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役に立つ薬の情報~専門薬学

テトラサイクリン系抗生物質の性質と特徴

 

抗菌薬の中でもテトラサイクリン系抗生物質は広域スペクトルを有していることが特徴です。つまり、多くの細菌をカバーします。

 

グラム陽性菌やグラム陰性菌、嫌気性菌だけでなく、マイコプラズマやマラリア原虫にも効果を示します。緑膿菌へはカバーがないものの、これだけ幅広い細菌へ作用することができます。

 

一般的に、広域スペクトルの抗菌薬は乱用される傾向にあります。ただ、テトラサイクリン系抗生物質はあまり使用されません。これは、いくつかの問題点があるからです。

 

 耐性獲得の問題点
現在では、抗菌薬が効かない耐性菌の存在が問題になっています。抗菌薬に耐性をもつため、薬を投与しても感染症から立ち直りにくいです。テトラサイクリン系抗生物質は細菌に耐性を獲得されやすいという特徴があります。

 

細菌はプラスミドという環状の遺伝子をもっていることがあります。プラスミドに「テトラサイクリン系抗生物質に耐性をもつ遺伝子」がプログラムされていることがあり、これらの遺伝情報は細菌同士で伝わります。つまり、ある細菌がテトラサイクリン系抗生物質に耐性をもつと、すぐに他の細菌も耐性を獲得するようになるのです。

 

そのため、本来、テトラサイクリン系抗生物質は多くの細菌をカバーするものの、実際に使用できる細菌は限られています。

 

 テトラサイクリン系抗生物質の副作用
テトラサイクリン系抗生物質では副作用が問題になりやすいです。まず、妊婦・授乳婦と8歳以下の小児に対して、テトラサイクリン系抗生物質の使用を避けます。これは、薬の使用によって骨や歯に色素沈着が起こるからです。つまり、歯が黄色や茶色に変色してしまいます。

 

また、頻度は高くないものの吐き気や日光過敏症が主な副作用として知られています。日光過敏症では、光を浴びた部分に紅斑や水ぶくれができます。

 

 薬物間相互作用(飲み合わせ)
薬物同士での相互作用も考慮しなければいけません。特に起こりやすいのは、金属製剤との併用です。金属製剤としては、アルミニウムやマグネシウム、鉄、カルシウム、亜鉛などがあります。

 

マグネシウム製剤は便秘薬、鉄製材は貧血治療薬、カルシウムは骨粗しょう症治療薬など、金属製剤はあらゆる疾患で用いられます。特にマグネシウム製剤は便秘薬として多用されるため、うっかりしていると両者を併用してしまうことは多々あります。

 

テトラサイクリン系抗生物質と金属製剤を併用すると、2つの薬物同士で強力に結合してしまい、腸から吸収されにくくなります。より専門的な言葉で表現すると、「キレートを形成する」といわれます。キレート形成で腸からの吸収が悪くなると、薬は血液に乗って全身をまわることができません。その結果、薬の効果が落ちてしまいます。

 

 テトラサイクリン系抗生物質の作用機序
生物が生きていくためには、タンパク質の合成が不可欠です。私たち人間であっても、皮膚や髪の毛はタンパク質から構成されています。細菌も同様に、増殖するためにはタンパク質合成が必要です。

 

タンパク質の合成を行う器官としてリボソームがあります。ただ、ヒトと細菌のリボソームを比べると、その形が異なっています。そこで、細菌のリボソームだけを狙い撃ちすれば、細菌だけに毒性を与えることができます。

 

 

 

細菌のリボソームは30Sと50Sの2つに分けることができます。この中でも、テトラサイクリン系抗生物質は30Sに作用します。

 

タンパク質合成を阻害することで、テトラサイクリン系抗生物質は細菌の増殖を抑えることができます。その作用から、テトラサイクリン系抗生物質は静菌性抗菌薬に分類されます。

 

このようなテトラサイクリン系抗生物質としては、テトラサイクリン(商品名:アクロマイシン)、ミノサイクリン(商品名:ミノマイシン)、ドキシサイクリン(商品名:ビブラマイシン)などがあります。現在、テトラサイクリンはあまり使用されず、ドキシサイクリンやミノサイクリンが活用されます。

 

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