アレルギーの発生と治療
アレルギーとは
免疫反応は本来生体を守るために働く。免疫反応によって相手側を傷害するが、このとき生体側もある程度の傷害を受けてしまう。
相手に多大な傷害を負わせ、生体は少しの被害で済むのが理想的である。しかし、必ずしもそうなるとは限らない。生体への被害が大きいとき、アレルギーとしてさまざまな症状が表れてくるのである。このとき、アレルギー反応を起こす物質をアレルゲンという。
アレルギーの分類
アレルギーにはⅠ~Ⅴ型に分類される。教科書によってはⅠ~Ⅳ型までと記載されている場合があるが、これはⅤ型アレルギーがⅡ型の特殊な場合であるためである。
種類 |
Ⅰ型 |
Ⅱ型 |
Ⅲ型 |
Ⅳ型 |
|
抗原抗体反応に関与する抗体、リンパ球 | IgE | IgG,IgM | IgG,IgM |
T細胞 |
|
補体の関与 | なし | あり、またはなし | あり | なし | |
関与する細胞 |
肥満細胞 |
なし、または |
好中球 |
マクロファージ |
|
メディエーター |
ヒスタミン |
活性補体 |
リソソーム酵素 |
リンホカイン | |
代表的疾患 |
気管支喘息 |
重症筋無力症 |
ループス腎炎 |
ツベルクリン反応 |
・Ⅰ型アレルギー
Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーとも呼ばれている。この反応はIgE抗体によって起こる。
肥満細胞にはIgEのFc部に対するレセプターがあり、このレセプターにIgEが結合する。細胞に結合したIgEに対する抗原が結合して架橋すると、その細胞は活性化する。
活性化した肥満細胞はヒスタミンやSRS-Aなどのケミカルメディエーターを遊離させる。これらのケミカルメディエーターがⅠ型アレルギー反応を起こす。反応が速やかに起こるので即時型、アナフィラキシー型である。
・Ⅱ型アレルギー
Ⅱ型アレルギーは、細胞毒性型アレルギーである。普通、自己に対する抗体は産生されないが、自己に対する抗体が産生されてしまう場合があり、この状態に陥るとⅡ型アレルギーとなる。
自己の細胞表面に抗体が結合すると、それをK細胞やマクロファージ、補体などが認識して細胞を破壊・融解させる。K細胞のADCCによる破壊、マクロファージによる貪食、補体活性化による細胞融解などが起こる。
このように、Ⅱ型アレルギーでは細胞が破壊、傷害される。しかし、自己抗体による作用では細胞が破壊されるだけでなく、活性化する場合がある。この場合がⅤ型アレルギーである。
Ⅴ型アレルギーの例としてバセドウ病(グレーブス病)がある。バセドウ病では甲状腺ホルモン受容体(TSH受容体)に対する抗体が産生されており、この抗体が受容体に結合することで甲状腺機能亢進が起こる。(抗TSH受容体抗体)
Ⅱ型アレルギーでは受容体に抗体が結合することで細胞が破壊され、機能低下を起こす。Ⅴ型アレルギーではその逆で、抗体が結合することで機能亢進を起こす。
・Ⅲ型アレルギー
Ⅲ型アレルギーでは抗原-抗体複合物(免疫複合物)が問題となる。この複合物が組織に沈着することで補体が活性化し、細胞傷害が起こる。
・Ⅳ型アレルギー
Ⅳ型アレルギーは遅延型アレルギーとも呼ばれる。Ⅳ型アレルギーにはT細胞が関与しており、T細胞が活性化するのにある程度の時間がかかるので遅延型となる。
抗原によってヘルパーT細胞が活性化し、サイトカインを産生する。これによってマクロファージが活性化し、炎症反応を起こす。また、抗原感作によってキラーT細胞が活性化し、細胞破壊を起こす。
アレルギー性疾患
・アナフィラキシー
アレルギー反応が大きい場合、生体に多大な被害をもたらすことがある。これがアナフィラキシー(急性アレルギー反応)である。
アナフィラキシーで最も重篤な症状がショック状態に陥る場合であり、アナフィラキシーショックとも呼ばれている。
アナフィラキシーショックの治療では気道確保、酸素吸入が行われる。また、血圧が低下しているのでエピネフリン(アドレナリン)が投与される。エピネフリン投与によって血管収縮を起こし、血圧上昇を起させるのである。
アナフィラキシーはペニシリン、ハチ毒、ヘビ毒などによって起こる。
・気管支喘息
気管支喘息は気管支平滑筋の収縮によって起こる。気管支が収縮しているので、気道が狭くなっている。そのため、呼吸しにくくなり喘息を起こすのである。
気管支喘息には肥満細胞(マスト細胞)の他に好酸球も関与している。
・アレルギー性鼻炎、花粉症
気管支喘息の時と同じような化学物質が作用する。肥満細胞(マスト細胞)から遊離するヒスタミン、ロイコトリエン(LT)、血小板活性化因子(PAF)などによって起こる。
アレルギー治療薬
アレルギー治療薬は大きく分けて抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイド薬がある。
抗ヒスタミン薬はH1受容体遮断薬であり、ヒスタミンの作用を抑える。抗アレルギー薬はケミカルメディエーター遊離阻害薬である。ステロイド薬は抗体産生を抑える。
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