抑肝散加陳皮半夏の効能:神経症、不眠症、うつ病、認知症
神経症や不眠症、更年期障害など、神経の高ぶりによって生じる神経系の疾患は数多く存在します。このような疾患は、不安やイライラなどの精神症状が深く関わっています。そこで、神経の働きを抑えることで先に挙げた症状を改善させる薬として抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)があります。
抑肝散加陳皮半夏には、精神を安定させたり筋肉の緊張を和らげたりする作用があります。このような働きがあるため、うつ病や認知症、小児の夜泣きなどにも使用されます。
抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。抑肝散加陳皮半夏であれば、次のような人が有効です。
・虚弱な体質
・神経が高ぶっている
・怒りやすい、イライラなどがある
・消化器系が弱い
不安やイライラなどの精神症状が続くと、臓器の働きが悪くなってしまいます。そのため、精神異常が原因で身体症状が表れるようになります。つまり、精神症状が胃腸の働きに悪影響を与え、食欲不振や吐き気などを生じさせることがあるのです。このようなときに、抑肝散加陳皮半夏が有効です。
なお、抑肝散加陳皮半夏は日本で開発された漢方処方です。ただ、誰が開発したのか不明な薬でもあります。中国に対して日本のことを「本朝(ほんちょう)」と呼ぶことから、開発者不明の漢方薬を本朝経験方といいます。本朝とは、朝廷のことを意味します。
抑肝散加陳皮半夏の作用
精神の高ぶりを抑える抑肝散加陳皮半夏には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の9種類が配合されています。
・柴胡(さいこ)
・釣藤鈎(ちょうとうこう)
・蒼朮(そうじゅつ)
・茯苓(ぶくりょう)
・当帰(とうき)
・川芎(せんきゅう)
・陳皮(ちんぴ)
・半夏(はんげ)
・甘草(かんぞう)
柴胡(さいこ)には、熱や炎症を抑える作用があります。また、釣藤鈎(ちょうとうこう)は気持ちを落ち着かせたり、けいれんを抑制したりする働きが知られています。このような作用を有するさまざまな生薬を組み合わせることで、精神症状に働きかけるのです。
抑肝散加陳皮半夏に似た名前の漢方薬として、「抑肝散(よくかんさん)」があります。抑肝散に陳皮(ちんぴ)と半夏(はんげ)を足したものが抑肝散加陳皮半夏です。
陳皮(ちんぴ)と半夏(はんげ)には、気持ちを鎮め、食欲不振や吐き気を抑える作用があります。そのため、抑肝散に比べて胃腸の働きが弱い方の場合は、抑肝散加陳皮半夏が適応されます。抑肝散に胃腸への作用がプラスされた漢方薬が抑肝散加陳皮半夏であると考えることができます。
抑肝散加陳皮半夏の使用方法
抑肝散加陳皮半夏するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。
これら抑肝散加陳皮半夏としては、
・神経症、不眠症
・怒りやすい、イライラする
・まぶたのけいれん、手足のふるえ
・更年期障害
・うつ病
・認知症
・小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)
などの症状に有効です。抑肝散は認知症による周辺症状を抑えるためにも使用されますが、抑肝散加陳皮半夏も同様に認知症に対して活用されることがあります。前述の通り、抑肝散の適応に加えて、胃腸の弱い場合に用いられます。
このような特徴により、神経が高ぶっている人に使用することで、神経症や不眠症、更年期障害、うつ病、認知症などの症状を改善させる漢方薬が抑肝散加陳皮半夏です。
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