役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

役に立つ薬の情報~専門薬学

ペニシリン系抗生物質の性質と特徴

 

抗菌薬を勉強するとき、最初に学ぶべきはペニシリン系抗生物質です。フレミングが初めて発見した抗生物質がペニシリンであることから、抗生物質はすべてここからスタートします。

 

日本で使われるペニシリン系抗生物質は3つに分けることができます。その3つとは古典的ペニシリン、アミノペニシリン、抗緑膿菌ペニシリンです。以下でそれぞれの特徴や性質を確認していきます。

 

 ペニシリン系抗生物質の種類
 ・古典的ペニシリン
ペニシリン系抗生物質での古典的ペニシリンとは、フレミングが発見したペニシリンG(ベンジルペニシリン)のことを指します。

 

ペニシリンGが作用するのはグラム陽性球菌です。グラム陽性球菌としては、黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌、肺炎球菌が知られています。ただし、黄色ブドウ球菌はβ-ラクタマーゼを作るようになったため、使用することはできません。肺炎球菌についても、同じように多くの耐性菌が確認されています。

 

基本的にはグラム陽性球菌に活用しますが、グラム陰性球菌の中でも淋菌や髄膜炎菌に対してペニシリンGは有効です。ただし、淋菌はペニシリンGへの耐性化が進んでいることから、使用できないことも多いです。

 

なお、ペニシリンGが第一適応となるケースがあります。それは、梅毒を治療するときです。梅毒スピロヘータを治療するとき、他の抗菌薬よりもペニシリンGが効果的なのです。

 

抗生物質として最も古典的なペニシリンGですが、化膿レンサ球菌や肺炎球菌、髄膜炎菌、梅毒スピロヘータに対して現在でも活用することがあるのです。

 

 ・アミノペニシリン
基本的に、抗菌薬の開発が進むことでペニシリンの構造から離れていくと、グラム陽性菌への作用が弱まり、グラム陰性菌への作用が強まると考えてください。

 

 

 

アミノペニシリンは古典的ペニシリンの次に開発されたペニシリン系抗生物質であり、化膿レンサ球菌や肺炎球菌への働きは弱くなっています。その代わり、グラム陰性桿菌の腸内細菌をカバーしています。

 

例外として、アミノペニシリンではグラム陽性球菌の中でも腸球菌に対しては効果が強くなっています。これらアミノペニシリンとしては、アンピシリン・スルバクタム(商品名:ユナシン)、アモキシシリン(商品名:サワシリン)、アモキシシリン・クランブラン酸(商品名:オーグメンチン、クラバモックス)があります。

 

スルバクタムとクランブラン酸はβ-ラクタマーゼ阻害薬であり、アミノペニシリンが分解されなくすることで抗生物質の効果を高めます。

 

 ・抗緑膿菌ペニシリン
あらゆる細菌の中でも、緑膿菌は抗菌薬が効きにくい細菌として知られています。そこで、グラム陽性菌やグラム陰性菌、嫌気性菌に加え、緑膿菌への作用を示すペニシリン系抗生物質として抗緑膿菌ペニシリンが開発されています。

 

抗緑膿菌ペニシリンとしては、ピペラシリン(商品名:ペントシリン)、ピペラシリン・タゾバクタム(商品名:ゾシン)が知られています。タゾバクタムはβ-ラクタマーゼ阻害薬です。

 

なお、あらゆる細菌に効果を示すわけではありません。例えば、MRSAに対して抗緑膿菌ペニシリンは効果がありません。

 

 ペニシリン系抗生物質の性質
ペニシリン系抗生物質は時間依存性の抗菌薬です。また、PAEが短い(血中濃度が低くなると細菌は増殖を開始する)という性質のため、常にMICよりも高い血中濃度を維持しなければいけません。

 

ただ、ペニシリン系抗生物質の多くは半減期が1時間程度です。そのため、1日に何回も投与しなければいけません。通常は4~6時間おきの投与が必要だとされています。適切な血中濃度を維持することで、薬の効果を最大限に得ることができ、さらには耐性菌の出現を防ぐことができます。

 

なお、中にはペニシリンに対してアレルギーを有している患者さんがいます。この場合はペニシリンアレルギーを防ぐため、ペニシリン系抗生物質を他の抗菌薬に変えて投与しなければいけません。

 

どうしてもペニシリン系抗生物質を使用したい場合、少量から投与して徐々に投与量を増やすことで慣れさせていきます。これを脱感作といいます。脱感作をすれば、ペニシリン系抗生物質を投与しても問題ありません。

 

 ペニシリン系抗生物質の作用機序
細菌とヒトの細胞を比べたとき、細菌には細胞壁があるものの、ヒトの細胞には細胞壁がありません。そこで、ペニシリン系抗生物質では、細胞壁の合成を阻害することでその作用を発揮します。

 

 

 

細胞壁がなければ、細菌の細胞内に水が流入してくるようになります。その結果、細胞が膨張して破裂し、死滅していきます。そのため、ペニシリン系抗生物質は殺菌性抗菌薬に分類されます。

 

細菌が細胞壁を合成するとき、ペニシリン結合タンパク質(PBP)という酵素が必要です。そこで、ペニシリン系抗生物質はペニシリン結合タンパク質(PBP)に結合することで、その働きを阻害します。これにより、細菌が死んでいきます。

 

スポンサードリンク



スポンサードリンク