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役に立つ薬の情報~専門薬学

サイトカイン、ケモカイン

 

 サイトカインとは
サイトカインは細胞が産生する微量生理活性タンパク質の総称である。そのため、サイトカインという物質そのものは存在しない。サイトカインは細胞同士のコミュニケーションを司り、細胞の増殖・分化・機能発現に関わっている。

 

細胞からサイトカインが産生され、標的細胞の受容体に結合し、標的細胞の作用を変えるのである。

 

サイトカインの特徴として、次のようなものがある。

 

・低分子タンパク質である。(分子量8万以下、多くは3万以下)
・多くは糖鎖をもつ。
・細胞表面に存在する受容体に結合することで、機能を発現させる。
・通常、オークリンまたはパラクリン作用によって作用する。
・一つのサイトカインが、いくつもの異なる作用(生物活性)をもつ。

 

 サイトカインによる情報伝達
サイトカインはタンパク質なので、細胞膜を通過することができない。そのため、サイトカインは細胞膜の受容体に結合することで効果を発揮する。

 

ほとんどのサイトカインの受容体は、細胞内に酵素活性をもたない。つまり、受容体自身に酵素活性がないのである。

 

そのため、細胞内に酵素を結合させることで細胞内にシグナルを送る。この結合させられている酵素をJAK型チロシンキナーゼという。受容体にサイトカインが結合し、チロシンキナーゼが活性化することで細胞内に情報を伝達する。

 

JAKとは英語でjanus kinase(ヤヌス・キナーゼ)と書く。ヤヌスとはローマ神話の前後二つの顔をもつ門番のことである。JAK型チロシンキナーゼは結合している受容体のリン酸化と下流の分子のリン酸化の二つの役割をする。このことから、ヤヌスキナーゼと呼ばれる。

 

チロシンキナーゼドメインには活性化ループがあり、このループが活性中心をふさいでいる。チロシンキナーゼが活性化すると活性化ループの構造が変わり、チロシンキナーゼとしての活性を示す。

 

ただし、チロシンキナーゼ1分子だけでは活性化しにくい。つまり、活性化には二量体を形成する必要がある。

 

受容体にサイトカインが結合すると、チロシンキナーゼがお互いに結合し二量体化する。その後、お互いをリン酸化することで活性化する。

 

 JAK型チロシンキナーゼ
 (図の中での「Y」はチロシン残基を示す)

 

活性化ループにはある程度の「ゆらぎ」があり、二量体化によってリン酸化される確率が高まる。1分子だけではリン酸化される確率が低い。

 

チロシンキナーゼが活性化すると、結合している受容体をリン酸化する。受容体がリン酸化されると、種々の情報伝達物質を呼び込む。このとき呼び込む情報伝達物質にSTATがある。なお、ほとんどのサイトカインがJAK/STAT経路によるものである。

 

チロシンキナーゼによって、情報伝達物質であるSTATがリン酸化され、STATは二量体を形成する。これが転写因子として核へ移行する。

 

 JAK/STAT経路

 

 サイトカインによるヘルパーT細胞、B細胞の分化
ヘルパーT細胞にはTh1細胞Th2細胞の二種類があり、Th1細胞は細胞性免疫に関わっており、Th2細胞は体液性免疫に関わっている。

 

Th1細胞、Th2細胞はもともとナイーブTh細胞から分化したものである。ナイーブTh細胞がTh1細胞に分化するかTh2細胞に分化するかは、どの種類のサイトカインが作用するかによって決まる。

 

ナイーブTh細胞をTh1細胞に分化させるサイトカインはIL-12(インターロイキン-12)であり、Th2細胞に分化させるサイトカインはIL-4(インターロイキン-4)である。IL-12はマクロファージなどから産生され、IL-4は肥満細胞(マスト細胞)や活性化したTh2細胞から産生される。

 

 Th1、Th2への分化

 

Th1細胞はIL-2,IFN-γなどのサイトカインを産生し、マクロファージの活性化やキラーT細胞の誘導などを行う。Th2細胞はIL-4,IL-5,IL-10などのサイトカインを産生し、B細胞の分化させ抗体産生細胞への誘導などを行う。

 

また、Th1細胞から産生されるIFN-γはTh2細胞への分化を抑制し、Th2細胞から産生されるIL-10はTh1細胞への分化を抑制している。

 

 造血に関するサイトカイン
造血に関するサイトカインにエリスロポエチン(EPO)がある。エリスロポエチンは主に腎で産生され、赤芽球前駆細胞に働いて赤血球への分化・増殖を促す働きをする。

 

エリスロポエチンを健常人に投与すると、赤血球の数が増加する。そのため、エリスロポエチンはドーピングの対象となっている。

 

なお、長距離マラソン選手が高地トレーニングするのはエリスロポエチン産生亢進によって、赤血球数を上げるという目的がある。

 

 臨床応用されているサイトカイン
臨床応用されているサイトカインには、次のようなものがある。

 

医薬品

使用する疾患

エリスロポエチン(EPO) 腎性貧血
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF) 顆粒球減少症
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF) マクロファージ・顆粒球減少症
塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF) やけどなど
インスリン様増殖因子(IGF-1) 成長ホルモン抵抗性による成長障害

 

 ケモカイン
ケモカインはマクロファージ、内皮細胞、T細胞などから産生され、白血球を遊走させる働きをするサイトカインである。

 

ケモカイン受容体はGタンパク質共役型であり、7回膜貫通型である。

 

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