アミノグリコシド系抗生物質の性質と特徴
アミノグリコシド系抗生物質の性質
グラム陰性桿菌による感染症治療にアミノグリコシド系抗生物質が使用されます。グラム陰性桿菌には緑膿菌も含まれます。
一方、グラム陽性菌への作用は弱いです。そのため、グラム陽性菌に使用するときはβ-ラクタム系抗生物質と併用します。アミノグリコシド系抗生物質とβ-ラクタム系抗生物質を合わせると、シナジー効果(相乗効果)によってより強い抗菌作用を発揮させることができます。緑膿菌の治療でも2剤を併用することがあります。
なお、嫌気性菌へのカバーはありません。また、髄液への移行性がないため、髄膜炎の治療薬としてアミノグリコシド系抗生物質を使用することはできません。
このようなアミノグリコシド系抗生物質としては、ゲンタマイシン(商品名:ゲンタシン)、トブラマイシン(商品名:トブラシン)、アルベカシン(商品名:ハベカシン)、アミカシンなどが知られています。
・グラム陽性菌とアミノグリコシド系抗生物質
実際にグラム陽性菌に投与するとき、主に感染性心内膜炎や血液感染に用います。このときは、「β-ラクタム系抗生物質+ゲンタマイシン」で併用します。アミノグリコシド系抗生物質の中でも、ゲンタマイシン(商品名:ゲンタシン)を使用することが注意点です。
アミノグリコシド系抗生物質の特徴
抗菌薬の中でも、アミノグリコシド系抗生物質は濃度依存性抗生物質に分類されます。つまり、血中濃度(血液中の薬物濃度)が高いほど抗菌作用が強くなります。また、PAEが長い(血中濃度が低くなっても、細菌の増殖抑制作用が長時間残る)という性質があります。
そのため、薬の効果を最大化するためには、一回の投与量を多くすればいいことが分かります。1日1回の投与により、感染症を治療します。
ただ、むやみに薬物濃度を高めてはいけません。アミノグリコシド系抗生物質には腎機能障害や聴力障害が知られているからです。腎機能が障害されると、尿を正常に作れなくなります。また、聴力障害が起こると平衡感覚がなくなったり、耳が聴こえにくくなったりします。
薬の作用を得るには血中濃度を上げることが必要ですが、上げ過ぎると副作用を引き起こしてしまいます。そのため、アミノグリコシド系抗生物質を使用するときは血中濃度の測定を行います。これを専門用語でTDMといいます。
血中濃度の測定とTDM
アミノグリコシド系抗生物質はTDM(薬物の血中濃度を測定し、最適な薬物投与量を決定すること)を実施すべき薬です。この薬は治療域と中毒域が狭いため、慎重に投与量を決定しなければいけません。
薬の量が少ないと、薬物の効果を得ることができません。その反対に血中濃度が上がり過ぎると、前述の通り腎機能障害や聴力障害が表れます。
測定する血中濃度はピーク値(最高血中濃度)とトラフ値(最低血中濃度)の2つです。つまり、「最も薬物濃度が高い値」と「最も薬物濃度が低い値」を測ります。ピーク値は投与後30分~1時間以内で測定します。トラフ値は次回の薬物投与前の30分~1時間以内で測定します。
また、ピーク値もトラフ値も3~4回の薬物投与を繰り返した後で測ります。投与開始直後に血中濃度を測ったとしても、薬物濃度が上がっている途中だからです。薬の投与を繰り返し、血中濃度が安定したときに測定しなければいけません。
アミノグリコシド系抗生物質を少量投与しても効果を得られず、副作用リスクが増すだけです。そのため、十分な血中濃度の確保が必要です。また、副作用を回避するためにトラフ値を下げなければいけません。これをTDMで確認します。
なお、聴力障害の副作用から、アミノグリコシド系抗生物質を14日以上投与するとき、週に一回は聴力検査を実施します。
アミノグリコシド系抗生物質の作用機序
タンパク質を合成しなければ、生物は生きていくことができません。これはヒトでも細菌でも同様です。これらタンパク質の合成に関わる器官として、リボソームがあります。
ただ、ヒトと細菌のリボソームを比べたとき、両者の形に違いがあります。そこで、細菌のリボソームだけを阻害することができれば、細菌のみに毒性を与えることができます。
細菌のリボソームを細かく見ると、30Sと50Sの2つに分かれています。このうち、アミノグリコシド系抗生物質は30Sリボソームに結合することでその働きを阻害します。アミノグリコシド系抗生物質は細菌を死滅させることから、殺菌性抗菌薬に分類されます。
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