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役に立つ薬の情報~専門薬学

妊婦(妊娠・出産)や小児と関節リウマチ

 

関節リウマチの治療を行う上で、薬の使用に注意しなければいけない人たちがいます。そのような人の代表例としては、妊婦(妊娠・出産を希望する人)や小児がいます。

 

妊婦でいえば、かつては関節リウマチを発症している人は妊娠を諦めなければいけないケースがほとんどでした。ただ、関節リウマチを発症したとしても、現在では適切な処置を施すことによって妊娠・出産が可能になっています。

 

 妊婦(妊娠・出産)と関節リウマチ
関節リウマチの症状が強く表れている状態であると、妊娠しにくいと一般的にいわれています。また、症状が強いまま妊娠してしまうと、病気の悪化を招く恐れが高いです。そのため、妊娠・出産を望む人であるほど、適切に関節リウマチを治療することで症状の軽減を行わなければいけません。

 

実際に妊娠した場合では、妊娠中は関節リウマチの症状が落ち着き、出産後に悪化するのが通常の過程です。ただし、妊娠中に症状悪化を招くケースも存在するため、必ずしも妊娠中に症状がおさまるとは限りません。

 

リウマチ治療で最も危惧すべきこととしては、薬の投与による胎児への影響です。妊婦でいえば、薬による催奇形性(胎児の臓器に奇形を生じること)は妊娠初期(14週未満)に起こるといわれています。

 

この期間を過ぎると重大な障害を生じる危険性は少なくなるものの、妊娠中期以降は薬の投与によって羊水の環境が悪化するなどの影響に注意しなければいけません。

 

 

 

以下に、それぞれの薬に関する注意点を記します。

 

 ・NSAIDs
風邪を引いたときの解熱や頭痛の痛み止めなど、解熱鎮痛剤として多用されるNSAIDsは関節リウマチの治療でも使用されます。ただ、NSAIDsは妊娠後期(28週以降)の使用が禁忌です。

 

これは、NSAIDsを使用することで胎内環境の悪化を招く恐れがあるからです。NSAIDsは使用頻度の高い医薬品であるため、関節リウマチに限らず妊婦への投与に注意すべき薬です。

 

 ・ステロイド
炎症を強力に抑えるステロイドは妊娠中でも使用されることのある医薬品です。ただ、胎児への影響を最小限に抑えるため、ステロイドの中でも比較的作用の弱いプレドニゾロン(商品名:プレドニン)が用いられます。

 

プレドニゾロンは胎盤を通過するときに、その作用のほとんどを失ってしまいます。そのため、胎児への影響をほとんど心配せず、安全に使用できる医薬品の一つです。

 

 ・抗リウマチ薬
抗リウマチ薬として多用されるメトトレキサート(商品名:リウマトレックス)は、催奇形性や先天異常などを疑う報告がされています。そのため、メトトレキサート服用中は避妊しなければいけません。授乳中の服用も禁忌です。

 

妊娠を計画する場合、3ヶ月前からメトトレキサートの投与中止が推奨されています。他の薬に切り替えることにより、関節リウマチの症状を安定させるのです。

 

メトトレキサート以外の抗リウマチ薬であれば、ブシラミン(商品名:リマチル)やサラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジン)などが胎児への影響が少ないと考えられています。

 

 ・生物学的製剤
関節リウマチの症状を劇的に改善させる生物学的製剤ですが、妊婦に対しても安全に使用できるという特徴があります。

 

TNF阻害薬であるインフリキシマブ(商品名:レミケード)、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)、エタネルセプト(商品名:エンブレル)などは、世界中で妊婦への使用実績があります。100%ではないものの、胎児へ安全な薬として知られています。

 

 

 

なお、妊娠中に関節リウマチの症状が悪化した場合は「ステロイド(プレドニゾロン)の増量」が基本です。ただ、それでも症状が改善しない場合は生物学的製剤の使用を検討することがあります。

 

産後であれば、授乳中に服用しても問題ないと考えられる抗リウマチ薬を服用したり、生物学的製剤を使用したりします。こうして、病気の症状を抑えながら妊娠・出産を行います。

 

 小児と関節リウマチ
子供でもリウマチを発症することがあります。16歳未満で発症した関節リウマチを若年性特発性関節炎といいます。このときの症状としては、「朝に起き上がれない(体が動かない)」「関節が重く、痛みがある」「体がだるくて熱が出る」などがあります。

 

これら小児のリウマチとしては、主に関節へ症状が表れる「関節型」と全身に炎症が起こる「全身型」の2種類があります。

 

関節型では、膝や足に症状を生じることが多いです。大人で起こる関節リウマチと似ており、8歳以上の女児が多く発症します。一方、全身型では熱がでるようになり、体や手足に発疹が表れるようになります。このような小児に起こるリウマチの発症頻度としては、約1万人に1人であるといわれています。

 

関節型の治療を行う場合、抗リウマチ薬(メトトレキサート)やNSAIDsが主に使用されます。これらの薬で症状が改善しない場合、生物学的製剤を用いることがあります。ステロイドは補助のために使用されます。

 

リウマチによる炎症が続くと、おとなで起こる関節リウマチと同じように関節破壊などが進行していきます。そのため、できるだけ早期に病気の治療を開始しなければいけません。素早い治療によって、小児の成長や日常生活への影響を最小限に留めながら症状を抑えるようにするのです。

 

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