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役に立つ薬の情報~専門薬学

炎症と鎮痛剤(NSAIDs)

 

痛みを考える上で炎症がとても重要になります。

 

「怪我などによって傷を負った場合」や「細菌感染による組織修復」に炎症が関わっています。これら炎症は免疫による正常な反応です。しかし、この炎症が過剰になると自分自身の組織まで破壊してしまいます。

 

組織破壊が起こると、当然ながら痛みが起こります。そのため、これら炎症反応を抑える物質は痛み止めの薬になることが分かります。

 

なお、炎症反応の主な特徴としては以下のようなものがあります。

 

炎症の5大徴候

特徴

発赤(赤くなる)

炎症部位の血管が拡張し、
血流量が増えることによって赤くなる

発熱(熱が出る)

脳内に存在する体温調節する部位(体温調節中枢)に働き、
体の熱を上げるように作用する

腫脹(腫れる)

炎症が起こっている部位に体液などが流れ込み、
腫れてしまう症状

疼痛(痛みがある)

炎症部位では痛み物質が産生され、
脳で痛みを感じやすくさせる

機能障害

(例:痛くて腕を動かせない)

上記四つの症状によって体に障害が起こる

 

解熱鎮痛剤とはその名の通り、熱を下げたり痛みを抑えたりする薬です。

 

炎症の特徴を見ると、炎症によって発熱や疼痛などの反応を起こすことが分かります。かぜをひいた時に熱が出ますが、これは病原菌から身を守るために炎症反応が起こっているためです。

 

他にも、関節炎などによって炎症が起こると痛みを生じます。

 

つまり、これら炎症を抑えることができれば発赤や発熱、疼痛などを抑えることができます。そして、これら炎症を抑える強力な薬としてステロイド性抗炎症薬があります。

 

しかし、ステロイドは副作用が強いため、ちょっとした時の鎮痛剤としては利用されません。そこで、「ステロイドより抗炎症作用や鎮痛作用は小さいが、副作用も少ない薬」を利用します。

 

このような薬として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)があります。NSAIDsの正式名称は「Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs」です。直訳すると「ステロイドではない抗炎症薬」となります。

 

 抗炎症薬の種類

 

つまり、抗炎症薬として強力なものにステロイドがありますが、NSAIDsはそのステロイド以外の薬と考えることができます。

 

※NSAIDsは「エヌセイズ」と呼びます

 

 NSAIDsとプロスタグランジン
炎症を抑えることができれば熱を下げたり痛みを抑えたりすることができます。この時、炎症が起こっている部位で放出される物質としてはヒスタミンやブラジキニン、ロイコトリエン、プロスタグランジン(PG)などがあります。

 

ただし、ここでは炎症部位で放出される物質としてプロスタグランジン(PG)だけを認識しておけば問題ありません。このプロスタグランジンには体の熱を上げたり、痛みを増大させたりする作用があります。

 

つまり、「炎症が起こると発熱を促し、痛みを引き起こすプロスタグランジン(PG)が放出される」という事が理解できれば良いです。

 

 炎症部位で放出される物質:プロスタグランジン(PG)

 

プロスタグランジンが存在するために体の熱が上昇し、痛みを感じるようになります。そのため、解熱作用や鎮痛作用を得るためには、これらプロスタグランジンの働きを阻害すれば良いことが分かります。

 

このような作用を持つ薬が非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。NSAIDsは解熱鎮痛剤(熱を下げたり痛みを抑えたりする薬)として利用されます。これはプロスタグランジンの産生を抑えることによって、これらの作用を得ることができます。

 

※キーワード:プロスタグランジン(PG)

 

 COXとプロスタグランジン
例えば風邪をひくと炎症が起こり、プロスタグランジン(PG)が産生されます。これによって体の熱が上昇します。

 

そのため、これらプロスタグランジンが作られる過程を抑えることができれば、熱を下げることができるはずです。

 

同じように炎症によって痛みが起こっている場合、プロスタグランジンの産生を阻害することによって痛みが鎮まるようになります。このとき、プロスタグランジンは下図のような過程を経て産生されます。

 

 プロスタグランジンとCOX(シクロオキシゲナーゼ)の関係

 

かなり簡略化した図になりますが、プロスタグランジン合成ではシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の存在が重要になります。この酵素が存在することによって、プロスタグランジンが作られるようになります。

 

図にあります通り、アラキドン酸という物質にシクロオキシゲナーゼ(COX)が作用することによってプロスタグランジンが合成されます。

 

解熱鎮痛剤であるNSAIDsはプロスタグランジンの産生を抑制しますが、まさにこのNSAIDsの作用機序がシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害です。

 

 NSAIDsによるCOX(シクロオキシゲナーゼ)の阻害

 

発熱や痛みを引き起こすプロスタグランジンはシクロオキシゲナーゼ(COX)によって作られます。つまり、シクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを抑えてしまえばプロスタグランジンが合成できなくなります。

 

このように、NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを阻害することによって、プラスタグランジン合成を抑制します。この結果として、発熱や痛みが抑えられます。

 

これが、NSAIDsに解熱鎮痛作用がある理由です。

 

 ※キーワード:シクロオキシゲナーゼ(COX)

 

 炎症は悪いものではない
炎症が引き起こされると痛みを伴ったり熱を出したりします。この炎症反応が強く表れると、体にとって悪影響となります。そのため、「炎症 = 悪いもの」と考えられがちです。

 

しかし、炎症は免疫反応にとってとても重要な役割を担っています。  細菌感染などによって炎症が起こることで組織に障害が起こりますが、これによって病原菌が物理的に感染部位以外の場所に広がるのを抑えることができます。

 

また、炎症は感染部位に白血球を呼び寄せる作用もします。これによって、感染症の悪化を防ぐことが出来ます。

 

 炎症による免疫反応

 

炎症が酷くなるのを抑えることは重要です。

 

しかし、必要な炎症まで抑えてしまうと、より症状の悪化を引き起こす可能性があります。

 

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