抗原と抗体(感作、抗体の種類)
アレルギーは私たちの体にもともと備わっている免疫機構によって起こる病気です。
感染症など細菌やウイルスから身を守るために免疫はとても重要な役割を果たしています。他にも、免疫系はがん細胞を殺す作用も有しています。そのため、生きていくために免疫は必要不可欠な機構の一つです。
しかし、この免疫が過剰に反応してしまうと悪影響をもたらすようになります。免疫が病原菌やがん細胞だけを攻撃してくれるのであれば問題ありませんが、この免疫が過剰反応して無関係な物まで攻撃してしまうことがあります。
これによって、アレルギー反応が引き起こされます。
抗原と抗体
感染症から回復するために免疫系が大切になります。そして、この時に重要となる物質として抗体があることはご存知かと思います。抗体は細菌やウイルスなどに対抗するための武器となります。
例えば、麻疹(はしか)や風疹(ふうしん)などの感染症に一度罹ると、この病気を二度発症することはまれだとされています。この理由ですが、一度感染症に罹るとその病原微生物に対する免疫を獲得することができるためです。
もっと詳しく言えば、抗体が既に出来上がっています。
一度目の感染で抗体が作られているため、二度目に病原微生物が侵入してきたとしてもあらかじめ作られていた抗体によって防御することができます。
この原理を利用した感染症への予防方法がワクチンであり、あらかじめ抗体を作らせておくことで免疫を獲得することができるのです。
なお、このときに獲得する免疫反応としては、最初の反応よりも二度目の反応の方が素早くて強い反応を示します。つまり、何回も触れるほど免疫応答が強くなっていきます。
例えば、ワクチンを一度接種するよりも二度接種した方がより強い免疫を得ることができます。これは、触れる回数が多いほど免疫応答が強くなるためです。
このとき、「免疫系が作り出す病原微生物に対抗するための物質」を抗体と言いますが、この抗体が標的とする物質を抗原と呼びます。
抗原としては様々な物質が該当します。例えば、感染症から回復するために作られる抗体は病原微生物に対して作用します。そのため、この時の抗原は病原微生物となります。
他にも、花粉症はスギ花粉に対して抗体が作用することで引き起こされます。この時の花粉症における抗原はスギ花粉になります。このように、抗体がターゲットとする物質が抗原になります。
なお、病原微生物やスギ花粉以外にも、食物が抗原になることもあるます。この時は食物アレルギーとして症状が表れます。
つまり、ここまでの話から「抗原に何回も触れれば触れるほど免疫応答が強くなる」ということや「抗原には多くの種類がある」という事が分かります。
感作とは
アレルギーがなぜ起こるかと言うと、本来は無害な物質に対して免疫系が反応してしまうために発生します。病原菌を免疫系が攻撃してくれるのであれば問題ありませんが、卵や牛乳、小麦、ダニ・カビなどを免疫系が攻撃し始めるとアレルギー反応が起こります。
このときは卵や牛乳、小麦、ダニ・カビなどが抗原となります。また、スギ花粉を免疫系が攻撃し始めると花粉症として症状が表れます。この時はスギ花粉が抗原です。
前述の通り、抗原に触れる機会が多いほど免疫応答が大きくなります。つまり、花粉症であれば抗原であるスギ花粉に触れる回数が多いほど大きい免疫応答となります。そして、ある一定の免疫応答の値を超えた時に花粉症を発症します。
これは卵アレルギーや小麦アレルギーなどであっても同様です。
つまり、アレルギー反応が表れるまでには「抗原に何回か触れることによって少しずつ免疫応答が大きくなっていく期間」が必要になります。このアレルギーが起こるまでの準備状態を感作(かんさ)と言います。
このような感作が起こることによって、アレルギー反応を発生させるための準備が整っていくことになるのです。
抗体の種類
病原微生物から体を守るために抗体が重要な役割を果たしますが、免疫の過剰な反応であるアレルギー反応にも抗体が関わっています。このように免疫で重要となる抗体ですが、抗体にはその種類によって大きく五種類に分けることができます。
抗体は以下のような種類があります。
抗体の名称 |
IgM |
IgG |
IgD |
IgE |
IgA |
分子量(万) |
100 |
16 |
18 |
20 |
16 (分泌型39) |
胎盤通過 |
× |
○ |
× |
× |
× |
重要なのは、「これら抗体の詳細な違いを覚える必要はない」ということです。そうではなく、「抗体にはいくつか種類がある」という事を認識できれば問題ありません。
その中でも、アレルギーを理解するためにはIgEという抗体を理解できれば良いです。IgEは抗体の名称であるため、例えば「IgEの関与によって……」という文章があれば「抗体が関与している」という事が分かります。
このように、「IgEという単語が抗体を意味している」という事柄を認識できることが最も重要となります。
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