高血圧の生理学(循環器系と泌尿器系)
高血圧を理解する前に、高血圧に関係する体の仕組みを学ぶ必要があります。高血圧は血液や血管が関わっている疾患であるため、血管に関して知識を深めなければいけません。
また、意外かと思うかもしれませんが腎臓について理解することも重要です。なぜなら、腎臓は血圧上昇と密接に関係しているからです。腎臓からは血圧を上昇させるホルモンが分泌され、水分が調節されることによっても血圧が上昇します。
そこで、「血管」と「腎臓」に関する生理学を学習していきます。
血管の生理学
栄養や酸素を細胞まで届け、老廃物や二酸化炭素を運搬するものとして血液があります。この血液は全身に張り巡らされている血管を通ることで、生命活動に必要な物質を届けています。
そして、これらの流れによって物質や熱を体中に満たしています。この流れを循環と呼びます。そのため、血液の流れや組成に関わる器官を総称して循環器系と言います。
血管の種類 |
特徴 |
動脈 |
・心臓から全身に栄養や酸素を運ぶための血管 |
静脈 |
・全身からの老廃物や二酸化炭素を運ぶための血管 |
冠状動脈 |
・心臓自身に栄養や酸素を届けるための血管 |
心臓は体全体に血液を送ることで栄養や酸素を届けており、一分間に約5リットルの血液が心臓から送り出されます。
しかし、心臓自体は「心臓の中に存在する血液」から酸素や栄養を受け取ることはできません。そこで、心臓の外側には心臓自体を養うための特殊な血管が存在します。
これを冠状動脈と呼び、この血管が心臓に酸素や栄養を届けています。
動脈硬化などで冠状動脈が細くなり、心筋への酸素が不足すると激しい胸痛や心筋虚血が起こります。これが狭心症です。
また血の塊である血栓などによって冠状動脈が詰まってしまうと、詰まった部分より後の血液の流れが完全に止まってしまいます。この状態が心筋梗塞です。
腎臓の生理学
腎臓の主な作用は肝臓で作られた尿素を体外に排出することです。これらの尿素は尿として尿管、膀胱、尿道を通って排出されます。この尿の生成、排泄に関わる器官を泌尿器系と言います。
・腎臓の構造
腎臓はそら豆の形をした臓器であり、それぞれ左右一つずつの合計2個存在します。一個の重さは約100gです。
この腎臓には糸球体という毛細血管があります。毛細血管とは、動脈と静脈を繋いでいる細い血管のことです。この毛細血管を通ることによって、老廃物を体の外に排泄するための尿が作られます。
その後、糸球体を通ることで生成した尿は尿細管と呼ばれる管を通ります。このとき、体に必要な水分や糖質などは尿細管から再吸収されます。
腎臓によって最初に尿が作られる時、老廃物以外にもアミノ酸や糖質などの栄養素も含んだまま尿が作られます。そのため、これら私たちの体に必要な栄養素は再び体の中へと吸収されます。これが再吸収です。この再吸収が尿細管で行われます。
尿細管で再吸収される物質はとしては水分、糖質、アミノ酸、ナトリウムなどがあります。これらの物質が再吸収によって体の中に入り、再び利用されます。
このとき、ホルモンによってナトリウムの再吸収が促されることがあります。このように、尿細管へ働くことでナトリウムの再吸収を促すホルモンとしてアルドステロンがあります。
高血圧での非薬物療法(食事療法・運動療法)
高血圧や糖尿病などを初めとする生活習慣病の治療を行う上で基本となる方法が食事療法と運動療法です。生活習慣の乱れが原因で病気を発症するため、この食事や運動などによって生活習慣を改善することが最も重要です。
生活習慣を改善することができれば高血圧だけでなく糖尿病、脂質異常症などの病気も改善することができ、合併症の予防に繋げることができます。
これら高血圧は食べ過ぎや飲みすぎ、喫煙、睡眠不足などの因子が深く関わっています。既に薬を服用している人であっても、生活習慣を改善すれば血圧を下げることができます。
生活習慣の改善項目
項目 |
目標 |
減塩 |
・塩分摂取は血圧を上げる要因となる |
運動 |
・有酸素運動を定期的に行う(30分以上) |
禁酒 |
・習慣的に大量に飲み続けることにより、血圧が上がる |
禁煙 |
・ニコチンは血管を収縮させ、血圧を高める |
ストレス |
・ストレスが溜まることで血圧が高まる |
気温の変化 |
・気温が低いと血管が収縮し、血圧が高くなる |
入浴の温度 |
・熱いお湯につかると、血圧が急激に上昇する |
睡眠 |
・睡眠不足であると、夜間の血圧だけでなく翌日の血圧も高くなる |
これらの病気の治療には食事療法と運動療法が基本ですが、現実問題では高血圧や糖尿病など生活習慣病患者は食事療法や運動療法を行わない人が多いです。
そもそも、日頃から食事や運動に気を付けている人であれば、これら生活習慣病を発症していないはずです。これら病気に対する反省が薄いため、薬が必要となります。
そのため、本当に食事内容を考えて運動まで行っているのであれば薬は不要です。実際には食事や運動に気を止めない人が多いため、薬による治療が必要となります。
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