抗菌薬(抗生物質)の分類と覚え方
薬を覚えるとき、医師であれ薬剤師であれば最も困るのが抗菌薬(抗生物質)です。理由は単純であり、薬の中でも抗菌薬は膨大な種類と量が存在するからです。
これをゼロから覚えようとしても、効率が悪く挫折するだけです。そこで、抗菌薬を勉強するときは適切な覚え方を最初に理解しなければいけません。ここでは、抗菌薬を学ぶ前に必ずおさえておかなければいけないポイントについて解説していきます。
β-ラクタム系抗生物質とそれ以外で考える
抗菌薬はいくつかの種類があります。これらをザックリと並べると、以下のようになります。
・ペニシリン系抗生物質
・セフェム系抗生物質
・カルバペネム系抗生物質
・マクロライド系抗生物質
・アミノグリコシド系抗生物質
・ニューキノロン系抗菌薬
抗菌薬は他にも種類はありますが、ひとまず一部の抗菌薬だけ羅列しました。このとき、カルバペネム系抗生物質とマクロライド系抗生物質で上下に分けます。すると、抗菌薬を「β-ラクタム系抗生物質とそれ以外」の2つで考えることができます。
ペニシリン系抗生物質、セフェム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質はβ-ラクタム系抗生物質です。そして、マクロライド系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、ニューキノロン系抗菌薬は「それ以外の抗菌薬」と考えます。
臨床現場では、β-ラクタム系抗生物質が頻繁に活用されます。そのため、最初はβ-ラクタム系抗生物質の性質や役割を理解した上で学習を進めるようにしましょう。β-ラクタム系抗生物質をおさえれば、ひとまずは何とかなります。
つまり、抗菌薬の基本であるペニシリン系抗生物質を学び、セフェム系抗生物質やカルバペネム系抗生物質を理解した後は、必要に応じて「それ以外の抗菌薬」を学べば問題ありません。
β-ラクタム系抗生物質とβ-ラクタム環
β-ラクタム系抗生物質には共通点があります。それは、「どれもβ-ラクタム環を有している」ということです。それでは、β-ラクタム環とは何でしょうか。β-ラクタム環では、以下のように四角形のアミド構造(-CONH-)をもちます。
世界初の抗生物質として、ペニシリンが知られています。発見当初、ペニシリンはペニシリンFやペニシリンGなどの混合物でした。そこからペニシリンG(ベンジルペニシリン)を抽出することで、いまのペニシリンとなっています。
ペニシリンGなどのβ-ラクタム系抗生物質では、四角形のβ-ラクタム環が抗菌作用を示す本体です。つまり、β-ラクタム環が存在しなければ、ペニシリンは細菌を殺す作用を示すことはありません。実際、ペニシリンを口から服用しても効果を得ることはできません。これは、胃酸によってペニシリンのβ-ラクタム環が破壊されるからです。
現在は薬の開発が進み、胃酸が存在してもβ-ラクタム環が壊されない抗菌薬が開発されています。このようなβ-ラクタム系抗生物質であれば、口から服用しても問題ありません。
なお、現在は抗菌薬が効かない「耐性菌」の存在が問題になっています。細菌が耐性を獲得する機構はさまざまですが、β-ラクタム系抗生物質の場合は「β-ラクタム環を壊す酵素」を獲得することが主な耐性メカニズムです。
「β-ラクタム環を壊す酵素」をβ-ラクタマーゼといいます。β-ラクタマーゼを獲得すると、多くのβ-ラクタム系抗生物質に対しても耐性を有するようになります。
そこで、抗菌薬の中には「β-ラクタマーゼによって分解されにくい抗生物質」が開発されています。ただ、こうした開発研究を行っても結局は耐性を獲得されるため、耐性菌は大きな問題になっています。
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