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先発医薬品よりも値段が高いジェネリック医薬品

 

世の中には先発医薬品が存在しない場合もあります。昔から使われていた薬やメチコバールのように特殊な事情のある薬です。

 

同じように特殊な事情を持ったジェネリック医薬品として、先発医薬品よりも値段の高い薬があります。

 

 先発医薬品よりも値段が高いジェネリック医薬品
喘息治療薬としてテオロングというジェネリック医薬品があります。このテオロングの先発医薬品としてテオドールと呼ばれる薬があり、テオドールとテオロングは同じ成分が含まれています。

 

テオロング自体はもともと先発医薬品であるテオドールと同じ時期に開発された薬ですが、実際の薬価収載はテオドールよりも一年程度遅かった医薬品です。テオドールより遅れて発売された薬であるため、テオロングは純粋なるジェネリック医薬品となります。

 

二年に一回、日本では薬の値段が見直されて値下げが行われます。この過程を何回も経るにつれて、「先発医薬品であるテオドールよりも、ジェネリック医薬品であるテオロングの方が価格が高い」という逆転現象が起こるようになりました。

 

テオロング自体は昔から使われているジェネリック医薬品ですが、ほぼ先発医薬品のように扱われています。ただその区分はジェネリック医薬品であるため、「先発医薬品よりもジェネリック医薬品の方が値段が高い」という奇妙な事が起こるようになったのです。

 

先発医薬品よりも値段が高いため、テオロングを使用する際は制度上もジェネリック医薬品としては扱われないようになっています。

 

ジェネリック医薬品を使用すると、その割合に応じて薬局に報酬が発生するなどのインセンティブが働きます。しかし、先発医薬品よりも値段の高いジェネリック医薬品に変えては意味が無いため、この場合は例外としてインセンティブを除外するように決められています。

 

 一般名処方の悪
今回、例として挙げた喘息治療薬であるテオドールはテオフィリン製剤と呼ばれる区分になります。

 

少し話がややこしくなりますが、テオフィリン製剤には先の例に挙げたテオドールの他にも先発医薬品が存在します。テオドールは一日二回投与する薬ですが、テオフィリン製剤として一日一回投与するタイプの先発医薬品があります。

 

この先発医薬品の名前をユニコンまたはユニフィルLAと言います。同じ先発医薬品であっても、「テオドール」や「ユニコン/ユニフィルLA」と使い方の異なる二つの薬があると思ってください。

 

 ・テオドール:一日二回投与(一部例外あり)
 ・ユニコン or ユニフィルLA:一日一回投与

 

テオドールとユニコン/ユニフィルLAでは使い方が異なるだけでなく、体内での溶出の仕方なども異なります。つまり、成分は全く同じであってもその効果の出方が違ってきます。

 

そして重要なのは、テオドールを指標としているジェネリック医薬品があれば、ユニコン/ユニフィルLAを基準としているジェネリック医薬品もあるという事実です。

 

テオドールを基準とするジェネリック医薬品は一日二回投与を想定して製剤化を行っているため、一日一回投与のユニコン/ユニフィルLAの代わりとして使用することは推奨されていません。これは、ジェネリックメーカーに聞いても同じような回答になります。

 

当然ながら、ユニコン/ユニフィルLAの代わりとしても、テオドールを基準としたジェネリック医薬品を使うことは推奨されません。

 

現在では医薬品の成分名を記載した処方せんとして「一般名処方」が推奨されています。これまで説明してきた通り、テオドールやユニコン/ユニフィルLAの成分名はテオフィリンです。これを踏まえた上で、これらテオフィリン製剤は例えば以下のような一般名が行われます。

 

 ・テオドールの一般名
 【般】テオフィリン徐放錠200mg(12~24時間持続)

 

 ・ユニコン/ユニフィルLAの一般名
 【般】テオフィリン徐放錠200mg(24時間持続)

 

2つを区別するポイントは(12~24時間持続)または(24時間持続)の違いです。

 

このように、かなり紛らわしいです処方せんです。このわずかな違いで判断しなければいけないため、調剤過誤の発生する確率が格段に高まります。

 

人間である以上、間違いをゼロにすることは出来ません。薬剤師はこれらの間違いを出来るだけなくすようには努力しますが、それでも間違いは起こります。一般名処方はジェネリック医薬品推進に必要な政策ですが、このような混乱を招くこともあります。

 

ちなみに、分かりにくい一般名処方は他にもあります。例えば、血圧を下げる薬としてアダラートがあります。このアダラートにはアダラートLとアダラートCRが存在しますが、以下のように見極めます。

 

 ・アダラートLの一般名
 【般】ニフェジピン徐放錠10mg(12時間持続)

 

 ・アダラートCRの一般名
 【般】ニフェジピン徐放錠10mg(24時間持続)

 

他にも、腫れや痛みを抑えるテープ剤があります。湿布を思い浮かべれば分かりやすいですが、これら湿布には温感タイプや冷感タイプがあります。

 

これを理解した上で、次のような一般名処方があります。

 

 【般】ケトプロフェンテープ20mg(7×10cm 非温感)

 

「非温感」って何? と思ってしまいますが、多分冷感であることを表したいのだと思います。ちなみに将来は分かりませんが、現時点で温感タイプのケトプロフェンテープは存在しません。

 

このように一部を紹介しましたが、実際にはもっと多くの分かりにくい一般名処方が存在します。

 

一般名処方に関するデメリットを言う人が少ないのでこのように述べましたが、当然ながら一般名処方には大きなメリットもあります。それは、ジェネリック医薬品へ変更しやすくすることにより、薬代を安くできることです。これに関しては、私でなくてもいろんな人が説明してくれています。

 

医師から薬を処方してもらうにしても、患者さんから直接医師に「ジェネリック医薬品に変えて欲しい」と言うのは勇気が必要です。薬局で薬剤師がジェネリック医薬品に変える場合であっても、一般名処方でない場合に比べるとどうしても薬を変更する時に心のブレーキがかかってしまいます。

 

これが一般名処方であると、薬を処方した医師が「同じ成分であればどの薬を使用しても良い」と意思表示していると受け取ることが出来ます。そのため、薬剤師としてもジェネリック医薬品へ変更しやすくなります。

 

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