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先発医薬品が存在しない薬

 

ちょっと不思議かもしれませんが、世の中には先発医薬品が存在しない薬もあります。普通は先発医薬品があり、その後にジェネリック医薬品が発売されます。しかし、全ての薬がそうでもありません。

 

今回は先発医薬品が存在しない薬を紹介していきます。

 

 この薬は先発医薬品? ジェネリック医薬品?
先発医薬品のない薬の例としては、解熱鎮痛剤として多用されるアセトアミノフェンがあります。アセトアミノフェンは成分の名前ですが、このアセトアミノフェン製剤は全てジェネリック医薬品の扱いになります。

 

アセトアミノフェン製剤の商品名として、カロナールが最も有名です。そのため、カロナールを先発医薬品と勘違いしてしまう人もいますが、実はカロナール自体がジェネリック医薬品なのです。

 

このアセトアミノフェンは1800年代から医薬品として使用されている古い薬です。そして、現在でもその作用機序は不明です。脳に作用することによって熱を下げるなどの作用をするとは言われていますが、詳しいメカニズムは解明されていません。

 

アセトアミノフェンのように「昔から使われている薬」には先発医薬品やジェネリック医薬品という概念がない事があるのかもしれません。

 

同じように昔から使われている薬にアスピリンと呼ばれる薬があります。この薬を低用量で使用することでいわゆる「血液をサラサラにする作用」を得ることができますが、この低用量アスピリンも全ての薬がジェネリック医薬品扱いです。

 

低用量アスピリンで有名な商品名としてバイアスピリンがありますが、これはジェネリック医薬品です。

 

便通を改善する薬も同じです。昔から使われている薬に酸化マグネシウムがあり、商品名としてはマグミットマグラックスが有名です。しかし、実際は全てジェネリック医薬品です。

 

なお、中には昔から使われているという理由ではなく、特殊な理由によって先発医薬品が存在しない場合もあります。この例として、メチコバールというビタミンB12系統の薬があります。手足のしびれなどを改善する薬です。

 

 メチコバールが先発医薬品でない理由
先に挙げた解熱鎮痛剤カロナールや血液をサラサラにするバイアスピリン、便通を改善するマグミット、マグラックスのように先発医薬品と勘違いしてしまうようなジェネリック医薬品があります。メチコバールもこの中の一つですが、このメチコバールが先発医薬品でないのには少し変わった理由があります。

 

メチコバールは商品名であり、この成分名はメコバラミンと言います。メチコバールは先発医薬品でないため、メコバラミン製剤には先発医薬品が存在しないように思えます。しかし、メチコバールは確実にメコバラミン製剤の先発医薬品なのです。

 

なんだか話がややこしくなってきましたが、要は「メチコバールはある理由によって先発医薬品になりそびれた」と考えてください。

 

メチコバールが医薬品として発売されるようになったのは1981年ですが、当時の時代背景として水俣病が問題となっていました。

 

水俣病の原因として「水銀」が有名ですが、この水銀の中でもメチル水銀が主な原因とされています。ただの無機水銀よりも、メチル水銀の方が強い毒性を示すようになります。

 

そして、「メチコバールは水銀などの重金属と接触することによってメチル水銀を生み出すのでは」という懸念がありました。そこで、水銀とメチコバールが一緒に存在してもメチル水銀が発生しないことを証明する必要が出てきました。メチコバールの場合、この安全性を示すために1年以上かかったのです。

 

私たちの体を構成する要素の中で、水の次に多い成分がタンパク質になります。皮膚や髪の毛はタンパク質で出来ており、臓器もタンパク質です。つまり、私たちの体と同じような条件で「メチコバールはメチル水銀を生み出さない」という試験をする必要があります。

 

これらの条件を踏まえた上で、タンパク質が存在する中であってもメチコバールが水銀と反応してメチル水銀を生成しないことを証明でき、ようやくメチコバールを販売することが出来るようになりました。

 

このような事情があったためにメチコバールの発売が遅れました。その結果、メチコバールは先発医薬品という位置づけではありますが、その他のジェネリック医薬品と同じタイミングで発売されたのです。

 

他のジェネリック医薬品と同時期の発売のため、結果としてメチコバールもジェネリック医薬品としての扱いを受けるようになりました。

 

なお、確かにメチコバールはジェネリック医薬品として扱われてはいますが、その他のメコバラミン製剤よりも明らかに値段が高いです。ジェネリック医薬品とは言っても、メチコバールはその値段から言っても限りなく先発医薬品に近いジェネリック医薬品です。

 

ちなみに、同じジェネリック医薬品の中でも値段が異なる事は頻繁にあります。ジェネリック医薬品と言っても、全て値段が均一なわけではありません。「どのジェネリックメーカーの薬が安いか」については調べないと分からないため、これはかかりつけの薬剤師に聞いてください。

 

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