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役に立つ薬の情報~専門薬学

抗原抗体反応

 

 抗原抗体反応
抗原と抗体は共有結合以外の力で結合している。つまり、水素結合、クーロン力、ファンデルワースル力などの力で結合しているのである。

 

抗原と抗体の結合の強さを表すものにアフィニティー(親和性)アビリティー(結合活性)の二種類がある。アフィニティーとは抗原と抗体の1:1での結合の強さである。アビリティーとは結合している抗原と抗体全ての結合力である。(抗原には少なくとも、2つ以上の結合部がある)

 

 抗体の測定
抗体を測定するには、抗体に標識物質を結合させて測定する。

 

 蛍光抗体法
抗体に蛍光物質を結合させて測定する方法が蛍光抗体法である。蛍光抗体法には直接蛍光抗体間接蛍光抗体法がある。

 

直接蛍光抗体法では「蛍光物質を含んでいる抗体」と抗原を反応させる。間接蛍光抗体法では、「蛍光物質を含んでいる抗体」を抗原と結合している抗体に結合させる。

 

 蛍光抗体法

 

蛍光抗体法の測定方法としては、フローサイトメトリーがある。フローサイトメトリーでは一滴の中に一個の細胞を入れ、一滴一滴にレーザーを当てて測定する。フローサイトメトリーの機能をもつ機械をフローサイトメーターという。

 

また、セルメーターではフローサイトメトリーの機能に加え、特定の細胞だけを集めるという機能もある。

 

 ラジオイムノアッセイ(RIA)
ラジオイムノアッセイは放射性物質を使って、抗体を標識する方法である。抗体からの放射能を測定することで、抗体の定量をすることができる。

 

ただし、この方法は次の理由で行われなくなりつつある。

 

・人体に影響がある → 実験する場所が限られる
・安定でない → 長持ちしない
・放射性物質であるため、処理が容易でない

 

ラジオイムノアッセイには競合法サンドイッチ法がある。このとき、測定をするときは抗原量に注意しなければならない。

 

競合法は「標識した抗原」と「何もしていない抗原」がどの割合で抗体に結合するかを測定する。標識した抗原の量は分かっているので、何もしていない抗原の量を知ることができる。

 

 競合法

 

ただし、この方法では抗体の量が全ての抗原量よりも少ないといけない。全抗原量よりも抗体の量の方が多いと、全ての抗原が抗体に結合してしまうことになる。これでは、競合ではなくなってしまう。

 

また、サンドイッチ法では抗体に抗原を結合させ、その抗原に標識した抗体を結合させて測定する。「測定した標識抗体の量=抗原の量」となる。

 

 サンドイッチ法

 

サンドイッチ法では全ての抗原が抗体に結合できる方が良い。抗原が全ての抗体に結合しているということは、抗原が結合できずに余っているということである。全ての抗原を検出することができないので、正確に抗原を定量することができない。

 

 エンザイムイムノアッセイ(EIA)
エンザイムイムノアッセイには均一エンザイムイムノアッセイ不均一エンザイムイムノアッセイがある。

 

・不均一エンザイムイムノアッセイ(不均一EIA)
不均一EIAではB/F分離を必要とする。B/F分離のBはbond(結合)、Fはfree(遊離)の意味である。つまり、抗体と結合している抗原と抗体と結合していない抗原を分けるということである。

 

なお、不均一EIAにはELISA法(エライザ法)ELISPOT法(エリスポット法)がある。ELISA法やELISPOT法はプラスチック等のプレートを用いて、固体表面で測定を行う。典型的なプラスチックプレートは96個(96ウェル)の孔があるプレートを使用する。それぞれプレートごとに顕微鏡やプレートリーダーで読み取る。

 

・ELISA法
ELISA法は抗体や抗原の量を測定することができる。ELISA法には「競合法」「サンドイッチ法」「直接吸着法 」がある。ラジオイムノアッセイと異なるのは、「酵素で標識した抗体や抗原を使うこと」と「抗体や抗原が吸着した後に、発色基質を添加すること」である。

 

 ELISA法

 

このとき使用する発色基質は、酵素と反応させた反応物が可溶性のものを選ぶ。色の濃度と抗体・抗原の量は比例するので、存在する抗体・抗原の量を知ることができる。

 

なお、直接吸着法は固相に抗原を吸着させて行う方法である。

 

 直接吸着法

 

固相に抗原を吸着させたら、今度は酵素標識させた抗体と反応させる。ここに発色器質を加え、その発色の度合いによって抗原の量を調べるのである。

 

・ELISPOT法
ELISPOT法では抗体産生細胞やサイトカインを産生する細胞の数を知ることができる。ELISPOT法でもあらかじめ抗体をプラスチックプレートに吸着させておく。

 

このプレートにサイトカイン産生細胞を添加すると、産生されたサイトカインが抗体と結合する。洗浄後に酵素を標識させたサイトカインに対する抗体を添加し発色基質を加えると、サイトカイン産生細胞が存在していた部分だけがスポットとして表れる。

 

なお、発色基質は酵素と反応させた反応物が不可溶性のものを選ぶ。

 

 ELISPOT法

 

・均一エンザイムイムノアッセイ(均一EIA)
不均一EIAでは、B/F分離が必要である。B/F分離が必要ということは、抗体を吸着させた後に洗浄が必要であるということである。つまり、時間がかかってしまう。これを、もっと迅速に測定可能にしたのが均一EIAである。

 

均一EIAには、例えばハプテンが用いられる。ハプテンとは低分子物質(低分子薬物)であり、抗体と結合できるが、低分子であるため単独では抗原性を示さない抗原である。

 

ハプテンが抗原性を示すようになるには、高分子と結合させる必要がある。ハプテン-高分子物質の複合体で初めて抗ハプテン抗体が作られる。

 

 ハプテンの性質

 

ここに、ハプテン-酵素の複合体があるとする。これに抗ハプテン抗体を添加すると酵素活性は低下する。

 

 抗ハプテン抗体による酵素活性の阻害

 

単独のハプテンを添加すると、抗ハプテン抗体は単独のハプテンとも結合するので酵素活性の低下が抑えられる。つまり、競合する。酵素活性とハプテン添加量には比例関係が見られる。

 

 酵素活性-ハプテン

 

 ウェスタンブロット法
この方法は電気泳動を利用した方法であり、ELISA法やELISPOT法よりも特異性が高い。ウェスタンブロット法では抗原の存在量だけでなく、分子量も知ることができる。

 

ウェスタンブロット法では、まずアクリルアミドゲルでSDSとタンパク質を結合させることから始まる。SDSがタンパク質に結合すると、変性が起こってタンパク質の構造が崩れる。構造が崩れたタンパク質は棒状となる。

 

また、SDSは-の電荷を帯びており、一定の大きさのタンパク質には一定の-電荷を帯びていることになる。

 

 ウェスタンブロット法

 

電気泳動を行うと、分子量の小さいタンパク質はアクリルアミドゲルの網目を容易に通り抜けることができる。しかし、大きいタンパク質では網目を通り抜けるのに時間がかかってしまう。このような方法で、分子の大きさによって分けることができるのである。

 

検出にはニトロセルロース膜などで行う。このとき、アクリルアミドゲルからニトロセルロース膜へタンパク質を移動させないといけない。つまり、転写(写し取り)を行う。

 

この転写も電気泳動によって行う。アクリルアミドゲル側からはマイナスの電荷を、ニトロセルロース側からはプラスの電荷をかければ、タンパク質はニトロセルロース側に移動するはずである。

 

 凝集反応
抗体や抗原の粒子自体はとても小さいので、肉眼で確認することはできない。しかし、粒子同士が多くの抗体を介して繋がると、肉眼でも確認できる大きさの凝集物となる。これが凝集反応である。特に、赤血球を使用する凝集反応を赤血球凝集反応という。

 

抗体の中でもIgMは結合部位が10ヶ所あるので、他の結合部位が2ヶ所しかない抗体と比べると凝集しやすい。IgGのように結合部位が2ヶ所しかない抗体では凝集が起こりにくいため、IgG同士を繋ぐ役割を果たす二次抗体が必要である。

 

IgMを使用する場合のように、二次抗体を必要としない凝集反応を直接凝集反応といい、二次抗体を使用して凝集反応を行う場合を間接凝集反応という。

 

 直接・間接凝集反応

 

ラテックスのようにそれ自体が抗原性を示さない物質については、抗原を結合させることで解決する。抗原性を示さなくても、結合させておいた抗原が抗体と結合するので凝集させることができる。この反応を受身凝集反応という。それに対し、抗原自体を介して行う凝集反応は能動凝集反応という。

 

 能動・受身・逆受身凝集反応

 

また、抗原によって抗体を結合させて凝集させる場合を逆受身凝集反応という。

 

抗体と抗原が複合体を形成するなら、抗原は壁一面に広がった状態となる。しかし、抗体が存在しないなら抗原は壁に結合しないので沈むだけとなる。

 

 凝集反応

 

・クームス血清
赤血球に対する抗体ができる疾患があり、この疾患を自己免疫性溶血性貧血という。この病気は自己免疫疾患の一種である。この疾患を区別する試験をクームス試験という。

 

体内で抗体が結合した赤血球が存在する場合、抗IgG抗体を加えれば凝集反応が起こる。このときのクームス試験を特に直接クームス試験という。

 

※赤血球に対する抗体が存在しないのならば、凝集は起こらない。
※抗IgG抗体→IgGに結合する抗体

 

赤血球に対する抗体だけが存在する場合は、外からヒトの赤血球を加えて赤血球と抗体を反応させる。その後、抗IgG抗体を加えれば凝集反応が起こる。このように行う試験を間接クームス試験という。

 

・沈降反応
1つの抗原分子には複数の同じ抗原決定基をもつ。抗原を介して複数の抗体が結合すると、大きな複合体となる。こうなると水に溶けていられなくなるので不溶性となり、沈殿する。

 

凝集反応を起こすとき、抗体・抗原のどちらかの量が極端に多ければ凝集反応は起こらない。それは、下の図を見れば理解していただけると思う。

 

 

 

抗原と抗体が複合体を作って沈殿するには、1:1の割合が最適となる。

 

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