「沈黙の春」からの警告
1970年代以前では、環境のことはあまり重要に考えられていませんでした。
今でこそ殺虫剤であるDDTは危険という認識がされています。しかしDDTは安価で少量で虫を殺すことができ、無害と考えられていました。そのためDDTは大量に使用されました。
実際にはDDTは人体に蓄積し害をもたらします。これら農薬(DDT)を畑に撒き、そこから収穫される飼料を鶏や牛に与えるとします。すると鶏の卵や牛のミルクからDDTが検出されます。このように食物連鎖によって農薬は体に蓄積されていきます。
これらの毒は母親の体から胎児へと及ぶこともあります。普通、胎盤は有害な化学物質を通さないようにしています。しかし農薬には胎盤を通過できるものがあります。すると胎児は有害な化学物質にさらされることになります。
「沈黙の春」の世界 ~明日へのための寓話~
環境問題に対して最初に警告した本として「沈黙の春」があります。「沈黙の春」の冒頭は次のような話から始まります。
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美しい自然が広がっている町がある。春になると小鳥たちの鳴き声が聞こえ、野原には花が一面に咲いている。
しかし、あるとき異変が起こり始めた。それは1950年頃にアメリカが害虫を駆除するために大量の殺虫剤を農場に散布し始めた時期と時を同じくする。農場からは害虫が消えた。それと同時に、他にも多くのものがその町から消えたのである。
殺虫剤を散布して年月がたち、しだいに牛や鶏が原因不明の病気にかかり死んでいった。外を歩けば、いつもは咲き乱れていた道路沿いの草や花は枯れていた。途中で小鳥を発見したが体を震わせ死にかけていた。美しい花でいっぱいだった野原も閑散としている。
被害は人間までにも及んだ。数日前まで外で元気に遊んでいた子供が病気で寝込んでいる。そして、大人たちまで病気にかかってしまった。
春になると小鳥たちの鳴き声が聞こえ、野原には花が一面に咲いている……、はずだった。今では小鳥の歌声も聞くことができない。美しい花を見ることもできない。春にもかかわらず、春はただ沈黙を続けるだけである。
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この状態が実際に起こっている町はありません。しかし、これに似た現象は実際に起こっています。
「沈黙の春」とは
「沈黙の春」は環境問題について初めて警告を発した本です。沈黙し続ける春を引き起こす原因には殺虫剤や除草剤などの農薬があります。また、農薬だけでなく様々な要素が関わっています。
沈黙の春に似た事件としては「ベトナム戦争」や「チェルノブイリや福島での原発事故」があります。
ベトナム戦争ではダイオキシンを含む大量の枯葉剤が撒かれました。その結果、多くの人が犠牲となり後遺症を残しました。
チェルノブイリ原発事故では土地は汚染され、現在でも高い放射線量が確認されています。
農薬の毒
農薬は体内に蓄積することがあります。蓄積している濃度は普通の人よりも農業をしている人、農業をしている人よりも農薬生産の工場で働いているひとの方が蓄積している濃度が高いです。
農薬は害虫を駆除し雑草を枯らすかわりに、農薬を吸い込んだ人は体に有害物質をためてしまいます。農薬によって栽培された農作物を食べる私達も例外ではありません。
またDDTはマラリアを退治するのに役立ちました。しかしこのDDTがマラリアに対して効きにくくなりました。つまり、マラリアが耐性を獲得したのです。
これに対抗するためにDDTよりもさらに効果の高い殺虫剤を散布しました。するとその殺虫剤を散布した人たちに中毒症状がでました。恐ろしいことに死人まで出てしまったのです。
私達にできること
これらのことは全て「沈黙の春」から発せられた警告であり、私達はそれを真剣に受け止めなければなりません。
環境問題に対する取り組みはまだ始まったばかりです。今、私達にできることをすることが大切です。しかし、そのためには知識を身につけないといけません。行動を起こすには当然ながら知識が必要です。
例えば、電車でお年寄りの方が立っていて席を譲るとします。そのとき、当然ながら譲るべき席をもっていないと譲ることができません。「席に座っている」、「老人に席を譲ろうと思う」、この二つの条件がそろうと席を譲ることができます。
「環境に対して何かすることはないか」と思ったとします。そのとき、知識がないと行動できません。知識があっても行動しなければ意味がありません。
「知識を得る」、「実行に移す」という事が出来て、初めて環境に対して行動を起こすことができます。また、このことは環境に対してだけに限らずあらゆる場合に共通することです。
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