水:水に混入する薬剤
私達の体はほとんどが水分で構成されています。水とは私達にとって最も重要な要素の一つです。
この水が汚染されていたら大変なことになります。そのために浄水場があり、水を浄化することによって川の水は飲料水となります。しかし、浄水場は必ずしも万能ではありません。浄水場で完全に処理できない物質が含まれていたら、それは飲料水として私達の体に取り込まれてしまいます。
そして、まさにその飲料水には化学物質が含まれている可能性があります。その飲料水を浄化する前の川の水には、さらに高い濃度の化学物質が含まれています。
また、飲料水だけが問題ではありません。海に有害物質が流れると、それを魚が取り込みます。その魚を食べることで間接的に有害物質を体の中に取り込むことになります。
このメカニズムで四大公害と呼ばれ、問題となったのが水俣病です。水俣病では水銀が問題となりました。
飲料水に薬が混入
アメリカで1999年に次のような研究を行った人がいます。
その人は飲料水にペニシリンなどの抗生物質が含まれているかどうか検査しました。その結果、驚くことに微量ではありますが抗生物質が検出されました。
今度は川の水に含まれる抗生物質の濃度を調べました。すると川の抗生物質の濃度は飲料水の濃度よりもはるかに高かったのです。
この研究のすごいことは世界で初めてこのような検査を行ったことであり、その検査を行ったのが十七歳の少女だったことです。
これは病院や農場、家庭から抗生物質がわずかであるが流れ出ていることを意味します。また浄水場では下水に含まれる抗生物質を完全には取り除けていないことも意味しています。
「農場から抗生物質?」と思う人がいるかもしれません。実は畜産では多くの抗生物質を使用しています。
当然ながら、これは抗生物質だけの問題ではありません。農薬も川の水に混入していることが考えられます。農薬を使用することで川の水に農薬が流れ出し、その水が飲料水やシャワーの水になることが十分考えられます。
毒の湖
実際には川の中に含まれる抗生物質や農薬は微量かもしれません。しかし、これを大量に撒けば毒の水へと変わってしまいます。
昔から人々はマラリアに悩まされてきました。しかしながら、そのマラリアを見事抑制することに成功しました。それは殺虫剤を散布した結果でした。
薬剤の散布により確かにマラリアの数は減少しました。そのかわりに、散布された水は「毒の湖」へと変わってしまいました。
しばらくすると、この湖に含まれる有害な薬剤は検出されなくなりました。この薬剤が分解されにくいとすると、いったいどこへ消えたのでしょうか。実はこの薬剤はその湖に住む微生物や魚の体内に移動したのです。
これにより多くの魚が死ぬことになり、それを食べる動物やヒトも影響を受けました。これはマラリア退治だけに限らず、害虫を殺すために大量の薬剤を散布すればこのような事態になってしまいます。
また薬剤を散布された周辺にいる魚だけでなく、そこよりも上流にいる魚の体内からも化学物質が検出されることがあります。川の間に滝があり、水が逆流することがなくても関係ありません。これは薬剤が地下水を通って運ばれたと考えることができます。
なお、薬剤に関していろいろと述べてきましたが、現在の農薬はかなり進歩しています。少なくとも、日本では厳しい安全基準が設けられています。
そのように考えると、「沈黙の春」の時代とは違うため、そこまで心配しなくてもよいのかもしれません。
重要なのは、「農薬=悪」ではないということです。
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