漢方薬の副作用問題と瞑眩(めんげん)
多くの人は「漢方薬」と聞けば、「副作用がない」、「安全である」と勝手に思い込んでいるのではないでしょうか。
もちろんそんなことはなく、漢方薬にも副作用は存在します。しかも、時には生命を脅かすくらい重篤な副作用をもたらすことだってあります。
多くの薬理学者は「全ての薬には副作用がある」と考えています。副作用のない薬は存在しないと考えた方がいいのかもしれません。
漢方薬の安全神話の崩壊
1996年の3月にある報道がありました。その報道の内容は「漢方薬の副作用によって10人が死亡」という内容でした。
それまで漢方薬といえば「副作用が少ないものである」と考えられており、この報道によって漢方薬の安全神話は崩壊しました。また、この報道は患者・医療関係者にもショックを与えました。
この事件で問題となった漢方薬は「小柴胡湯」という漢方薬です。1992年に「小柴胡湯が慢性肝炎での肝機能障害を改善する」と証明されてから、小柴胡湯は慢性肝炎・肝機能障害に広く用いられるようになりました。
それからというもの小柴胡湯の使用者は100万人にも及びました。当然これだけの使用者がいれば副作用もでるはずです。
小柴胡湯によって起こる重篤な副作用は「間質性肺炎」です。この疾患によって死者が出てしまったのです。小柴胡湯を服用して間質性肺炎を発症する頻度は10万人に4人の割合です。
なお、肝炎に使用されるインターフェロンが間質性肺炎を起こすのが10万人に182人と言われています。これに比べると小柴胡湯による副作用の割合は低いです。
瞑眩(めんげん)という考え
ただし、漢方薬を服用することで不快な症状が現れたときにすぐに副作用と判断するのは危険です。なぜなら、漢方には「瞑眩」という考えがあるからです。
漢方薬を飲むと一過性の鼻血や下痢、発疹などが起こることがあります。これが瞑眩です。
しかし、これらの症状は治療機転の過程で起こるものであり、瞑眩が治まることには症状も良くなっています。
・瞑眩の例(麻黄湯の場合)
次のような症状が起こったとします。
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かぜにかかってしまい、「麻黄湯」という漢方薬を服用した。すると鼻血が出てしまったが、その後かぜは完全に治った。
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麻黄湯は初期のかぜに使用され、葛根湯よりも作用が強い漢方薬です。そして、治癒過程で鼻血がでることがあります。
漢方には「体にある毒素を汗や排泄などによって外に出す」という考えがあります。そして、毒素を外に出そうとするためにさまざまな不快な症状が起こってしまうのです。
つまり、瞑眩が起こることは良いことです。なぜなら、それによって病気が改善しているということですから。
ただし、瞑眩か副作用かを見極めるのはかなり難しいです。
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