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錐体外路症状、ウェアリング・オフ現象、ジスキネジアの症状

 

パーキンソン病では錐体外路症状やウェアリング・オフ現象、ジスキネジアなど、意味不明な言葉が数多く見られます。そのため、これらの言葉を理解することでパーキンソン病に関する認識が飛躍的に高まります。

 

そこで、これらの言葉を理解すると共に、パーキンソン病のより詳しい病態について解説していきます。

 

 錐体外路症状
パーキンソン病では脳内の大脳基底核に存在する黒質の細胞が減少することで、ドパミンが減っていきます。主にこの大脳基底核に障害が起こることによって表れる症状が錐体外路症状です。

 

つまり、黒質などが関係している脳の部位に障害が起こることによって錐体外路症状が表れます。これら「黒質が関わる脳の部位の障害」によって起こる症状のため「錐体外路症状 ≒ パーキンソン病によって表れる症状」と考えれば良いです。

 

そのため、錐体外路症状としてはパーキンソン病に見られる運動障害があります。

 

 錐体外路症状

 

 ウェアリング・オフ現象
一日の中でパーキンソン病の症状が良くなったり悪くなったりする現象をウェアリング・オフ現象と呼びます。パーキンソン病を治療するとき、ドパミンの投与が基本です。

 

これは、パーキンソン病患者にレボドパを投与すると、ほとんどの人で症状が改善するからです。そのため、レボドパの投与によって日常生活に支障が出ないレベルを維持することができます。

 

しかし、レボドパの投与期間が数年と長くなるに従って、レボドパの効果も短くなっていきます。そのため、「レボドパの効き目によってパーキンソン病の症状が抑えられているONの状態」と「レボドパの効果が弱くなって、パーキンソン病の症状が表れてしまうOFFの状態」が繰り返されるようになります。

 

この現象がウェアリング・オフです。一日の中で症状の改善と悪化を繰り返すため、パーキンソン病患者の日常生活に大きな支障が出てしまいます。

 

 ウェアリング・オフ現象

 

ウェアリング・オフでは、薬を服用した後でパーキンソン病の症状が軽減されています。しかし、時間が経過して薬の効き目が弱くなってくると症状が表れてしまいます。

 

このようなウェアリング・オフ現象はレボドパを服用し始めて5年後に約30%、7年後に約50%の患者さんで表れるとも言われています。そのため、パーキンソン病の治療を開始して数年経過した後に体のふるえなどの症状を感じた場合、ウェアリング・オフが表れている可能性もあります。

 

 オン-オフ現象
ウェアリング・オフ現象が表れてより症状が不安定になってくると、薬の服用時間とは関係なしにONの状態(薬が効いて症状が良くなっている状態)とOFFの状態(薬が効かずに症状が悪くなっている状態)を繰り返すようになります。

 

この現象をオン-オフ現象と呼びます。オン-オフ現象が表れるようになると、薬を飲んだかどうか関係なくスイッチが切り替わるように症状の改善と悪化が繰り返されます。

 

 ジスキネジア

 

パーキンソン病治療のためにレボドパを数年に渡って長期間服用するとウェアリング・オフ現象やオン-オフ現象を起こすようになります。

 

このとき、レボドパの長期服用はジスキネジアという症状も引き起こします。

 

ジスキネジアとは、意識せずに体の一部が勝手に動いてしまう症状のことを指します。

 

例えば、「手足のジスキネジア」では勝手に手や足、膝がくねくねと動いてじっとしていられなくなります。

 

 ジスキネジア

 

また、「口のジスキネジア」ではアメをなめているように舌や口が勝手に動いてしまいます。

 

レボドパを長期間服用するとウェアリング・オフ現象が表れやすくなります。そして、意思とは関係なく体が動いてしまうジスキネジアはウェアリング・オフ現象やオン-オフ現象のある患者さんに多いです。

 

つまり、レボドパを長期間服用するとウェアリング・オフ現象だけでなく、ジスキネジアも表れやすくなります。

 

ウェアリング・オフ現象では薬の効果が弱くなってパーキンソン病の症状が表れる「OFFの状態」が問題となります。それに対して、ジスキネジアでは薬の効果が効きすぎている場合で症状が表れます。

 

なお、「勝手に頭(口)や手足が動くジスキネジア」と「手や足がふるえる振戦」の症状は似ていますが、この二つは異なります。ジスキネジアは「レボドパが効きすぎている時」に表れますが、振戦は「レボドパが効いていない時」に表れる症状です。

 

 ウェアリング・オフ現象の経過
これまで説明してきた通り、レボドパを長年に渡って使用し続けると薬の効果が短くなるウェアリング・オフ現象や勝手に体の一部が動いてしまうジスキネジアなどの症状が表れやすくなります。さらに、ウェアリング・オフ現象は治ることがなく、時間経過と共にその症状も悪化してしまいます。

 

パーキンソン病を治療し始めた初期の段階では、レボドパによる治療域が広いです。そのため、治療の初めではレボドパによってパーキンソン病を大幅に改善させることができます。

 

しかし、レボドパを長年に渡って投与し続けるとレボドパの治療域が少しずつ狭くなっていきます。すると、さまざまな問題が出てきます。

 

 ウェアリング・オフ現象の経過

 

治療域が狭くなると、ウェアリング・オフとしてレボドパが効いていないOFFの状態が表れてしまいます。また、レボドパが効きすぎることでジスキネジアの症状が表れるようになります。これらの症状は自然に治ることはないため、早めの対策が必要になります。

 

ここまで述べた内容が、パーキンソン病による錐体外路症状、ウェアリング・オフ現象、ジスキネジアの症状です。これらの単語の意味や病態、メカニズムを学べば、パーキンソン病への理解が飛躍的に進むはずです。

 

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