マクロライド系抗生物質の性質と特徴
マクロライド系抗生物質の性質
抗生物質の中でも、マクロライド系抗生物質は多用される傾向にあります。マクロライド系抗生物質は幅広く細菌をカバーする広域スペクトルを有し、多くのグラム陽性菌、グラム陰性菌に対して効果を示します。ただし、嫌気性菌への作用は劣ります。
また、患者さんの中にはペニシリンアレルギーを有していることがあるため、ペニシリン系抗生物質を使用できないことがあります。そのような場合、マクロライド系抗生物質を代替薬として活用します。また、副作用が比較的少ないのもマクロライド系抗生物質の特徴です。
こうした性質から、マクロライド系抗生物質が大量処方されるようになり、現在では耐性菌が問題となっています。本来は化膿レンサ球菌や肺炎球菌などに優れて効果を示す薬ですが、いまでは耐性菌の観点から適切な治療を行えなくなっているほどです。
これらマクロライド系抗生物質としては、エリスロマイシン(商品名:エリスロシン)、クラリスロマイシン(商品名:クラリス、クラリシッド)、アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)などが知られています。
マクロライド系抗生物質は、クラリスロマイシンやアジスロマイシンを使うのが一般的です。これは、抗菌薬の開発が進むにつれて副作用が少なくなり、半減期が長くなるからです。
より詳しい話をすると、「エリスロマイシン → クラリスロマイシン → アジスロマイシン」になっていくにつれて、以下のような特徴がみられます。
・インフルエンザ菌など、細菌のカバーが改善
・消化器症状の副作用が少ない
・半減期が長い(作用時間が長い)
・薬物間相互作用が少ない(CYP450による影響が少ない)
このような特徴があるため、マクロライド系抗生物質の中でもエリスロマイシンはあまり使用されません。
それでは、以下にクラリスロマイシン(商品名:クラリス、クラリシッド)やアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)の適応となる代表的な疾患を記します。
・市中肺炎(普段の生活の中で罹る肺炎)
・中耳炎
・気管支炎
・副鼻腔炎
・性感染症(クラミジアなど)
・ピロリ菌の除菌
交叉耐性と相互作用
マクロライド系抗生物質では、一つの抗生物質で耐性が獲得されると、他の抗菌薬でも耐性をもつようになります。例えば、エリスロマイシンで耐性が獲得されると、クラリスロマイシンやアジスロマイシンでも耐性を持つようになります。このような耐性機構を交叉耐性(こうさたいせい)といいます。
また、マクロライド系抗生物質では相互作用(飲み合わせ)が問題になりやすいです。特に抗けいれん薬や抗凝固薬(ワーファリン)、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス)では注意が必要です。
マクロライド系抗生物質の作用機序
タンパク質を合成する器官としてリボソームがあります。ヒトと細菌のリボソームを比べたとき、その大きさが異なります。そこで、細菌のリボソームだけに作用する薬を投与すれば、細菌だけに働きかけることができます。
細菌のリボソームは30Sと50Sに分けることができます。その中でも、マクロライド系抗生物質では50Sリボソームを阻害することで、その作用を発揮します。このときは細菌の増殖を抑えるため、静菌的抗菌薬に分類されます。主な副作用としては下痢、腹痛、悪心などがあります。
その使いやすさから乱用されがちのマクロライド系抗生物質ですが、薬への耐性化が進んでいるため、使用方法を改めなければいけない薬でもあります。
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