消毒薬各論
消毒薬の分類
消毒薬はその抗微生物スペクトルの広さ、つまり殺菌作用の強さによって「高水準、中水準、低水準」の三つに分けられる。
以下に、それぞれの消毒薬について見ていこうと思う。
高水準の消毒薬
・グルタラール
グルタラールはアルデヒドの一種であり、細菌、ウイルス、芽胞など全ての微生物に対して有効な消毒薬である。内視鏡消毒の第一選択薬である。
毒性が強いため、人体に対しては使用できない。
・フタラール
フタラールはグルタラールの類似化合物であり、芽胞以外の全ての微生物に対して有効である。
・過酢酸
過酢酸は細菌、ウイルス、芽胞など全ての微生物に対して有効である。
※これらの高水準消毒薬は主に病院等で使用される。また毒性が強いため、いずれの消毒薬も人体に対しては使用しない。消毒を行う際は換気を十分にし、皮膚に付着しないように気を付ける必要がある。
中水準の消毒薬
・次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウムは、ウイルスを含むほとんどの微生物に対して有効である。また、タンパク質との接触によってNaClとなるため、低残留性の消毒薬といえる。
金属腐食性があるため、金属類に対しては使用することができない。「脱色作用」や「プラスチックやゴム製品を劣化される作用」もある。酸性の洗剤と混ぜることで塩素ガスが発生するため、これらの洗浄剤と一緒に使用することは禁忌である。
主に器具類やリネン類の消毒に用いられる。
・ポビドンヨード
ポビドンヨードは広範囲の微生物に対して有効である。また、「粘膜に対して使用することができる」ということが特徴である。生体への刺激性が低いため副作用は少ないが、金属器具に対しては使用することができない。
褐色に着色し、一旦衣服に付いてしまうと色が落ちにくい。ポビドンヨードの色消し剤としてはハイポアルコール(チオ硫酸ナトリウム含有のアルコール溶液)が使用される。
・消毒用エタノール、イソプロパノール
消毒用エタノール、イソプロパノールは広範囲の微生物に対して有効であるが、芽胞に対しては無効である。短時間で効力を発揮し、蒸発するために残留性が少ない。
一般的には濃度80%のアルコールとして使用され、濃度が50%以下になると殺菌作用が消失してしまう。また、刺激性があるために粘膜や創傷皮膚に対しては使用できない。
なお、同じ濃度の消毒用エタノールとイソプロパノールであれば、値段はエタノールの方がかなり高い。これは、エタノールが酒の成分であるため、酒税がかけられていることにある。消毒用エタノールに少量のイソプロパノールを添加すると酒とはみなされなくなるため、値段が抑えられる。
低水準の消毒薬
・ベンザルコニウム塩酸塩、ベンゼトニウム塩酸塩
逆性せっけん(陽イオン界面活性剤)であり、脱脂作用(手などの脂を取る作用)が強いため主に家具や床など環境の消毒に用いられる。脱脂作用の悪い点は、手の脂が取られることで手がカサカサとなることである。
陽イオンの性質のため、陰イオン界面活性剤である石鹸と併用することで作用が減弱する。粘膜に対する刺激は少ない。
・グルコン酸クロルヘキシジン
グルコン酸クロルヘキシジンは手指消毒など、主に人体に使用される。ただし粘膜に対しては、アナフィラキシーを引き起こした事例があるため禁忌である。
・塩酸アルキルジアミノエチルグリシン
両性界面活性剤であり、高濃度では結核菌に対しても有効である。脱脂作用(手などの脂を取る作用)が強いため、主に家具や床など環境の消毒に用いる。
粘膜に対する刺激は少ない。
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