも各個人によってカバーする範囲が異なります。そのため支払いに関してはとてもシビアです。
面白いのは、無料で通訳サービスが受けられることです。米国は多民族国家ですし、特にカリフォルニア州は移民が多いためでしょう。薬局に複数通訳者がいるわけではありませんが、州が定める通訳センターに繋ぐか、翻訳システムが利用できるようになっています。このように、日本とアメリカでは薬局の方式に大きな違いがあります。
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