抑肝散の効能:神経症、不眠症、認知症、小児の夜泣き
イライラや不眠など、精神や神経の高ぶりによって症状が表れることがあります。そこで、これらの神経症状を抑えることで心や体を穏やかにする漢方薬として抑肝散(よくかんさん)が知られています。
精神症状が関わる疾患には、気分変調障害や不安障害、緊張型頭痛などが知られています。これらの症状に抑肝散は有効です。それだけでなく、認知症やうつ病の症状改善に応用されることもあります。このときは、西洋薬の補助として活用されます。
抑肝散(よくかんさん)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。抑肝散であれば、次のような人が有効です。
・虚弱な体質
・神経が高ぶっている
このような状態を示している神経症や不眠症などに対して抑肝散が使用されます。体質にあった人に使用する必要があるため、あくまでも「神経の高ぶり」などの症状がなければ薬と相性が合いにくいです。
ただ、抑肝散では投与する人の体力に関係なく使用します。虚弱体質や体力旺盛などの指標よりも、神経の高ぶり具合によって判断されます。
抑肝散の作用
神経症状を和らげる抑肝散には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。抑肝散には、以下の7種類の生薬が含まれています。
・柴胡(さいこ)
・釣藤鈎(ちょうとうこう)
・蒼朮(そうじゅつ)
・茯苓(ぶくりょう)
・当帰(とうき)
・川芎(せんきゅう)
・甘草(かんぞう)
これらを組み合わせることにより、精神症状に対応する薬が抑肝散です。抑肝散には、小児の夜泣きや癇癪(かんしゃく)に対しても使用できます。夜泣きや癇癪は、どちらも神経の高ぶりによるものです。そのため、これら小児での神経の高ぶりにも有効なのです。
もともと、抑肝散は小児に使用するための漢方薬でした。それが現在では、大人にも使用されるようになっています。
小児に有効な漢方薬であることから、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の児童に抑肝散が有効であると考えられています。また、てんかんや熱性痙攣に対しても、西洋薬の補助として用いることで発作回数を減らすなどの効果が期待されています。
大人では、アルツハイマー型認知症の補助治療に用いられます。認知症では、徘徊や攻撃的行動などが問題となります。これら認知症による周辺症状を抑肝散が抑えるのです。
「癇(かん)が強い状態」では、神経が興奮して眠れない状態になっています。このときは「癇」は、「肝」の機能失調によって起こると考えられています。そこで、肝の働きを抑えるので抑肝散という名前が付いています。
なお、薬の効果を調べる試験でも、抑肝散は攻撃行動や不安、不眠を改善する作用が動物実験などで確認されています。
抑肝散の使用方法
抑肝散を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。
投与を控えるべき人としては、「著しく胃腸の虚弱な人」「食欲不振、悪心、嘔吐のある人」などがいます。これらの人に投与すると、症状の悪化を招く恐れがあるからです。
これら抑肝散としては、
・神経の高ぶり、イライラ、不眠、手足のふるえ
・神経過敏、興奮しやすい、怒りやすい
・小児の夜泣き、癇癪(かんしゃく)
・統合失調症、躁うつ病、てんかん、パーキンソン病
・認知症の周辺症状
などに有効です。このような特徴により、神経興奮が関わる疾患に対して広く使用され、その症状を抑える漢方薬が抑肝散です。
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