プロスタグランジン(PG)と痛みの閾値
より詳しいプロスタグランジン
プロスタグランジンはいくつもの種類があります。そのため、プロスタグランジンの種類を学ぶだけでも一度に多くの薬を学ぶことができます。
それだけでなく、「なぜ解熱鎮痛剤としてのNSAIDsを服用することによって副作用が起こるか」まで理解することができます。
以下にプラスタグランジン合成のより詳しい図を載せます。
また、以下にそれぞれの役割についても記します。
このように、シクロオキシゲナーゼ(COX)によって合成されるプロスタグランジンには様々な種類があります。また、それぞれ違った作用をもつことが分かります。
その中でPGE2(プロスタグランジンE2)に着目すると、発熱や痛みを増強させる作用を持つことが分かります。また、PGI2(プロスタグランジンI2)でも痛みを増強させる作用があります。
NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害する作用があるため、これらPGE2やPGI2の合成が抑制されることによって解熱作用や鎮痛作用を得ることができます。
それぞれのプロスタグランジンの役割を覚える必要はありませんが、このように「プロスタグランジンには様々な種類がある」、「プロスタグランジンが痛みや発熱に関与している」という事を理解してください。
プロスタグランジンと痛みの閾値
PGE2(プロスタグランジンE2)やPGI2(プロスタグランジンI2)は痛みを増強させる物質ですが、より正確に言えば「痛みに対する反応性を高める物質」となります。
プロスタグランジン単独で痛みを生じさせるのではなく、痛みを感じやすくさせるという訳です。この概念を理解するためには、「閾値(いきち)」という言葉を学習する必要があります。
閾値とは、ある一定以上の刺激が加わった場合にのみ反応する限界値を指します。例えば、以下のように閾値が設定されている場合であると、左図では痛みを感じません。
痛みのシグナルが発生したとしても、このシグナルの強さが閾値を越えていないので痛みを感じないのです。
しかし、これが上の右図になると痛みを感じるようになります。
右図では二ヶ所で「痛みのシグナルが閾値を越えている」という事が分かります。つまり、閾値を越えた部分でのみ痛みを感じるようになります。
このように、「痛み」を感じるためにはある一定以上の刺激がなければいけません。この時、プロスタグランジンはこの閾値を下げるように作用します。
痛みを感じるようになるためには二つのパターンが考えられます。一つは痛みのシグナル自体が強い場合です。そしてもう一つは、痛みを感じるボーダーラインである閾値が下がる場合です。
つまり、同じ刺激であっても閾値が下がっている状態であると、それまで何も感じなかったような小さい刺激であっても痛みとして感じるようになります。
この様子が下図にある右の状態です。
左図と右図を比べると、痛みのシグナルの強さ自体は同じです。しかし、右図では閾値が下がっているために痛みを感じるようになっています。
このように、閾値を下げる作用をもつ物質としてプロスタグランジンがあります。
プロスタグランジンそれ自体は痛みを引き起こさせる作用はありませんが、痛みを感じやすくさせることでより痛みを際立たせるように働きます。NSAIDsは「プロスタグランジンによる閾値を下げる作用」を抑えることによって、痛み止めとしての役割を発揮します。
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