紫雲膏の効能:やけど、外傷、痔
やけどや外傷、ひびわれなど、皮膚の損傷は誰にでも起こる身近な疾患です。これらの疾患がきっかけで命を落とすことは稀です。ただ、日常生活に影響が出ますし、放置しておくと後が残ることもあります。そこで、先に挙げた皮膚疾患の治癒を促す漢方薬として紫雲膏(しうんこう)が使用されます。
紫雲膏には、炎症を抑えたり傷の治りを良くしたりする作用が知られています。そのため、ひびやあかぎれ、湿疹、しもやけ、あせも、痔核などに多用されます。
紫雲膏(しうんこう)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。紫雲膏であれば、次のような人が有効です。
・皮膚がカサカサして潤いがない
・熱感がある
このような症状の損傷に紫雲膏が有効です。そのため、「じゅくじゅくしている傷口」や「分泌物が多くて化膿している状態」「既に年月が経っている患部」などに対して紫雲膏は適しません。紫雲膏の適応範囲は広いですが、何にでも使用できるわけではありません。
紫雲膏は、江戸時代の華岡青洲(はなおかせいしゅう)によって作られた漢方薬です。中国で書かれた漢方の古典に「外科正宗(げかせいそう)」があり、ここに潤肌膏(じゅんきこう)という漢方薬が記載されています。この潤肌膏を元にして、紫雲膏が創出されました。
華岡青洲は1804年(文化元年)に経口麻酔薬である通仙散(つうせんさん)を作ったことで知られています。この薬を用いて、世界で初めて乳がんの手術を行いました。
紫雲膏の作用
皮膚の傷を素早く回復させる紫雲膏には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の5種類が配合されています。
・紫根(しこん)
・当帰(とうき)
・胡麻油(ごまゆ)
・蜜蝋(みつろう)
・豚脂(とんし)
これらを組み合わせることで、損傷を治癒させます。紫雲膏の主薬は紫根(しこん)です。紫根には、抗菌作用や解熱・抗炎症作用があります。紫雲膏に含まれる紫根(しこん)は肉芽形成を促すため、皮膚の創傷に重要な役割を果たしています。
他にも、当帰(とうき)には血行促進作用があり、これに保湿作用のある胡麻油(ごまゆ)、蜜蝋(みつろう)、豚脂(とんし)を組み合わせます。薬の効果を調べる試験でも、創傷治癒を促進する作用が動物実験などで確認されています。
紫雲膏の使用方法
紫雲膏を使用するとき、患部を清潔にした後に1日数回適量を患部へ直接塗ります。漢方薬は口から服用するタイプがほとんどであるものの、紫雲膏の場合は塗り薬として活用されます。
紫雲膏の使用を避けるべき対象としては、「重度の熱傷・外傷のある人」「化膿性の創傷で高熱のある人」「患部の湿潤やただれのひどい人」などがあります。紫雲膏を塗ることにより、これらの症状の悪化を招く恐れがあるからです。
これら紫雲膏としては、
・ひび、あかぎれ、しもやけ、魚の目
・あせも、ただれ
・外傷、火傷(やけど)
・痔核による疼痛、肛門裂傷
・湿疹、皮膚炎
などの症状に有効です。ただ、すぐに皮膚へ吸収されるものの、紫雲膏は紫色をした特有の軟膏であるため、衣服への着色は注意しなければいけません。また、豚脂を使っているので特有の臭いがあります。
日本生まれの薬であり、日常生活でも多用する人の多い紫雲膏ですが、自宅で簡単に作ることができるのも特徴の1つです。市販のごま油や蜜蝋、豚の脂を揃え、後はインターネットなどを活用して紫根(しこん)と当帰(とうき)を取り寄せます。その後、台所で紫雲膏を作成するのです。
このような特徴により、ひびわれや外傷、やけど、痔など多くの場面で活用され、家庭でも気軽に作成できる軟膏タイプの漢方薬が紫雲膏です。
スポンサードリンク
カテゴリー
スポンサードリンク