バイオ医薬品とは:抗体医薬品など
多くの場合、薬の本体はとても小さな低分子です。高校化学では「全てを構成する物質の中で最も小さい要素が原子である」と習います。
塵や埃は原子で構成されており、紙やペンなども原子で出来ています。私たちの体も突き詰めてみれば、原子の寄せ集めであると言えます。そのため、薬も原子がいくつか組み合わさって構成されています。
その中でも、ほとんどの薬は数十個程度の原子が組み合わさっただけのとても小さい物質のために「低分子」と表現されます。薬の場合は「低分子医薬品」と呼ばれます。
そして、低分子があるという事は、その反対に「高分子」もあるという事を意味します。
バイオ医薬品は高分子である
前述の通り、多くの薬は数十個程度の原子から構成されています。これに対して何千、何万もの原子が組み合わさることによって作用する薬を高分子医薬品と呼びます。
これら高分子医薬品の中でも、バイオ医薬品と呼ばれる種類の薬があります。バイオ医薬品とは、遺伝子組み換え技術を利用して作成された医薬品を指します。
糖尿病治療薬として利用されるインスリンもバイオ医薬品の一種です。iPS細胞を応用した再生医療にも注目が集まっていますが、これら再生医療もバイオ技術を利用しています。
ただ、大きくて複雑な物質を作り出すことはとても難しいです。
おもちゃの小さい家を作るのであれば比較的簡単にできます。しかし、本物の家を作るのであれば地盤調査から設計図の作成、材料調達、そして大人数での施工とかなり大がかりになります。これと同じように、バイオ医薬品を製造するときは低分子医薬品の時よりも複雑な工程をたどります。
バイオ医薬品を製造するとき、細胞などの生物を使います。生物であるため、少しの変化が加わっただけで最終的に作られる物質が違ってしまうこともあります。
このように複雑であるため、バイオ医薬品では低分子医薬品に比べて何倍もの製造工程での試験が課せられています。
別にこれらを全て理解する必要はありませんが、何となくでも良いので「バイオ医薬品を作るのは難しい」という事を認識できれば問題ありません。
バイオ医薬品が活躍する分野
これらバイオ医薬品は抗がん剤や自己免疫疾患の治療薬として主に利用されています。
自己免疫疾患とは、「体の中にある免疫が過剰に反応してしまうことで、自分自身を攻撃してしまう病気」の事です。
自己免疫疾患としては、胃や腸など食物の消化に関わる臓器全体に炎症が起こってしまう「クローン病」や関節に炎症が起こって腫れ上がり、放っておくと関節が変形してしまう「関節リウマチ」などがあります。
1つのバイオ医薬品の登場によってクローン病や関節リウマチの治療法が大きく変わってしまったほど、バイオ医薬品は効果が高いです。ただし、大きな問題点もあります。その問題点とは、「値段が高い」という事です。
いくら生活習慣病に関わる薬の値段が高いとは言っても、バイオ医薬品に比べると圧倒的に安いです。バイオ医薬品の場合、一回の治療だけで薬の値段が20万以上かかることが平気であります。3割の自己負担や高額医療費制度などでかなり負担が軽減されますが、いずれにしても相当な金額になります。
これら金銭的な問題もあり、ジェネリック医薬品と同じようにバイオシミラー(バイオ後続品)が注目されています。先発医薬品の特許が切れた後に発売されるバイオ医薬品であり、ジェネリック医薬品と同じように値段が安く設定されています。
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