消毒薬各論
ウイルスの特徴
ウイルスと細菌は全く違うものである。そもそもウイルスには細菌がもつ細胞壁、細胞膜、その他細胞小器官などの構造が存在しない。生物が持つ共通点には次の五つがある。
1.細胞という構造から成る
2.同化:外部から取り入れたものを自分の構成成分に作り変える
3.応答性:刺激に応答する
4.エネルギーに変換:自分でエネルギーを転換する
5.増殖する
このうちウイルスには1~4が当てはまらない。そのため、「ウイルスは生物ではない」言われている。ただし、「増殖する」という点で「ウイルスは生物である」という学者もいる。
ウイルスの構造
ウイルスはDNAかRNAのどちらかをもっている。DNAやRNAには遺伝情報が載っており、DNA(またはRNA)の周りはカプシドというタンパク質の殻で包まれている。
また、この外側にエンベロープ(被膜)をもつウイルスも存在する。エンベロープは脂質と糖タンパク質から構成されている。さらにエンベロープの表面に「動物赤血球に結合する性質」をもつ突起があることがあり、この突起を赤血球凝集素という。
ウイルスの侵入
ウイルスは細菌と違って細胞小器官が存在しない。そのため、ウイルスは自分自身で増殖することができないのである。ウイルスは生きた細胞でのみ増殖することが可能である。
ウイルスが細胞内に侵入するためには細胞にあるウイルスレセプターに付着する必要がありる。逆にウイルスレセプターのない細胞にはウイルスは侵入できない。
ウイルスレセプターに付着したウイルスは細胞内に入るが、細胞内に侵入するには次の二通りの方法がある。
一つは細胞の食作用(細胞がウイルスを取り込む)によって取り込まれる方法で、もう一つはエンベロープと細胞膜が融合することによって侵入する方法である。
細胞内に侵入したウイルスはDNA(またはRNA)の周りにあるカプシド(タンパク質)を取り除く。カプシドなどの多くのタンパク質は宿主細胞に存在するリソソームによって分解されるのである。
まわりのタンパク質が分解されると、DNA・RNAは裸の状態となりる。DNA・RNAには子孫ウイルスを作る情報が含まれており、宿主細胞を乗っ取って自己複製を開始する。
ウイルスの培養
前述の通り、ウイルスは生きた細胞でしか増殖できない。そのため、ウイルスを増殖させるためには動物、孵化鶏卵、培養細胞のどれかを使用することになる。
・動物
ウイルスを培養するために、動物にウイルス感染させる。これにはマウス、モルモット、ウサギ、サルなどが用いられる。
・孵化鶏卵
受精した鶏卵を使用してウイルスを培養する。インフルエンザウイルスの増殖にはこの方法が用いられる。
・培養細胞
培養細胞とは「動物から臓器を取り出して細かく切り、タンパク質分解酵素によってバラバラにして培養した細胞」のことである。
なぜウイルスを増殖させる必要があるかというと、ワクチンを作るのに欠かせないからである。
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