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役に立つ薬の情報~専門薬学

高血圧の分類:収縮期血圧と拡張期血圧

 

血圧とはその名の通り、血管にかかる圧力のことです。生命維持のため、血管にある程度の圧力があることは重要です。

 

例えば、アレルギー反応の一種であるアナフィラキシーショックを起こした場合、血圧が急激に下がることでショック状態に陥ります。

 

また、低血圧症であれば「体がだるい」、「耳鳴りがする」などの症状が表れます。このように正常な範囲で血圧が保たれていることはとても重要です。

 

ただし、その逆に血圧が高すぎると高血圧としてさまざまな血管障害が表れてしまいます。

 

例えば、心臓の仕事量が増えることで心臓が肥大します。また、動脈が硬くなる動脈硬化が起こります。脳の血管に影響を与えることで脳卒中などを引き起こすリスクにもなります。このように、高血圧状態であると生命が脅かされてしまいます。

 

血圧は低すぎるのでも高すぎるのでもなく、正常な状態に保つことが重要となります。

 

収縮期血圧と拡張期血圧

 

血液は心臓のポンプ機能によって、全身へと血液が送られます。このとき、心臓が収縮しているか拡張しているかによって、当然ながら圧力が変わってきます。

 

まず初めに、心臓が収縮している時を考えます。心臓が収縮している時は心臓から血液が送り出されます。心臓に溜まっていた血液が一度に血管へ送り出されるため、血液が血管を押す圧力が高まります。

 

つまり、血圧は高い状態となります。

 

このように、心臓が収縮した時に指し示す最大血圧収縮期血圧と呼びます。最も高い血圧であるため、「上の血圧」とも言われます。

 

収縮期血圧

 

それに対し、心臓が拡張しているということは、それだけ心臓の中に血液が多く流れ込んでいるということになります。

 

血液が心臓に入り込んでくるので、各血管に分布する血液量は減少します。全体の血液が減るため、血液が血管を押す力(圧力)も低くなります。つまり、血圧は低い状態となります。

 

このように、心臓が拡張した時に指し示す最小血圧拡張期血圧と呼びます。最小血圧であるため、「下の血圧」とも表現されます。

 

拡張期血圧

 

高血圧の分類

 

血圧には最も圧力が高い「収縮期血圧」と最も圧力の低い「拡張期血圧」の二種類があります。そのため、高血圧を考える上では収縮期血圧と拡張期血圧の両方を考慮する必要があります。

 

成人における血圧値の分類としては、以下の表のようになります。

 

成人における血圧値の分類

 

このとき、「収縮期血圧が140mmHg以上」または「拡張期血圧が90mmHg以上」のどちらかに該当すると高血圧と診断されます。

 

なお、血圧は一日での変動が大きいです。そのため、同じ日であっても測定する時間によって血圧の値が異なってきます。

 

・至適血圧:理想的な範囲である血圧
・正常血圧:正常な範囲にある血圧
・正常高値血圧:高血圧予備軍であり、生活習慣の改善が必要

 

血圧の日内変動

 

上図に血圧の日内変動の図を示していますが、このように一日での血圧変動は大きいです。

 

そのため、高血圧状態が続いたとしても血圧測定を行うある時点だけ血圧の値が正常であることがあります。

 

この時間に血圧を測定すると、あたかも血圧が正常な値を示しているように見えます。

 

これを、仮面高血圧と呼びます。

 

仮面高血圧では、医療機関で血圧を測る場合は正常な血圧ですが、家庭や職場で血圧を測定すると高血圧の値を示します。仮面を被ったように高血圧状態がマスクされているため、仮面高血圧と言います。

 

この仮面高血圧の反対の意味を持つものとして白衣高血圧があります。家庭・職場など普通に生活している場合では正常な血圧を示すが、診療所などで測定される時に高血圧の状態となってしまう状態が白衣高血圧です。

 

医師や看護師などの白衣を着ている人の姿を見て緊張してしまうことにより、血圧が上がってしまうのです。

 

仮面高血圧と白衣高血圧

 

これら仮面高血圧や白衣高血圧などの症状があるため、家庭などで自ら血圧を測定することが重要となります。

 

高血圧による合併症(脳卒中・心筋梗塞・腎不全)

 

高血圧には「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の二つがあります。

 

本態性高血圧

 

高血圧の中でも原因の特定ができない高血圧を本態性高血圧と呼びます。日本人の約90%がこの原因を特定できない本態性高血圧です。

 

この本態性高血圧の要因としては遺伝や生活習慣が考えられています。「遺伝による高血圧になりやすい体質」や「飲酒・喫煙、塩分の取りすぎなどの生活習慣」が本態性高血圧に関わっています。

 

本態性高血圧

 

二次性高血圧

 

原因が不明である本態性高血圧に対して、原因が明らかな高血圧を二次性高血圧と呼びます。他の病気によって高血圧が起こるため、その原因を治療すれば高血圧も抑えることができます。

 

二次性高血圧の原因としては腎臓の病気、ホルモンの異常、動脈の障害などがあります。

 

二次性高血圧

 

高血圧による合併症と早朝高血圧

 

それでは、なぜ高血圧は悪いのでしょうか。血圧が高いと血管にダメージを与えてしまいます。これによって動脈硬化が起こり、さまざまな合併症を引き起こします。この合併症としては脳卒中や心筋梗塞、腎不全などがあります。

 

ただ単に「血圧が高い」という状態で死に至るわけではありません。血圧が高い状態に付随して起こる合併症によって死んでしまうのです。

 

 

合併症

症状

脳卒中

脳の血管が破れたり(脳出血)、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)する病気です。血圧が高いと脳の血管に負担がかかります。

心筋梗塞

心臓に栄養を届ける冠状動脈が詰まることで起こります。これによって、心筋の一部が死んでしまいます。早急な治療が必要となります。

腎不全

腎臓は尿を作るために必要な器官です。糸球体としての毛細血管への高い圧力状態が続くと、尿を作るためのろ過機能が低下します。

 

腎臓の機能が低下すると「タンパク尿」が出るようになります。さらに症状が進行すると腎不全となり、人工透析が必要になります。

 

早朝高血圧(モーニングサージ)

 

血圧は一日の中で変動が大きいです。少しストレスを感じた時や緊張している時などであっても、血圧は容易に上昇してしまいます。一般的に血圧は夜寝ているときに低く、朝起きてから徐々に血圧が高くなっていきます。

 

ただし、人によっては目覚めた時に血圧が急激に上昇して高血圧となる患者さんがいます。このような病態を早朝高血圧と言います。

 

早朝高血圧(モーニングサージ)

 

高血圧によってリスクが高まる疾患として脳卒中や心筋梗塞などがあります。そして、この発作は早朝から午前中で多く発生します。つまり、これらの疾患が多く発生する時間帯と早朝高血圧の時間は重なります。

 

そのため、「朝の急激な血圧上昇は脳卒中や心筋梗塞などと因果関係がある」と考えられています。

 

薬によって昼の血圧をコントロールできていたとしても、朝起きてすぐの血圧まで管理できていないことがあります。そのため、昼間の血圧だけでなく朝の血圧にも注意する必要があります。

 

なお、高血圧患者によっては夜寝ている時に血圧が高くなる「夜間昇圧型」の患者さんも存在します。

 

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