解熱鎮痛剤の基礎
痛みは肉体的に苦痛を与えます。例えば、手を骨折してしまうとギブスをはめながら生活しなければいけません。これは、少しでも手を動かしてしまうと骨折部位に痛みが起こるためです。
そのため、これらの痛みを取り除くことができればより快適な生活を送ることができるようになります。
ただし、必ずしも痛みは悪い要素ばかりではありません。痛みの感覚がなければ、私たちの体はすぐにボロボロの状態になってしまいます。
先ほどの骨折の例であれば、痛みを感じなければ骨折しているにも関わらず手を動かして無茶をしてしまいます。「安静にして骨折部位を治す」という事が行われにくくなります。
ここに、痛みが起こることによって「安静にして骨折部位が早く治るようにしよう」と考えることができます。
他にも、足にトゲが刺さってしまった時であっても、痛みが伝われば足のトゲを取って傷が広がらないように対処するはずです。もし痛みを感じなければ、傷が広がることで細菌感染を引き起こすようになるかもしれません。
つまり、「痛み」の感覚は私たちが健康に生きていくために必要不可欠な要素の一つです。
世の中には「痛みを感じない病気(先天性無痛無汗症)など」があります。この方たちは痛みを感じないために、知らない間に大怪我をしていたり火傷に気が付かなかったりします。さらに、これらの行為が危険であることの認知も難しいです。
体に大きな異常が起こっていたとしてもこれらのシグナルに気が付かないため、体に大きな負担がかかってしまいます。そのため、痛みの感覚はとても重要になります。
なお、このサイトで説明する薬はNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛剤です。
NSAIDsは「風邪を引いた時の熱を下げる時」や「生理痛・頭痛の痛みを取り除く場面」などに頻用される薬です。
・痛みを感じる経路
前述の通り、痛みは私たちが健康な状態で生きていくために必要不可欠な要素の一つです。しかし、この痛みの度合いが強すぎてしまうと不都合となります。
体に危険を知らせるためのシグナルである「痛み」が強くなりすぎると苦痛を感じてしまいます。そして、痛みの強い状態が長く続いてしまうと精神的にも参ってしまいます。このため、痛みは「肉体的・精神的に苦痛を与える」と言われています。
そのために痛みを取り去る鎮痛剤が重要となります。この時の痛みを感じるための経路としては、以下のようなものがあります。
痛みを感じるためには、痛みを感じる部位が損傷される必要があります。そのため、上図でのお尻を強く打っているため、この部位から「お尻が痛い」というシグナルが発せられます。
このシグナルは神経を伝わることで脊髄に移行します。その後、この痛みのシグナルが脳にまで伝わることによって、ようやく「痛い!!」と感じるようになります。
つまり、痛みのシグナルが脳に届いた後に「痛み」を感じるようになります。
痛みの伝達はこのような経路をたどるため、鎮痛剤の作用機序としては以下のような三つを考えることができます。
① 末梢での痛みを抑制する
脳や脊髄を合わせて中枢と呼びますが、それ以外の部位を末梢と呼びます。例えば、手や足は末梢ですし、肺や肝臓、腎臓なども抹消となります。
そして、手や足などの末梢組織が傷つけられることによって、まさにその部位で痛みが発生します。
そのため、この傷害部位での痛みの発生を抑えることができれば、痛みを和らげることができます。
今回の鎮痛剤(NSAIDs)でメインとなる題目がまさにこの「末梢での痛みを抑制する」に関してとなります。
② 神経の異常を抑える
末梢組織の障害によって痛みのシグナルが発生した後、そのシグナルは神経を通ることで伝わっていきます。つまり、痛みを認識するためには神経の働きが重要となります。
そのため、この神経の興奮が異常であると、脳に痛みのシグナルをもたらすようになります。
神経興奮に異常が起こっているために痛みが起こります。それならば、この神経興奮を抑えることができれば痛みを抑えることができるはずです。
なお、神経障害によって起こる痛みは神経が関係しているため、末梢での痛みを抑えるNSAIDsでは効果が不十分となります。
③ 脳で痛みを感じなくさせる
シグナルが末梢で発生して神経を伝わった後、痛みのシグナルは脳にまで到達します。この痛みのシグナルを脳で感知するために、痛みを感じるようになります。
そのため、脳に作用することでこの痛みが起こるのであれば、脳で痛みを感じさせないようにブロックすれば良いことが分かります。
これが、麻薬性鎮痛剤の簡単な作用機序です。
スポンサードリンク
カテゴリー
スポンサードリンク