痔:痔が発生する仕組み
痔はとても身近な病気です。その患者数は三人に一人とも言われており、自分が痔であると気づいていない人はとても多いのです。
痔で命を落とすことはありません。痔は良性の疾患だからです。しかし、そのまま放置すれば悪化することがあります。痔は早めに対処しておくことが大切なのです。
肛門の構造
痔を理解するためには、肛門の構造を理解していなければいけません。実は、肛門は二つの全く異なる神経によって支配されているのです。肛門の奥側は直腸と同じ神経であり、お尻側の方は皮膚と同じ神経です。
このように肛門は複雑な構造をしており、とてもデリケートな部分なのです。
それでは胎児が母親の胎内で肛門を形成していく様子を見て見ましょう。これによって、なぜ異なる神経が存在しているかを理解できると思います。
胎児において、初期の肛門はただのくぼみです。成長に従って腸側と皮膚側のくぼみが大きくなり、最終的には繋がります。これによって便の通り道ができるのです。
なお、腸と皮膚が結合した部分はギザギザの状態で成長します。
痔の三大疾患
痔は「痔核」、「裂肛」、「痔ろう」の三つに分けることができます。痔をそのままにしておくと、痛みや出血に悩まされることになります。
なお、出血しているからといって、すぐに痔であると決め付けるのは大変危険です。他の病気である可能性もあるからです。例えば大腸がんです。肛門から出血しているため「痔」と思い込んでいたら、実は「大腸がん」だったということはよくあります。
そのため、痔で病院に通うのは「痔に対処する」という理由だけでなく、「本当に痔かどうかを確かめる」という重要な意味も含まれているのです。
・痔核(いぼ痔)
痔核には「腸側にできる痔核」の内痔核と「お尻側にできる痔核」の外痔核があります。痔核のほとんどは内痔核です。
肛門には弾力のあるクッションがあります。しかし、排便時のいきみによって肛門に負担がかかると、クッションの部分がブヨブヨになってしまいます。
この部分が膨らんでくると出血などを伴います。さらに進行するとイボが大きくなり、排便時にイボが肛門の外にでてくることもあるのです。
内痔核は痛みを伴うことはありませんが出血しやすいです。しかし、内痔核が進行して肛門の外にでた痔核が腫れあがると、激しい痛みと伴います。ここまで進行すると手術が必要になる場合があります。
多くの痔核は痛みがないですが、皮膚側にイボができると激しい痛みを伴います。これが外痔核です。いきむことでお尻に力を入れると症状が悪化するので気をつける必要があります。
・裂肛(切れ痔、裂け痔)
皮ふ側の肛門には弾力性が弱く、血流があまり良くない部分があります。この部分が切れることで裂肛になります。
裂肛の一番の原因が便秘です。便秘になると便の水分が抜けるため、かたい便となります。このかたい便をいきみによって無理に出そうとすると、皮膚が裂けてしまいます。
裂肛は激しい痛みを伴うため、痛みを恐れて排便を我慢してしまいます。すると、また便の水分がなくなることで便がかたくなってしまい、痔の悪化につながるという悪循環になってしまいます。
・痔ろう(あな痔)
肛門の中の腸と皮膚のつなぎ目部分には小さなくぼみがあります。 普通、便はそのまま通過します。しかし、下痢で水様便が勢いよく出ると、このくぼみに便が詰まり、細菌に感染します。
すると炎症・化膿を起こし、肛門の周囲が腫れあがり痛みを伴います。これが痔ろうの前段階です。
この状態のまま放っておくと、膿が出口(二次口)を見つけて排出されます。しかし、肛門の小さなくぼみから膿が排出された出口へと続く一本のトンネルは残ってしまいます。これが痔ろうです。
痔の市販薬
痔の薬は大きく分けて坐薬、軟膏、内服薬の3つに分けることができます。これらの薬は効果を発揮させるために、使い方を理解していないといけません。
ただし、薬を使用するだけでは痔は治りません。痛みや出血を抑えるなどの一時的なものだからです。
・坐薬
この薬は紡錘形をした固形の薬で、肛門内に挿入します。肛門内に入ると溶け出して効果を発揮します。痛み止めや止血の作用があり、痔の薬として広く使われています。
また、溶けた成分が肛門の粘膜をカバーするので排便をスムーズに行うことができます。
・軟膏(塗り薬)
軟膏には「肛門に塗るタイプ」と「チューブの先を肛門に差し込んで薬を注入するタイプ」の二つがあります。効果は坐薬と同じように痛み止めや止血で、肛門への負担を減らします。
痛みのために坐薬を肛門に挿入できないときは、軟膏を使うのが良いでしょう。
・内服薬(飲み薬)
内服薬にはかたい便をやわらかくする、炎症を抑えるなどの効果があります。
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