脂質はどのようにして運ばれるか(リポタンパク質)
コレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)は「あぶら」の一種です。そのため、そのままの状態で水に溶けることはありません。
私たちを構成している成分で最も多い物質は水です。そして、血液も同じように水で満たされています。そのため、油であるコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)が血液中に存在することはできません。
そこで、水の中を油が移動できるように乗り物を用意します。この乗り物はタンパク質の一種であり、アポタンパク質と呼ばれます。アポタンパク質自体は水に溶けることができます。
アポタンパク質はコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)を中に閉じ込めることによって、脂質としての油を抱えながら水に溶け込むことができます。
このアポタンパク質の中にコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)が閉じ込められている状態のタンパク質を特にリポタンパク質と呼びます。
なお、このリポタンパク質はその大きさや構成される脂質の成分によっていくつかの種類に分けられます。この中でも主にキロミクロン、VLDL、LDL、HDLの4種類があります。
リポタンパク質 の種類 |
主な構成成分 |
特徴 |
キロミクロン |
ほとんどが トリグリセリド(中性脂肪) |
・食事からの脂質を肝臓へ運ぶ |
VLDL |
トリグリセリドが主体 (約50%) |
・肝臓で合成されて血液中へ分泌 |
LDL |
コレステロールが約50% |
・各組織にコレステロールを運ぶ |
HDL |
リン脂質が約50% コレステロールが約30% |
・細胞や血管のコレステロールを肝臓へ回収 |
・洗剤とリポタンパク質の共通点とは
洗濯物を洗う時、油の汚れを落とすために洗剤を入れます。この理由としては、当たり前ですが汚れを落としやすくするためにあります。
服に付いた汚れの多くは体からの皮脂です。皮脂の主な成分は油であるため、水洗いでは汚れを落とすことが難しいです。なぜながら、水と油は馴染まないからです。
そこで、この汚れを落とすために使用される物質が洗剤です。洗剤の主成分は界面活性剤とも呼ばれます。このとき、界面活性剤の特徴としては「水と油の両方に馴染みやすい」ということがあります。
界面活性剤の構造を見てみますと、界面活性剤には「水に溶けやすい部分」と「油に馴染みやすい部分」が一つの構造の中に含まれています。この水と油の両方に溶けることができる性質によって、洗剤として油汚れを落とすことができます。
通常、油は水に溶けません。ここに界面活性剤を水の中に溶かすと、界面活性剤の「水に溶けやすい部分」が水とよく親和し、「油に馴染みやすい部分」が油汚れとくっつきます。これによって、油を水の中に浮かせることができるようになります。
そして、リポタンパク質もこれと同じ考えによって成り立っています。
コレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)などの油は水に溶けません。しかし、リポタンパク質という形であれば水に溶けることができ、血液中を巡ることができます。
これは、脂質を載せるアポタンパク質が界面活性剤と同じように水と油の両方に溶けやすいために可能となります。
水に溶けにくい脂質をリポタンパク質として中に閉じ込め、その外側を水に馴染みやすくしているために「脂質を載せたまま水の中に溶ける」という事が可能となります。
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